建築家や設計者は、雰囲気のある空間を「しっとりしたインテリア」と表現することがあります。具体的にどんなインテリアがしっとりしているのか、しっとりしてそうな空間を思い浮かべ考察してみました。
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しっとりしたインテリアからいくつか共通点を絞りだし、建築的な素材に落とし込むことで具体的にしっとりしたインテリアに仕上げる素材が見えてきます。
しっとりしたインテリの共通点と具体的素材への落とし込み
しっとりしたインテリアの共通点
①仕上げ材は素材感があるものが使われている
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②照明や太陽の光を調整し陰影によって素材感を際立たせている
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③薄暗さがあり色気や艶やかさの感じられる大人的空間のもの
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共通点から導かれるのは「素材感・陰影・薄暗さ・色気」。
これを建築的な素材に当てはめると、ざらざらとした深みある石・土・木などの自然素材です。
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しっとりしたインテリアを実現する4つの仕上げ
石・土・木を使って床・壁・天井材として使用されている建築素材で、陰影があり色気を感じられる素材は、コンクリート、モルタル、木、レンガの4つです。
この4つの素材は、建築家やデザイナーがつくるインテリア空間には必ずと言っていいほど使われています。
また、これら素材はすべて歴史があり古くから建築に使われてきた素材でもあります。
しっとりしたインテリアを仕上げるコンクリート素材
コンクリートは、石・土・木が使われてないと思われるかもしれませんが、しっかり自然素材が使われ、自然素材が表れる素材です。
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コンクリートは自然素材で造られている
コンクリートは、石を砕いた骨材とセメントと水と混ぜ合わせて造られます。石を砕いた骨材は、全体の60%〜80%占めることになります。
なので、ほとんど石で出来ていることになります。
また、コンクリートは現地で造られるもので、現地の石、現地の職人により造られます。現在の建築材料のほとんどが工場で大量生産されたものを現場へ運搬されるなか希少な存在でもあります。
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コンクリートは建物をささえる力強さが魅力
コンクリートは、柱・梁・床などの構造体部分に使われ一般的には化粧仕上げにより隠れてしまう存在でもあります。
構造体を化粧仕上げなしに、そのまま表して仕上げることをコンクリート打放しと表現されます。
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コンクリート打放しは、そんな構造体となる力強さをそのまま表現してあげることが最も魅力を発揮できる使い方です。
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コンクリートの表情
コンクリートの表情は自然界の表情に似ているところがあります。それは、人の意図していない表情となるところです。
コンクリートの表情は、その時の温度や湿度、その地で使われる材料、その地の職人など様々な要因により変わってきます。同じものが出来ない、その現場で作られる唯一無二の表情がコンクリートのもつ本来の姿です。
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コンクリートは「ラフさ」が「らしさ」である
綺麗に打ち上らないコンクリート打放しを補修している現場もありますが、技術的な欠点がない限り補修して綺麗な表情にする必要はなく、そのままの表情が最もコンクリートらしさがあり、最も力強さの感じられる表情なので、わざわざ補修し繊細で綺麗なコンクリート打放しを造る必要はないと思います。
その現場で、その時にしかできないコンクリート打放しは、ラフで荒々しさがあります。そのラフさが、しっとり感である「素材感・陰影・薄暗さ・色気」を強く感じさせてくれます。
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しっとりしたインテリアを仕上げるモルタル素材
モルタルはコンクリート同様に、骨材とセメントと水と混ぜ合わせて造られます。
この骨材がコンクリートと異なり、かなり細かいもので砂状のものが使用されることから、表情もコンクリートに比べ繊細です。
モルタルの左官職人がつくり上げる繊細な魅力
モルタル仕上げについては、コンクリートのような現地での一発仕上げのような緊張感はなく、左官仕上げによる優しさがあります。
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コンクリートとモルタルは、造られる材料が似ているため見た目の印象が近いものがありますが、実は全く異なる魅力があります。
モルタルは構造的な強度の求められる部分に使用せず、仕上げ材として使われてきた歴史があります。
コンクリートのラフで荒々しい表情を落ち着かせるため、コンクリートの上から、薄く平坦に馴らし繊細に仕上げるために使われてきました。
そんな歴史より、左官職人による繊細さが表れるところがモルタル仕上げの魅力でもあります。
モルタル仕上げは今となっては希少な存在、環境によって表情が変わるところが魅力
モルタルはコンクリート同様に現場で造られます。現地の砂を使って、現地の左官職人により造られます。
現在の建築材料が工場生産の割合を多くを占め、左官仕上げをする現場がかなり減少しつつあります。
モルタル仕上げは、現在では希少な左官仕上げの繊細さがあり、現場一品生産ものでその時の環境により表情も変わる豊かな表現を持ち合わせる色気ある仕上げ素材です。
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しっとりしたインテリアを仕上げる木材
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日本では古くから木を内装材として使用してきており馴染みある素材でありますが、昨今では技術の進歩、経済性の観点から工業製品へ変わりつつあります。
大量生産されるクロスなどの工業製品は低価格で入手でき、施工も早く、種類も豊富で、簡単にやり替えが可能なところが魅力的ではありますが、本物の木材にはなり得ません。
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木材の経年変化の魅力
木材の魅力は、使えば使うほど深みが増し、しっとり感が増していくところです。
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何百年も前から建っている日本の寺社建築やウイスキー樽など、時間が美しさに深みを与えてくれることを証明しています。
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木材は先人の知恵を受け継ぎ、技術進歩により美しさに磨きをかける
建築に求められる性能には、防火性や耐水性、耐久性があり、木材はそれら性能面に対しては決して強くない性質です。ただし、木材の樹種の選定やディテールなどにより防火性、耐水性、耐久性を克服する技術があります。
この木材を長持ちさせる技術は日本には古くから蓄積されており、先人の知恵を受け継ぐことでより美しさに深さが増し、しっとりとした空間をつくり上げることができます。
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しっとりしたインテリアを仕上げるレンガ
レンガは土を焼成してつくられるもので、土に含まれる成分や焼き加減、その日の温度湿度などの環境によって表情が変わります。
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レンガの歴史
レンガの歴史は古く紀元前3千年頃、あるいはそれ以前からとも言われています。材料は土だけで造ることが出来るため世界中で古くから建築材料として使われています。
日本では、レンガ建築として有名なものとして富岡製糸場、東京駅、横浜赤レンガ倉庫などがありますが、発電所や軍事施設などの公共施設にも見ることができます。
高性能なレンガは古くから建築材料として使われている
古くから使われてきたレンガは、耐火性や耐久性、耐水性が高く、塗替えなどのメンテナンスも不要とし、長年の汚れに対しても寛容に受け止め、汚れを付け加えてより美しさに深みが加わる素材として知られています。
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ただし、レンガ造の建物は地震に弱い性質があり、今の建築基準法では構造部材にレンガを使うことは現実的ではないため、レンガ造の建物が新しく建てられることはなくなりました。
耐震技術も身に着けたレンガの魅力
富岡製糸場、東京駅、横浜赤レンガ倉庫では、昔のレンガを残しつつ鉄骨やコンクリートで耐震補強が施されて使用されています。レンガを撤去し、新たに立て直す方が明らかに簡単で経済的ではありますが、レンガのもつ魅力や歴史に重きを置き、あえてレンガを残す方法を採っています。
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自然素材である土で造られる歴史あるレンガは、風格と品があり今も耐震技術も身につけ様々な施設で使用されています。
4つの素材は組合せることで更に深みのある空間に
コンクリート、モルタル、木材、レンガはそれぞれの魅力と美しさの深みがあり、しっとりしたインテリア空間を造り得る素材ではありますが、これらを組み合わせることで、より深みのある空間にすることも可能です。
コンクリートやモルタルと木材の組合せ
コンクリート、モルタルはグレー系の落ち着いた色味であるのが特徴です。
インテリアのベースとなる床面や壁面に、コンクリートやモルタルのグレー色で空間を引き締め、木材をポイント的に使用することで、それぞれを惹きたてる効果が生まれます。
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グレーの空間に、木材の色彩が映え、木材があることでコンクリートの素材感がより強く感じられます。
レンガと木材の組合せ
レンガと木は古くから建築の中で共存している存在で、歴史があり懐かしさと馴染み深さの感じられるしっとりした空間となります。
レンガも木も少し経年により、よれた感じがあった方が時間と汚れが美しさに深みを与えてより雰囲気がよくなります。
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4つの素材に共通して言える「経年変化を楽しめる」こと
コンクリート、モルタル、木、レンガに共通して言えることは、法的・技術的に適材適所に使用することで、人の寿命を超える耐久性があることで、経年変化により美しさに深みと磨きがかかるところです。
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本物を使用し、長く経年変化を楽しむ
昨今では、技術進歩によりコンクリート風や木調など、見た目が殆ど本物と分からない素材が出来ています。新しいものは歴史や実績がないなかで、どれだけ長く楽しめるものか不確かなものがあります。
歴史ある本物の素材を適材適所に使うことで、新築時から寿命を迎えるまでの長期にわたり経年変化を楽しみながら建築と付き合うことができます。
しっとりしたインテリア空間には、そんな魅力が沢山ある気がします。
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