建築コストと安全性とデザインのバランス

コストと安全性とデザイン性、どれかを犠牲にするのではなくバランスさせることが重要だと考えます。

デザインは関係ないという人もいるかもしれませんが、建築は街の風景となることから建築のデザインは公共性を有していると考えられます。

コストと安全性とデザインをバランスさせる方法は「とにかくシンプルにする」ことです。

「とにかくシンプルにする」の具体例を以下の3つの観点で示します。

・建築構造的にシンプルにする

・建材をシンプルにする

・建築設備をシンプルにする

目次

建築構造的にシンプルにする

建築構造的にシンプルにすることで、耐震安全性が向上するだけでなく、部材の効率化が図れ、結果コストダウンに繋がります。

建築構造的にシンプルにする方法は以下の3点です。

・間取りをシンプルにする

・重心を低く、偏らない

・軽量化

間取りをシンプルにする

間取りをシンプルにするとは、以下のようなイメージです。
・平面形状を正方形に近づける
・断面形状も凸凹しない
・むやみに窓を大きく沢山設けない

平面形状を正方形に近づける

極端に細長い平面形状や、台形、円形などの外壁の周長が長くなる平面形状は、正方形に比べて外壁面積が増えることになります。

外壁面積が増えると、建物重量が増え、耐震安全性を確保するために主架構のサイズが大きくなります。

出来る限り平面形状を正方形に近づけ、外壁面積を少なくすることで、耐震安全性が向上するだけでなく、風を受ける面も少なくなり耐風圧的にも有利となります。

更に、外壁が少ないということは、全体コストの低減だけでなく、熱負荷の低減につながりイニシャルコスト・ランニングコストの低減に繋がります。

断面形状も凸凹しない

断面形状をシンプルにすることも、構造力学上も安定し、コスト削減にも繋がります。

上階で大きくなるような断面形状の場合、遠心力も働き地震時に大きく振られることになるため、主架構サイズを大きくする必要があります。

また、ステップフロアや大きく跳ね出したバルコニーなど、力の流れが複雑になる断面形状も同様に主架構サイズUPの要因になります。

主架構サイズが大きくなると、コストUPにつながるだけでなく限られた敷地の場合は、プランにも影響が及ぶことになります。

むやみに窓を大きく沢山設けない

むやみに窓を大きく沢山設けると、構造力学的に不利になる場合があります。

特に、南面にだけ大きく窓をとるような偏った窓の配置は、南面に耐震用途となる壁が配置できず、それを補うだけの耐震要素を他の面でカバーする必要があり、不経済な構造計画に繋がります。

また、むやみに窓を大きく沢山設けると、見た目は開放的となりますが、外壁よりもガラスの単価の方が高く、熱負荷的にも不利であるため、イニシャルコスト、ランニングコスト的にも不利となります。

適材適所にバランスよく窓を配置することが、構造的にも経済的にも有利となります。結果、バランスの取れた建築は美しくなります。

重心を低く、偏らない

建築は上階に行けば行くほど軽量な方が、耐震安全上有利となります。

よって、屋根の形状は出来る限りシンプルにして、面積を少なくし軽量化を図ることがポイントです。

また、上階が大きくなるようなプランより、下階が大きくなるプランの方が構造力学上有利となり、主架構のサイズを小さく抑えることになります。

また、プラン的に偏らないことも経済性に影響を及ぼします。

例えば、プランの右半分に大きな吹抜けがあるようなプランの場合、左半分は上下階で柱・梁・床が繋がり安定した構造計画となりますが、右半分は梁・床が一部ないことで、不安定な構造形状となります。
この場合、吹抜けがないプランに比べて主架構のサイズアップが必要となる場合があります。

軽量化

構造的に建物を軽量にすることは最も有利に働く要素の一つです。

例えば、木造とRC造では重量は5倍以上も異なります。

重量が重くなればなるほど、それだけ建物自体の架構も強くなければなりません。

また、それに耐える基礎・地盤の強さも必要となってきます。

重量が軽い建物で杭が不要な土地であっても、構造や外装材の重量が重くなることで杭が必要となる場合も考えられます。

杭工事が必要となれば、大きなコストUPにつながります。

建材にシンプルにする

建材をシンプルにするポイントは以下の3点です。

・外装材をシンプルにする

・内装材をシンプルにする

・外構をシンプルにする

外装材をシンプルにする

外装材は、主に屋根材・外壁材で構成され雨風を防ぐ役割を担っています。

外装材をシンプルにする方法は以下の2つです。
・形状をシンプルにする
・種類を変えない

形状が複雑になればなるほど、防水のための金物やシーリング材など副資材も複雑化します。

外装材は、形状をシンプルにすることで防水リスクが減り、建物が長く健全で居られることに繋がります。

また、屋根、外壁の種類を途中で切り替えることはせず、屋根・外壁はそれぞれ種類を統一することで施工性が向上し、コスト的なメリットもでます。

内装材をシンプルにする

内装材は、部屋によって、床材・壁材・天井材を切り替える建物もありますが、出来る限り統一した方が施工性・経済性の観点から有利になります。

例えば、床と天井は水周り以外は全て同じ板張りとし、壁は白いクロスで統一することで、工種が絞られます。

工種が絞られることで、材料費が安く仕入れることに繋がり、工期短縮も図られ全体的なコストダウンに繋がることもあります。

また、デザイン上も沢山要素があるよりも、シンプルに要素を絞る方がまとまりのある空間となります。

外構をシンプルにする

外構は、門扉・カーポート・舗装・植栽など、いろいろな要素が絡み合う場でもあります。

特に最近はセキュリティに関心が高まり、防犯カメラや防犯灯などの設備も組み合わされてデザインされています。

これらも出来る限りシンプルにする術として、外構も建物に取り込むことで解決することもあります。

建物の外壁と同じ種類のもので、外構を囲うことでデザイン上も統一され、囲われた範囲は外からの目線も気にする必要がなくなります。

また、中庭空間として活用することもでき、活用面積あたりのコストパフォーマンスが最大化するメリットがあります。

建築設備をシンプルにする

建築設備をシンプルにする方法は以下の3つです。
・シンプルな換気・空調デザイン
・水周りは集約する
・インフラは街に調和させる

シンプルな換気・空調デザイン

最近の設備は、セントラル空調方式(中央制御)と個別空調方式が選べ、更に機器自体も高性能なものが各メーカーよりラインナップされております。

換気や空調については、各室の個別で完結するシンプルな形式で、汎用性のある普及品がイニシャルコストもランニングコストも安く抑えることができます。

また、換気や空調がシンプルに計画できると、天井内や床下の配管類もシンプルに短く計画することにつながり、コストだけでなく、省エネ性も向上します。

それをいかに建築と組み合わせて空気の流れを美しくデザインするか、建築家の腕の見せ所です。

水周りは集約する

お風呂、トイレ、キッチン、洗面などの水周りは分散せず、出来る限り同一階の集中した配置にすることで、配管類が効率化し、構造体や仕上げ材への影響も少なく済みコストへ還元されます。

ただし、これは使い勝手優先であることが前提となりますがシンプルなプランは必然と水周りが集中することが多くなるような気がしています。

インフラは街に調和させる

建物への電気・ガス・水道・下水などのインフラ引き込みについては、街の特性があります。

都市ガスが来ていない地域や、電気代が安い地域など、建築する場所によってバラバラです。

地域に根差したインフラの計画が、結果コストの低減に繋がります。

建築コストと安全性とデザインのバランスまとめ

コストと安全性、どちらかを犠牲にするのではなくバランスさせることが重要で、無駄なものをそぎ落としたシンプルなものが安全で美しい建物となります。

地域に根差し、素直な構造体とすることで、自然とコストがバランスされ美しさが付加されます。

見た目のデザインから考えず、地域性・環境・使い勝手をシンプルに考える。結果、美しいデザインとなります。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

コメント

コメントする

目次