コンクリートブロックは、最近あまり見かけなくなりましたが、使い方によってはコストを抑えハイセンスな空間を演出することができる魅力的なアイテムです。
コンクリートブロックは、塗装やクロスなどの人工的なものとは異なり、コンクリートの素材感・力強さも感じられインテリアのアクセントとしても有効な素材です。
耐震安全性の観点から、大きな面積で使用することを嫌がる設計者が多いため、使われることが少なくなっていますが、使い方の工夫や技術的な解決によって、コストパフォーマンスの高い素材として今後も使われていく建築マテリアルだと考えます。
コンクリートブロックが少なくなっている理由
最近コンクリートブロックを見かけなくなった理由としては、耐震安全性の観点とブロック積職人の減少によるところから、使われることが少なくなって来ていると考えられています。
耐震安全性の観点からコンクリートブロックが使われなくなってきている
一昔前では、敷地周囲を囲む塀はコンクリートブロックが多く採用されていました。
当時は、コンクリートブロック塀への耐震安全性の基準も明確になかったため、コストが安く、早く施工でき、丈夫なものとして採用されることが多かったと考えられます。
大きな面積のコンクリートブロックは、今の基準であれば控え壁や臥梁といった補強を施すことになっていますが、昔のコンクリートブロック塀はそのような補強は行われずに施工されていることが多く、大震災のたびに崩壊し問題となってきました。
公共建築物ではコンクリートブロック塀は全て現行の基準に合致しているか否かのチェックを行い、基準を満たしていないコンクリートブロックは全て撤去されつつあります。
また、最近では公共建築物だけでなく民間の建物についても耐震安全性の観点から、コンクリートブロックは採用されにくくなっています。
コンクリートブロックを積み上げる職人が減少している
耐震性の観点からコンクリートブロックの採用を見送ることが多くなったことを受け、ブロック積み職人も一気に減少し、今では職人を確保することが非常に難しく、他府県から職人を呼び寄せてブロックを積み上げることをする現場もあります。
他府県から職人を呼び寄せてブロックを積み上げることで、本来コストが安く収まるコンクリートブロックも職人代が高くなり、コストパフォーマンスが悪くなります。
また、これはブロック積み職人に限った話ではありませんが、建築の現場で働く職人が全体的に少なくなっていることもあり、最近では外国人がブロックを積み上げている現場も見かけるようになりました。
コンクリートブロックの魅力
コンクリートブロックは、コンクリート打放しに似た強い素材感が感じられます。また、ブロックの種類も豊富で積み上げ方や透かし方によってデザインの可能性は広がります。
コンクリート打放しは、現場で作り上げるため、コストも高く、技術的にも難しいため、少しハードルが高いものですが、一方コンクリートブロックは、工場で精度高く大量に造られますので、コンクリート打放しに比べコストも安く・施工難易度も低くなるため採用するハードルは低くなります。
コンクリートブロックはコストが安く済む
コンクリートブロックは、建築コンクリート系仕上げ材の中ではコストが安く済む部類です。
コンクリート系仕上げ材としては、コンクリート打放し、押出し成形セメント板、デラクリートなどがあります。あくまで本物のコンクリート系として比較します。
コンクリートに似せた塗装やプリントやクロスはありますが、それらは省きます。
コストの順としては、コンクリート打放し>押出し成形セメント板>デラクリート>コンクリートブロック
となり、本物のコンクリートを扱う素材としては最も安価な部類になります。
コンクリートブロックの遮音性・耐火性・耐水性などの高い性能
コンクリートブロックは比重はコンクリートと同等なので、遮音性に優れます。
隣の部屋との遮音性を高めたい場合は、その界壁に使うこともできます。
また、耐火性や耐水性に優れていますので、キッチンやお風呂などにも使用することが出来ます。
コンクリート素材の魅力
コンクリートブロックは、コンクリート素地のままの表情で、コンクリート特有の不均一さを積み上げて面として見た時に唯一無二の表情ができます。
積み上げるプロセスはレンガと同様で、職人によってもその表情が変わる面白い所があります。ヒトの意図が介在しない自然界の1 /f揺らぎの心地よさがコンクリートブロックの表情に感じられます。
コンクリートブロックは木材との相性がいい
コンクリートブロックは、コンクリート打放しと似たような意匠性を併せ持っています。
コンクリートの表情は木材のような自然界の表情に似た所があり、コンクリート打放しと同様に、コンクリートブロックは木材との相性が非常にいいです。
コンクリートブロック使いこなし術
コンクリートブロックを大きな面積で積み上げると、耐震性の問題と職人の問題に悩まされる事になるため、部分的に使うことでそれらの問題が解消されます。
コンクリートブロックは部分的に使用する
机の脚部であったり、キッチンの腰壁部分など職人を呼ぶまでもない簡易な構造に使うことで、耐震性の問題と職人の問題のハードルは低くなります。また、部分的に使用することで、空間にいいアクセントを与えます。
また、一部の壁面に使用することで他の素材と対比されコンクリートブロックの素材感がより強調されて空間にいいアクセントを与えます。
コンクリートブロックを透しながら積み上げる乾式工法
コンクリートブロックは本来隙間を開けずに積み上げ、鉄筋・モルタルを隙間に充填しながら積み上げていくことで耐震性などの強度を担保しています。
この工法は、鉄筋コンクリートと同様に地震の揺れに対して強度で耐える構造となっています。
この耐震性を担保する鉄筋モルタルの代わりに、鉄骨柱を使用する方法があります。
この方法は、コンクリートブロックに挿入する鉄骨柱で耐震性を担保する工法で、地震の揺れに対して鉄骨柱の靱性(材料の粘り強さ)でチカラを逃がす工法で、上記の強度で耐える構造に比べて耐震性の高い構造となります。
鉄骨柱を使用することで、コンクリートブロックの積み方も密に積む必要性がなくなり、自由度の高いデザインが可能となりました。
コンクリートを透しながら積み上げることで、コンクリートの素材感に加え向こうへ視線が抜ける透明感も表現することが可能となりました。
また、透して積み上げることで、書棚や植栽置きに使用することもできデザインの可能性も大きく広がります。
打放に似たコンクリートブロックは美しい建物に今後も使われていく
耐震安全性の観点や職人の減少により、使われることが少なくなってきたコンクリートブロックですが、技術的に耐震性を満足させ、また職人の不要な使い方、工法の工夫により現在の基準に満足したコンクリートブロックを使ったデザインが可能となっています。
コストも安く、コンクリート打放しに似た魅力を持ち合わせるコンクリートブロックはコストパフォーマンスの非常に高い素材としてこれからも美しい建築に使われていくものと考えられます。
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