建築家は巨匠からサラリーマン建築士まで4つに分類できる

建築家は、大きく4つに分ける事ができます。

1、巨匠と言われる建築界では超有名な建築家(0.03%)
2、建築雑誌で度々取り上げられる有名建築家(0.33%)
3、建築を愛しすぎる建築家(約33.33%)
4、普通のサラリーマン建築士(約66.66%)

うしろに記載の%は一級建築士のうち建築設計に従事する登録建築士数からの割合です。

目次

巨匠と言われる建築界では超有名な建築家

巨匠と言われる超有名な日本の建築家を、今はいない一世代前と、現代活躍している巨匠の2つに分けて考察

一世代前の巨匠建築家

氏名
(生まれ)
師匠・所属代表作品受賞歴
辰野 金吾
1854年
ウィリアム・バージェス東京駅
大阪市中央公会堂 他
村野藤吾
1891年
渡辺節広島世界平和記念聖堂
日本建築学会賞
前川國男
1905年
コルビジェ国際文化会館
軽井沢の山荘 他
日本建築学会賞
坂倉順三
1901年
コルビジェ国際文化会館
羽島市役所 他
日本建築学会賞
吉阪隆正
1917年
コルビジェアテネ・フランセ
大学セミナー・ハウス 他
日本建築学会賞
白井晟
1905年
本野 精吾ノアビル
渋谷区立松濤美術館 他
日本建築学会賞
清家清
1918年
東京工業大学 事務局1号館
日本建築学会賞
丹下健三
1913年
コルビジェ
前川國男
広島平和記念公園
代々木体育館 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
菊竹清訓
1928年
村野藤吾スカイハウス
江戸東京博物館 他
日本建築学会賞
黒川紀章
1934年
丹下健三中銀カプセルタワービル
国立新美術館 他
芸術文化勲章
石井修
1922年
大林組天と地の家
日本建築学会賞
林昌二
1928年
清家研究室
日建設計
パレスサイドビルディング
日本建築学会賞
内田 祥哉
1925年
日本電信電話公社
(現:NTTファシリティーズ)
佐賀県立博物館
実験集合住宅NEXT21 他
日本建築学会賞
一世代前の巨匠建築家一覧

これらの巨匠達が、今の日本の建築家界を創り上げてきました。

前川國男+坂倉準三+吉村順三の共同作(国際文化会館)
丹下健三の代表作(代々木体育館)

現代の日本を代表する建築家の多くが、この巨匠達のお弟子さんになります。

この世代にはコルビジェの影響を受けた巨匠が多くいます。

コルビジェは、世界の建築家界で三大巨匠と言われるル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランクロイドライトの中の一人で日本でもいくつか作品を残しています。

コルビジェの代表作(ロンシャンの教会)
フランクロイドライトの代表作(落水荘)
ミース・ファン・デル・ローエの代表作(ファンズワース邸)

現代の日本の巨匠建築家

氏名
(生まれ)
 師匠・所属 代表作品 受賞歴
槇文彦
1928年
丹下健三SPIRAL
4WTC 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
磯崎新
1931年
丹下健三北九州市立美術館
なら100年会館 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
谷口吉生
1937年
丹下健三ニューヨーク近代美術館新館
法隆寺宝物館 他
日本建築学会賞
伊東豊雄
1941年
菊竹清訓せんだいメディアテーク
台中国家歌劇院 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
安藤忠雄
1941年
住吉の長屋
光の教会 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
栗生明
1947年
槇文彦植村直己冒険館
平等院鳳翔館 他
日本建築学会賞
藤森照信
1946年
村松貞次郎高過庵
ラ コリーナ近江八幡 他
日本建築学会賞
内藤廣
1950年
吉阪隆正
菊竹清訓
海の博物館
とらや赤坂店 他
日本建築学会賞
隈研吾
1954年
日本設計浅草文化観光センター
新国立競技場 他
日本建築学会賞
坂茂
1954年
磯崎新ポンピドゥー・センター・メス
紙の協会 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
青木淳
1956年
磯崎新ルイ・ヴィトン表参道ビル
京都市京セラ美術館 他
日本建築学会賞
妹島和代
(SANAA)
1956年
伊東豊雄金沢21世紀美術館
すみだ北斎美術館 他
日本建築学会賞
プリツカー賞 他
竹原義二
1948年
石井 修101番目の家
豊崎プラザ 他
日本建築学会賞
現代の日本の巨匠建築家一覧

この年代になると世界的な建築賞であるプリツカー賞を受賞する巨匠が出てきます。

伊東豊雄の代表作(仙台メディアテーク)
安藤忠雄の代表作(光の教会)
SANAAの代表作(金沢21世紀美術館)

建築界では超有名な方ばかりですが、一般的には殆ど知られていないかもしれません。

安藤忠雄、隈研吾はメディア等で多く取り上げられる場面があり、一般的な知名度は比較的高いように感じますが、ほんとにすごい方ばかりです。

安藤忠雄(pinterest)

建築雑誌で度々取り上げられている有名建築家

 氏名
(生まれ)
   師匠・所属  代表作品 受賞歴
手塚貴晴
1964年
リチャード・ロジャース屋根の家
ふじようちえん 他
日本建築学会賞
石上 純也
1974年
妹島和代神奈川工科大学KAIT工房
日本建築学会賞
平田 晃久
1971年
隈研吾太田市美術館
JIA新人賞
乾久美子
1969年
青木淳ディオール銀座
エンクロス 他
日本建築学会賞
永山裕子
1975年
青木淳ドバイ国際博覧会日本館
JIA 新人賞
前田 圭介
1974年
アトリエ・ビスクドール
CASA‖ 音色 他
日本建築学会作品選奨 他
三分一博志
1968年
小川 晋一おりづるタワー
日本建築学会賞
堀部安嗣
1967年
益子義弘小型豪華客船「ガンツウ」
日本建築学会賞
中村拓志
1974年
隈研吾Ribbon Chapel
上勝町ゼロ・ウェイストセンター 他
日本建築学会賞
西沢立衛
1966年
妹島和代金沢21世紀美術館
十和田市現代美術館 他
日本建築学会賞
谷尻 誠
1974年
ONOMICHIU2
HOUSET 他
広島建築文化賞
五十嵐 淳
1970年
矩形の森
日本建築家協会新人賞
田根剛
1979年
ヘニング・ラーセン
デビッド・アジャイェ
エストニア国立博物館
ミラノ建築家協会賞
千葉学
1960年
日本設計日本盲導犬総合センター
敦賀駅 他
日本建築学会賞
藤本壮介
1971年
ユニクロパーク
日本建築大賞
江副敏史
1957年
日建設計大阪弁護士会館
中之島フェスティバルタワー
日本建築学会作品選奨 他
山梨知彦
1962年
日建設計木材会館
ホキ美術館 他
日本建築大賞
大谷弘明
1962年
日建設計積層の家
ザ・リッツ・カールトン京都
日本建築大賞
ふじようちえん(手塚貴晴)
ドバイ国際博覧会日本館(永山裕子)
Ribbon Chapel(中村拓志)

この他にも建築雑誌に取り上げられている建築家は多数いますが、代表的な建築家のみを抽出しました。

現代の巨匠のお弟子さんも多数含まれています

また、組織設計事務所のサラリーマン建築士も巨匠から引継ぎ、有名建築家としても活躍されている姿を見受けられます。

ホキ美術館
積層の家

建築を愛しすぎる建築家

日本の多くの建築家がこの分類に所属しています。

この分類には下記の属性の建築家が存在します。

・日建設計や日本設計などの組織設計事務所の設計部

・竹中工務店や大林組などのゼネコンの設計部

アトリエ設計事務所

先に挙げた有名な建築家に近い設計力・デザイン力を持ち合わせ、日々建築のことを考え、雑誌に載らないけれども建築を一生懸命設計している建築家たちです。

この分類は、建築設計行為がある程度出来ることが条件としています。

普通のサラリーマン建築士

建築家の最も多くの割合を占めているのが普通のサラリーマン建築士です。

普通のサラリーマン建築士には4種類あると思っています。

・会社から言われた事しかしない残念な建築士

・建築のことは好きだけど、仕事として割り切っている建築士

・建築愛があるけども設計出来ない建築士

・建築愛がないけれども仕事はしっかりする建築士

会社から言われたことしかしない残念な建築士

業界の肌感覚ではありますが、50歳以上の年配建築士に多く存在しているように思います。

酷い場合は、「そんなの出来ない」とえらそうに上司・施主に向かって言う建築士もいます。

そんな存在を許してしまうのは、大企業設計事務所や大きな会社のゼネコン設計部に限られているかもしれません。

大企業の場合、仕事は出来るヒトに集中する場合が多く、残念な建築士には仕事が振られず暇そうにしていることが実際の現場で見受けられます。

企業が大きくなり人数が多くなれば、そのようなことが起きてくるのはやむを得ないかもしれません。

建築のことは好きだけど、仕事として割り切っている建築士

建築のことは好きだけど、仕事として割り切っている建築士がある一定数います。

仕事として割り切っている傾向のある建築士

・デザインが得意ではないと思っている建築士

・周りに認められずいい仕事がまわってこない建築士

意外とこの分類も多く存在します。

建築愛があるけども設計出来ない建築士

この分類は、設計がまだ一人で出来ない若手設計者を示しています。

建築設計はデザインだけでなく、関係法令の整理やコストコントロール、現場調整など習得するまで時間の要する内容が多く一般的には一人前になるには10年程度要すると言われています。

そのため、多くの建築士が含まれる分類になります。

建築愛がないけれども仕事はしっかりする建築士

建築はそれほど好きじゃなく、建築設計の分野で働く建築士も一定数存在します。

不思議な存在ですが、大企業ではそんなこともあり得るのです。

なんとなく建築や都市計画系の大学に進み、なんとなく就職活動し、たまたま組織設計事務所やゼネコンに就職できる学生が一定数いるように感じます。

彼らは真面目なので、建築にそれ程愛を持たずとも、それなりに仕事としてしっかり成果を上げることが出来る能力を持ち合わせていたりします。

ここで扱う建築家の定義

建築家=建築士ではありません。

建築士の中には、意匠設計、構造設計、設備設計、積算、法令審査、施工管理、官庁営繕など専門分野に分かれています。

建築家と言われるのは、これら専門分野のうち、意匠設計に従事する建築士を示しています

建築家として活躍する建築士の人数(分類割合の根拠)

そもそもどれくらいの人数が一級建築士として登録しているか

建築士の登録者数 約37万人
公益財団法人建築技術教育普及センターHPより

このうち、一級建築士事務所として登録されている一級建築士は約7万人
国土交通省HP令和4年度建築士登録情報より

7万人のうち、建築設計に従事している割合は約40%=約3万人
公益財団法人建築技術教育普及センターHP(一級建築士合格者の職務内容別割合)より

一級建築士事務所として登録し、建築設計に従事している3万人から巨匠・有名建築家・サラリーマン建築家の割合を計算すると下記になります。

巨匠建築家・・・10人程度(約0.03%)

有名建築家・・・100人程度(約0.33%)

建築を愛しすぎる建築家・・・10000人程度(約33.33%)

その他・・・約20000人(66.66%)

なので、99%の殆ど世に知らることがない建築家ということになります。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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