自然素材「石」を使った魅力的な建築デザイン

昔から「石」は建築材料として、耐久性や意匠性の観点よりよく使われてきているものの、現在は工業製品中心で経済性や施工性の観点より、使用される頻度が低くなってきています。

意匠性の観点でも、国会議事堂や高級マンションに使われるイメージが強く、一昔前感があります。

それでも、現在でも石の特性を活かした美しい建築も存在していますので、今回は「石」のデザインについて解説していきたいと思います。

目次

石の種類による建築へのアプローチ方法

ここで石の種類について、建築にどうアプローチさせるかの視点で紹介していきたと思います。
まずは、石の種類については、
1、マグマが冷え固まってできる「火成岩」
2、水中で泥や砂が堆積してできる「堆積岩」
3、上記の火成岩や堆積岩が熱や圧力などにより再結晶化した「変成岩」
の大きく分けて3つの種類があります。

1、火成岩

火成岩は、地上もしくは比較的浅い地下で固まった「火山岩」と地下深い所で固まった「深成岩」に大別されます。

火山岩

火山岩のなかで、建築でよく使われる有名処では「安山岩(鉄平石等)」がありますが、融点の違いや含まれる鉱物によって色が変わってきます。

黒っぽい鉄平席は、石畳みの舗装としても使われています。

流紋岩(白っぽい)→安山岩(中間)→玄武岩(黒っぽい)

灰褐色のものが多く、光沢はほとんどないのが特徴です。
鉄平石については、板状節理(ばんじょうせつり) により人工的に板状にした石ではなく層状に剥がれる性質があり、剥がれた面の自然な風合いが特徴で板状に使用する石材としては魅力的な材です。
ただし、安山岩は比較的吸水率が高いため外壁に使用する際は注意が必要です。

深成岩

深成岩には有名な花崗岩(御影石)があります。火山岩と同じく含まれる鉱物等によって色が変わってきます。
花崗岩(白っぽい)→せん緑岩(中間)→班れい岩(黒っぽい)
花崗岩は神戸市の御影が有名な産地だったことから、その地名をとって「御影石」と呼ばれているようです。

2、堆積岩

主に海中で砂や泥などが堆積したものが、長い時間をかけて押し固められて岩石になったもので、堆積岩は、粒子の大きさや含まれる成分で分類されます。

堆積岩は、建築用に使用されるものの中では柔らかい部類の石材で、高い吸水性を持っています。一般的な堆積岩は小さな穴がたくさんあるため、水をよく吸い、その水分のせいで割れやすく汚れやすい石材です。外装に使うよりは、内装の壁材等として使用したい石です。

堆積岩は含まれる粒の大きさで種類が変わります。

泥岩(粒が小さい)→砂岩(中間)→礫岩(大きい)

堆積岩の中でも、泥岩(玄昌石)のように粒子が小さければ吸収性が低いものもあり、外装材に使用することは出来ますが、粒子が大きくなる砂岩(トラバーチン)等については、吸水率が高くなり、外装材には向いていません。

3、変成岩

もともと堆積岩や火成岩であったものが、高温や高圧などの条件にさらされて、鉱物組み合わせや組織が変化したもので、有名所では大理石があります。

主に内装材として使用される装飾石材で、花崗岩に比べて軟らかく、短時間で加工が可能な石材です。また、吸水率は低いですが酸性に弱い為、外部への使用には十分気をつけておくべき石材です。

石を使った美しい建築事例

神勝寺 禅と庭のミュージアム

ゴツゴツした石が海をイメージさせ、伝統的なこけら葺きで全体を包んだ舟型の建物が石の海に浮いているように見えます。自然の中に溶けてこんで非常に美しいデザインです。

東山魁夷せとうち美術館

凛とした中にも、堅牢さも感じられる美術館に相応しい美しい佇まいです。
瀬戸内海に面した立地で、瀬戸内海のブルーグリーンにリンクするように、青みがかったグリーンの外壁は玄昌石が使用され、無機質なRC打放し面との組み合わせも綺麗です。
玄昌石は、堆積岩のスレートという石種で、泥岩が層状に堆積した石で吸水性が低くく耐候性に優れている為古くから屋根材や床材に利用されてきたようです。濃いグレーやグリーンの表面に細かい筋が波のように流れた肌合いをしていて、水に濡れるとより黒さが鮮明になります。
瀬戸内のブルーグリーンのイメージと、層を重ねて作られている石を採用することで、周辺環境と調和し、展示される美術品の歴史も感じられ、勉強してから見ると更に美しく感じます。

京都国立博物館

先程の美術館と同じ設計者の谷口吉生さんの作品です。こちらも、京都ならではの伝統を感じさせる日本的なデザインで、常に新しいものを取り入れてきた京都の革新性も表現されています。適切な材料が、適切な位置に、正確に配置されることで、比類なく美しい空間が実現されています。
床には耐久性の高い花崗岩(ジンバブエブラック)バーナー仕上げが使用され、壁には堆積岩であるライムストーン(ジュライエロー)水磨き仕上げが使用されています。ライムストーンは長い年月の堆積をイメージさせる京都らしさも感じさせてくれます。

まとめ

石材には、それぞれ出来上がる過程や地域の特徴によって、性質や意匠が変わる為、建築のどこに使用するか十分吟味して採用する必要があります。

石材は最近の新しい建材との組み合わせや、意匠面やコスト面で採用が難しい材料ですが、その地の風土、地域の特徴、建物の必要とされる性能を丁寧に紐解き、適材適所に石材が配置出来れば、時間に耐えうる素晴らしい建築に繋がるものだと考えます。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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