電柱のある風景がない風景に戻ろうとしている

日本の風景で連想される1つに『電柱のある街並み』があります。

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日本中どこを見上げても電柱と電線が目線の中にはいってきます。

この電柱、電線の風景が切り取られ、それが美しい水彩画として表現される場合もあります。

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大ヒット映画の『君の名は』では、この電柱のある日本の原風景が美しく表現され美術背景をまとめた美術画集も販売されたほどです。

日本の風景になりつつある電柱をなくそうとする動きがあります。

東京都では、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を図る目的として「東京都無電柱化計画」を掲げ徐々に実現しています。

電柱のある風景が変わろうとしているのです。

目次

日本の電柱の風景の歴史

日本では、電気が開通した明治初期の時代から電柱が街に登場したようです。

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明治時代では、新鮮な風景だったことだと思います。

現代で例えると3Dサイネージでしょうか。

これを見た時は衝撃的でしたが、電気が家に入ってくることは当時もっと衝撃的だったかもしれません。

また、歴史としては約150年ですが、150年で日本の至る所に電柱が設置され風景の一部となることが証明されています。

逆説的に電柱を目線から外すことによる非現実感をつくり上げることも起こり得ています。

映画太秦村やディズニーランドがわかりやすい例です。

電柱が風景から消えようとしている

電柱をなくそうと取り組むのは東京だけでなく、京都や金沢などの歴史ある景観のある風景にも取り入れられようとしています。

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国土交通省による「無電柱化に係るガイドライン」に沿って無注電化が推進されていることもあり、全国的にこの取り組みは広がっていくものだと思います。

また、日本だけでなく世界の街並みも無電柱化が進んでおり、今後は無注電化が進むことで電柱のある風景が貴重となるかもしれません。

電柱を無くそうとする働き

電柱を無くそうとする動きは、景観的な観点からと防災的な観点からきています。

日本は、度々地震や台風により電柱の被害を受けてきました。

電柱は電気や通信を送る役割を担っていますが、電柱が地震や台風で倒れる危険性と、電柱が倒れることによる送電線が破損し火災事故につながることがあります。

現在の電柱は地震や台風の影響を考慮したものになっていますが、古くからある電柱は倒壊や火災の危険性は残ったままとなっています。

そのため、防災的な観点より電柱をなくし、電線や通信制を地下に埋める動きが出てきました。

一方で、災害により電柱に被害を受けたあと、復旧までにかかる時間は、世界でも日本は最も早いと言われており、現在では停電が何日も続くようなことは殆どない状況まで技術が進んでおります。

日本の電柱技術の進歩により、逆に世界の中で日本は無注電化が進んでいない要因の1つです。

また、無注電化が進まない要因のもう1つにコストの観点があります。

空中を架線するより、地中に配線するほうが圧倒的にコストがかかってしまいます。また、将来的な増設や改修が難しいことも挙げられます。

このコストと将来対応の問題点が解決されれば一気に無注電化が進み日本の風景が変わるかもしれません。

電柱のない風景になり空が広がる

150年以上続く電柱のある風景は、今や伝統的なものになりつつありますが、やはり景観を損ねる存在として、歴史的な風景がある地域では電柱をなくす取り組みが積極的に行われています。

京都市の幹線系路線の整備事例では、電柱をなくすことで歴史ある京都の街並みがより美しく整備されています。

この例ように前後の写真を見比べると、電柱はない方が街並みは美しく見えます。

今後は、東京・京都・金沢だけでなく防災的な観点と景観的な観点により無柱電化が進み、電柱のない風景が他の地域でも見られるようになるかもしれません。

電柱のある風景に慣れ親しんだところはありますが、電柱がない風景は空が広く感じられ今まで気付かなかった空の表情を感じることができます。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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