屋根を長く健全に保つ方法、なんでもかんでも塗替えではない

屋根を健全に保つことは、建物の寿命を伸ばすだけでなく、街の景観を美しくすることに繋がります。

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屋根を健全に保つには、屋根の種類ごとの特徴や劣化の仕組みを理解し正しいメンテナンスをすることが重要です。

安易に塗替えや葺き替えをするのではなく、屋根の種類にあったメンテナンスがあることを知ってほしいです。

目次

住宅の代表的な屋根材の種類

昔からよく使用されている屋根材の代表的な種類は、瓦・スレート・金属・アスファルトシングルです。

最近では塗膜防水系やシート防水系の屋根材も見かけるようになりましたが、今回は昔からよくある屋根材をピックアップします。

瓦屋根

瓦は、粘土を焼いて造られるもので最も歴史があり日本の美しい風景をつくってきました。

焼き物であることから材自体の耐久性は最も高いことが特徴です。

スレート屋根

スレートは、セメントを薄い板状に加工した屋根材で、カラーベストやコロニアルと言われるベストセラー商品があり、昭和期の戸建住宅の大半がこの屋根材でつくられてきました。

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金属屋根

金属屋根は、名前のとおり金属で造られる屋根で瓦やスレートに比べ軽量であることが特徴です。住宅だけでなく大規模な建物にも採用される工法でもあります。

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アスファルトシングル

アスファルトシングルは、ガラス繊維の基材に防水性の高いアスファルトを含浸したもので、金属屋根と同様に瓦やスレートに比べて軽量であることが特徴です。アメリカやカナダなどの海外では歴史が古く、洋風のデザインが似合う屋根材です。

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瓦・スレート・金属・アスファルトシングルの屋根材はいずれも古くから使われる屋根材で、日本の風景を作ってきました。

瓦屋根を長く健全に保つ方法

瓦屋根は、大きくわけて2つの種類があります。それは粘土瓦とセメント瓦で見た目は殆ど同じですが、材料が粘土で造られているかセメントで造られているかの違いです。

粘土瓦の場合は、粘土を高温で焼き上げてつくりますので、土が緻密化し非常に耐久性の高い材料となります。また表面に釉を施すことで様々な色彩で表現することが出来ることも特徴で、焼き物と同様に時間が経てば経つほど味わい深さを感じられる屋根材です。

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瓦は粘土瓦・セメント瓦の2種類ですが、雨水から建物を守る方法は同じです。

瓦は、他の屋根材に比べ、隙間が沢山空いていることが特徴で屋根の勾配をきつくし重力を使って出来る限り早く雨水を排水させることによって、建物内に雨水の侵入を防ぐ構造となっています。

また、横風や台風時などの雨水が重力に逆らう時の為に、瓦の下地に防水シートが施されています。瓦は防水シートが紫外線や雨などによる劣化を防ぐ役割も担っています。

この屋根の構造から、表面を塗り替えることはあまり健全性の観点では効果を得られることは少ないと考えられます。

瓦自体の耐久性は非常に高いものですが、台風や地震などによって瓦が割れることや、ずれることがあります。また、昔の瓦屋根は瓦の隙間に漆喰が塗られていることがあります。その漆喰が剥がれることがあります。

この瓦の割れやずれ、漆喰の剥がれから雨水を侵入させてしまい、建物の構造体を劣化させてしまう要因となります。

瓦を長く健全に保つ方法は、日頃から瓦の割れやずれ、漆喰の剥がれがないか目視で確認することとなります。

屋根はなかなか上から見ることが出来ませんし、素人では判断が難しい所もあるので、信頼の置ける専門家へ数年に一度点検をすることで漏水による下地材や構造体の劣化を食い止めることができます。

点検時に瓦の割れやズレ、漆喰の剥がれが確認できれば、その部分だけを補修することで瓦屋根の寿命は最大化します。

スレート屋根を長く健全に保つ方法

スレート屋根は、瓦屋根同様に勾配をきつく確保し、重力を使って雨水を排水する構造です。形状がフラットで瓦に比べ隙間が少ないことが特徴です。

瓦に比べて材自体が薄く造られているため重量が軽く、施工しやすく、材料コストも抑えられることが特徴ですが、そのメリットの薄さが割れやすさのデメリットにも繋がっています。

スレート屋根のメンテナンスも瓦と同様に日常的な目視による割れやズレを確認することですが、スレートの場合、非常に微細なひび割れが発生することがあり、容易に発見することが難しいことも特徴の1つです。

微細なひび割れから、下地の防水シートの劣化要因をつくり徐々に劣化範囲を広げていくことに繋がります。

点検し割れが確認できた際は、部分的に補修することも可能ですが、スレート屋根は、軽く施工しやすく、材料コストも比較的安い材料ですので、全面取り替えることも比較的容易に低価格でできるのも特徴です。

注意が必要なのは、劣化していると人が乗っても割れてしまう程強度が低いことです。

点検時に人が乗ることで割れてしまうことがあるため、安易に屋根の上に上ってみることはおススメできません。

スレートは自然の石で作られているので、瓦同様に表面の塗替えすることで健全性が向上することは少ないと考えられます。

ただし、最近のスレートはセメントに塗装された化粧スレートが多くなってきています。その場合は、表面塗装が劣化し材自体の劣化につながるため、表面塗装のメンテナンスは必要となってきます。

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金属屋根を長く健全に保つ方法

金属屋根には、沢山の種類があります。スチール・亜鉛・ステンレス・アルミ・チタン・銅、それらの合金などです。

現在主流となっているのは、スチールと亜鉛のアルミの合金でガルバリウムと言われるものです。スチールに比べて錆びにくく、アルミに比べて安価で、加工もしやすいことから採用される事が多くなったものと考えられます。

アルミやステンレス、チタンなどは錆びにくく非常に耐久性が高いものですが、非常に高価であり、住宅で採用されることは少ないことから、今回はガルバリウムでの紹介とします。

金属屋根の特徴は、瓦やスレートに比べて圧倒的に材自体が薄く造られていることです。一般的な金属屋根の厚みは、0.4mm程度で1mmもないものが殆どです。

金属は水と空気によって錆びが発生します。材自体が薄く造られていることで、錆びによって穴が空きやすい構造となっています。

金属屋根のメンテナンスは、この金属の特性である錆びの進行を食い止めることが重要となります。
金属の錆びの進行を食い止める方法は、金属を水や空気に触れないようにする為の表面コーティングを定期的に塗り替えることが最も容易に金属を長持ちさせる方法です。

金属(ガルバリウム)屋根の場合、およそ15年から20年程度に一度表面コーティングの塗替えをすることが推奨されています。

また、台風などがあった場合は、何か物が飛んできて表面コーティングに傷が入ってしまう場合があります。その場合は、その部分だけを補修することも可能です。

この表面の傷は近くで見ないと気付かないことも多いため、定期的に点検をすることで知らず知らずの内に傷から錆びが進行することも食い止めることができます。

アスファルトシングル屋根を長く健全に保つ方法

アスファルトシングルは、ガラス繊維にアスファルトを含侵して造られていますので、柔軟性があり、他の屋根材で見られるようなひび割れや錆びるなどのトラブルがないのが特徴です。

アスファルトシングル屋根は、接着剤と専用金物を使って張り合わせて造られます。

この接着剤が剥がれ隙間ができ下地材を劣化させ、漏水事故に繋がることがあります。

屋根は非常に温度変化の激しい環境で、アスファルトシングルに使用される接着剤が温度変化や紫外線によって経年劣化していくことになります。

環境によって接着剤の寿命は異なりますが、10年から30年と言われています。環境のよいところであれば、30年以上もつ場合もあります。

メンテナンスについては、接着剤が劣化しアスファルトシングル材が剥がれていないか確認することです。剥がれていれば、その部分だけを補修することは可能ですが、10年以上経って剥がれが確認された場合は、その部分以外の接着剤も劣化が進行している可能性があります。その場合は、全面改修することが推奨されています。

アスファルトシングルも瓦やスレートに比べ、軽く施工しやすいため、全面改修も比較的容易に低価格で済む場合があります。

屋根を健全に長く保ち街の景観に貢献する

屋根材は、雨水の侵入を防ぐためだけでなく、建物自体の寿命に大きく影響するところであり非常に重要な建築部位となります。

屋根材の種類に応じた日頃のメンテナンスをすることで、建物自体の寿命を最大化し、街の景観に貢献することに繋がります。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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