ハウスメーカーに4年勤めたあと、組織設計事務所に転職し4年経った頃から自邸の設計をスタートしました。
2年以上かけて自邸を設計し、複数社の工務店に見積り交渉し最も信頼できる工務店と契約、約1年かけて建物が竣工しました。
思っていた以上の出来栄えに感動し施工関係者の皆様にお礼のお手紙をお送りしました。
ほんとに自分で設計し工務店で建ててよかったと思っています。
ただ、どんな人もこのケースに当てはまるかと言えばそうでないと思います。
ハウスメーカーと設計事務所と工務店
住宅を建てる手段として、大きくはハウスメーカー、設計事務所、工務店と3つあります。
他にも地元大工さんやセルフビルド、ネット販売など様々ありますが今回は代表的な上記3つで説明します。
ハウスメーカーで勤めて思ったこと
ハウスメーカーもピンキリでひとくくりで説明は難しいですが、老舗で今も安心出来る大手ハウスメーカーは、積水ハウス、ダイワハウス、住友林業、セキスイハイムだと思っています。私はセキスイハイムで4年勤めていましたが、勤めている時は、建てるならこの中のハウスメーカーで建てようと考えていました。
4年間で36棟の個人住宅を営業から設計、建物引き渡しまで担当させていただきました。実現しなかったり、他社で建てられたお客様を合わせると100棟以上の住宅の建築に携わったと思います。
また、ハウスメーカー時代は住宅展示場でいることが多く、他のハウスメーカーの担当者とも仲良くなる機会もあり、それぞれの会社の特徴や社風なども知ることが出来ました。
ハウスメーカー時代に経験して思うことは、やはり大手ハウスメーカーで建てておけばまず間違いなく安心して暮らしていけると言うことです。
建物をつくる上で重要な現場の精度はシステム化されていること
建築は今の時代でもアナログに造られます。
現場の職人の腕前により建物の性能が大きく左右されるところがあるのが実情です。
この現場の精度をいかに高く保ち、狙った性能の建物を実現するかは、設計や現場での監理が非常に重要となってきます。
設計や現場での監理もまたヒトのすることですが、この大部分が完璧にシステム化されているのが大手ハウスメーカーの強みだと思います。
設計から監理までシステム化することで、若い担当でもベテランの担当でも大きな精度の違いなく狙った性能の建物が完成することが可能となります。
ハウスメーカーのアフターフォローの体制
ハウスメーカーの何もより大きなメリットはアフターフォローが行き届いていることです。
アフターフォローを行おうとすると、かなりの人工・経費が必要となり、設計事務所や地場の工務店では採算がとても合わないのが実情です。また、新規のお客様の方を優先してしまう傾向がります。
大手ハウスメーカーは、アフター専門部隊を社内に配置していますので、万全の体制でアフターフォローすることが可能となります。
建築は、建てて終わりではなく、住み続けていく必要がありますので、アフターフォローは非常に重要となってきます。
ハウスメーカーのデザイン性
ハウスメーカーのいい所は、一定の性能・一定の精度が保証された建物が建築され、建てた後もアフターサービスが行き届いていることで、その安心感を決め手としての購入層が多い印象で、デザイン重視の購入層は、少しもの足りなさがあるかもしれません。
昔に比べ、今はかなりハイデザインに対応出来る商品も各社取り揃えてきていますので、殆どの要望に対して対応できる商品があるように思えますが、やはり一から設計・監理する場合に比べるとデザイン性はやや劣ることろがあります。
設計事務所と工務店で家を建てた理由
なぜハウスメーカーに勤めていて、ハウスメーカーのいい所を全て理解した上でも、あえて工務店の手段を取ったのか。
それは大きく3つあります。
1、建物の性能よりもデザイン性を重視したい思いが強かった
2、建物の性能とコストを細かくコントロールしたかったから
3、ハウスメーカーの高い性能、アフターフォロー、高い給料に疑問
1、建物の性能よりもデザイン性を重視したい思いが強かった
見た目のかわいさ、かっこよさ、美しさは人それぞれです。
ハウスメーカーでも見た目のかわいい住宅をつくることは十分可能です。
ただし、ハウスメーカーには一定の性能を確保する強いルールがあります。
それをはみ出すことは、原則できません。無理やりはみ出すとコストに跳ね返ってきます。
制限なしにデザインを考えようとすると、一から設計するしかないのです。
それは、建物の性能やアフターフォローに直結することで慎重にデザインする必要がありますが、制限なしにデザインする楽しさ、ワクワク感は他に変えられない価値があります。
もしかすると、一からデザインしたものがハウスメーカーにも出来るかもしれません。また、一から設計したものがハウスメーカーよりコストが高くなるかもしれません。
それでも、一から設計することに興味・価値を感じました。
2、建物の性能とコストを細かくコントロールしたかったから
ハウスメーカー時代に少し疑問に思っていたことがあります。
それは、営業文句の1つに「どの地域で建てても、同じ精度で同じ性能の建物を提供することが出来ます」です。
この「地域に限らず」に少し違和感を持っていました。
建築は地域の歴史や風土に基づき建てられてきた所があり、地域それぞれの特徴は建築に表れるものだと考えています。
その地域の土や木、空気、水、その地の特有の職人の技があり、それらと関係なく建てられていることは面白みに欠けると思ったからです。
建物の高い性能は、全て必要と思わないところもありました。
寒冷地と標準値ではもちろん断熱性能の考え方は変わってくるだけでなく、平地や山、谷地、海沿いなどの立地条件によっても、建物の目指す性能の考え方は変わってきます。
目指す性能を細かくコントロールしたい気持ちがありました。
また、性能を上げることは建設コストに大きく関わってくることになります。
もちろん全て高い性能を目指したいところですが、どの性能を重視するかは人それぞれです。
例えば、地域性から耐震性能や耐風圧はかなり上位の性能を確保し、断熱性能はそこそこにしておく、それによって選択するマテリアルをコントロールするなど、性能とコストを細かくコントロールしようとすれば、一から設計するしかないと思ったからです。
これも、たまたまコントロールした結果がハウスメーカーの標準使用と同じとなる場合もあるかもしれません。
それでもいいんです。その過程を分かっていることが大事だと思っています。
3、ハウスメーカーの高い性能、アフターフォロー、高い給料に疑問
ハウスメーカーは耐震性・耐火性・省エネ性など全てにおいて素晴らしい性能を満足する家をどの地域においても実現します。またどの地域においても、アフターフォローの体制が万全です。また、どの地域の担当者も日本の平均以上の給料があります。
更に、展示場出店や新聞広告、TV、雑誌などの広告費に多くの経費をかけています。
これら経費の全てが建設費の一部に含まれていることは間違いありません。
かなり割高になっていることは間違いのない事実です。
ただし、これも分かった上で購入しようと思うのは、家は一生付き合うもので、世の中の工務店にはハズレも必ずあり、絶対的な信頼できるところで購入したい気持ちから、この金額に納得して購入していることになります。
中古車を買うのか新車を買うのかに近い感覚だと思いますが、家の場合は金額が大きく、一生住み続けることになるので、更に慎重になり、安心メーカーの新車を購入する層が一定数いることと似ているところがあります。
ハウスメーカーの建物は多くの経費が含まれていることには間違いなく、それらを全て分解しコストをかける所と、削減するところにメリハリをつけたい思いが強くなり一から設計する方を選択しました。
ハウスメーカーと設計事務所と工務店で迷われている方へ
設計事務所や工務店の中には、ハウスメーカーのことをよく思っていない方や、悪く言う方がいますが、間違いなく安心して建てられるのはハウスメーカーです。
一生住み続けるなかで、間違いなくトラブルは発生します。
その時のアフター対応に安心出来るのはハウスメーカーです。
もちろん、設計事務所や工務店もきちんと対応している優良なところはありますが、それを素人のお客様が契約前に見極めるのは極めて難しいことだと思います。
ただし、下記のことを思っている方にはハウスメーカーは物足りないのかもしれません。
・とことんこだわってデザインしたい
・建物が好きで一から組み立て方を勉強したい
・隅々まで自邸のことを知っておきたい
・性能とコストを細かくコントロールしたい
・出来る限りコストを抑えデザイン性の高い建物としたい
これらのことを全て満足したいと本気で思う方は、超優良な設計事務所や工務店に依頼するしかないと思います。
勉強することが面倒、難しいことはプロに任せておく、とにかく安心が第一と思う場合は、間違いなく大手ハウスメーカーが最もコストパフォーマンスが高くなることは間違いありません。
最後に
本当は、ハウスメーカーと設計事務所の違いはもっと沢山あります。
一概にどちらがよいとは言えないところです。
実際ハウスメーカーにいた私も迷ったところです。
少しでも、私の経験が参考になれば幸いです。
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