建築家が好む打放し建築「木材会館」の妙技

コンクリート打放しと木材の組み合わせが美しく、新旧の建築技術がうまく融合しながら実現された建築家が好むデザインです。

東京都江東区にある木材問屋組合のオフィスビルで、木場の『木材』の魅力を示すランドマークとなることをコンセプトしてつくられました。

設計は日建設計の山梨さん

組織設計事務所に所属しながらも、建築家として業界ではとても有名な方です。

とにかくかっこいい、美しい!

目次

外装に使う素材にこだわり

外装には、ヒノキの角材だけでなく、コンクリート打放し黒塗装杉板型枠のコンクリート打放しリン酸処理パネルが使われています。

どれも、外装の主役になり得る素材達です。

リン酸処理パネルは、この時2009年頃の少し前ごろからよく見かけるようになったものです。

元々、亜鉛メッキの素地ごしらえ(塗装前の下地処理)の為の技術でしたが、自然にできあがる独特の風合いが建築家や設計者の目にとまり、『塗装せずにそのままがいい』となったものです。

最近では、リン酸処理の仕上げが増え、建築家の設計する建築では頻繁に使用される素材の1つです。

ヒノキの外装モジュール(100mmピッチ)に合わせた杉板型枠の打放しと、それを惹きたてるコンクリート打放し黒塗装の組合せが非常に美しい。

このモジュールを合わせる技術と、それを惹きたてる打放しを黒くするセンス!

ディテールのこだわり

木材は雨に濡れると劣化の進行が早くなります。それは木材の中で腐朽菌の繁殖が増えるからで、水分があれば菌の繁殖が増殖されるため、出来る限り水分を避けた建築的な工夫が必要となります。

昔の日本の建築は深い軒により、外装の木材は雨にに濡れにくい構造となっておりましたが、このようなビル建築の場合、そのような深い軒を形成することは難しくなります。

そこで、木材を水分から遠ざける工夫が施されています。

木材はカットした面(年輪が見える面)から水分を吸い上げてしまう性質があります。
木材の足元は鉄骨で浮かすことで、雨が降った際の下からの水分を吸い上げにくくしています。
また、木材の縦のつなぎ目には水切りカバーを設け、つなぎ目から水分を吸い上げにくくしています。

木材の足元を鉄骨で浮かすことで木の劣化の進行を防いでいる
木材のつなぎ目に水切りカバーを設けることで劣化の進行を防いでいる

設備が全く見えない外観

外観は正面からも裏面からも全方向、どの面をみても換気扇やガラリなどの設備類が全く見えない建築です。

あまり気にしない設計者は、正面側であっても設備の効率などを優先し、換気扇フードやベントキャップなどを設けますが、意匠面に気をつかう設計者ではあれば、せめて正面には設備機器類がでてこないように調整します。

この建物は、どの面をみてもそのような設備機器が見えません。

これは、構造・設備のエンジニアと設計初期段階から密に調整を重ねてきた結晶です。

新旧の建築技術の融合

木材を伝統的な追掛大栓継手を施して組み上げています。

この伝統的な木材の組み方は精度の高い技術が要求されますが、最新技術のコンピューター制御により実現されています。

また、木材は可燃材です。

大規模な建築物を実現する場合、建築基準法上扱いにくい材料でもあります。

木材会館は、構造躯体を耐火性の高いコンクリートでつくり、木材が延焼しても安全に避難出来るよう計算された建築で、新旧の技術の結晶で出来ています。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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