空間を彩る階段と手すりのデザイン

階段は空間の上下移動のための構造部材ではありますが、その空間を豊かに彩るデザインアイテムの一つでもあります。

柱や梁、窓や扉等は水平、垂直で構成されるなかで、大胆に斜めの構造材が上下階を貫いていくため、その空間に与えるインパクトも大きいものとなります。

階段の斜めに構成される構造材をいかに美しく見せるか、設計者の腕の見せ所でもあります。

今回はそんな階段のデザインについて、事例を交え解説していきたいと思います。

目次

階段のデザインを決定つける要素

階段のデザインを決定つける要素として、以下の3点が大きく影響してきます。

・法令的要素

・構造力学的要素

・使い勝手による要素

それではそれぞれ詳しく見ていきましょう。

法令的要素について

階段にかかる法令関係については、建築基準法、バリアフリー法があります。

建築基準法では、建物用途や規模によって階段の幅、踏面、蹴上の寸法、踊り場の要否等が定められています。

それら定められた寸法によって、階段のプロポーションが決まってきます。

また、建物用途によってはバリアフリー法が適用され、階段の踏面の材種や手すり高さ等も定められ、その規制の中でのデザインとなります。

階段をデザインする上でも重要となってくる手すりについても、建築基準法により高さの寸法の規定があり、その定められた寸法を如何にデザインに組み入れていくかがキモとなってきます。

例えば、手摺の法的要素の中でのデザインを挙げると建築基準法で定められている手摺を必要とする範囲は、「階段及びその踊り場」とあります。

ただし、高さ1m以内は手すりが不要となる緩和規定があります。

この緩和規定を使って、最初の上がり始め数段に変化をつけ、手摺なしのデザインとすることで人を迎え入れるイメージをつけ手摺がない非常にスッキリしたデザインとなります。

構造力学的要素

階段は上階への斜めに架け渡される構造部で、人の移動時の荷重が掛かることになります。

薄くスッキリさせたい所ですが、安易に薄い部材には出来ない構造となっています。

また、手摺についても不特定多数が利用する階段では、手摺にかかる水平荷重も考慮する必要があり、支柱が太くなります。

スッキリ軽く見せたい場合は力のかかる方向に対して厚みを持たせ、力のかからない方向へは極力薄くする等の工夫が必要となります。

使い勝手による要素

使い勝手による階段デザインを決定つける要素として、まずは建物用途によって大きく考え方が変わってきます。

不特定多数が利用する庁舎や商業施設では、誰にでも安全でユニバーサルデザインを取り入れた階段が望まれますので、手摺はパネル状、若しくは縦格子のような小さなお子様が落下しないデザインが必須となってきます。

また、小さなお子様からご老人の方まで楽に上がれるよう緩やかな勾配にする必要があるため、階段の平面的スペースがより多く必要となってきます。

住宅のような特定の少数利用の場合は、その特定の人が利用出来れば良いので、最低限の手摺で、最低限のスペースでの計画が可能となります。

このような階段かっこいいですが、不特定多数が利用する施設では危なすぎますよね。

人を魅了する階段デザイン事例紹介

ここからは、人を魅了する階段を事例を交えて紹介していきたいと思います。

折り返しの浮遊感あるスッキリした階段

手摺が最低限のピッチで取り付けられており、構造的に段板部分の下にササラプレートを流すことで、段板部分が薄く浮いているように見え、かなりスッキリ透明感があるデザインとなっています。

建物用途を表現した木材会館の階段

手摺を黒鉄の見付寸法の小さい部材を採用し笠木の木材が浮いているように見えます。

また、階段の上がり方向に変化をつけることで、階段での木材の美しさを感じさせる工夫が施されています。

ベンチと兼ねた階段

階段とベンチの2つの用途が美しく融合したデザインで、建物全体の空間にも合わせ、材とディテールが決められ緊張感もあり洗練されたデザインになっています。

まとめ

建築をデザインする上で、階段は安全性や使い勝手、デザインまで、さまざまな検討項目があり、それらを総合的にデザインしていく必要があります。設計者としては、建築構造部位の中でも、最上位に力を入れて設計する部位でもあります。
階段を見れば、その建築のグレードがわかってしまうぐらい、建築デザインの上で重要な構造物です。

普段何気なく使っている上下移動で欠かせない構造物「階段」ですが、設計者はその階段に非常に時間をかけて考えています。建物用途での法令的要素、構造力学的要素、使い勝手による要素、その階段のデザインが単にカッコいいと思った時、どんな要素の制約の中でデザインされているのかを考えて見ていただくと、更に階段を見る時の面白さが増してくると思います。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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