コンクリート打放しと木とレンガがいつまでも美しく感じる理由

今や住宅建築では主流となっているサイディングやクロスなどの大量に造られる工業製品に比べ、その現場で一品生産されるコンクリート打放しや木・レンガは、建築に使用されてから200年以上の歴史があり、時が経てば経つほど美しく味わい深くなる建築素材として愛されてきました。

コンクリート打放しと木とレンガがいつまでも美しく感じる理由は、自然界の「ゆらぎ」が関係しています。

自然界のゆらぎ

自然界には、木漏れ日、海のさざ波、雨の音、川のせせらぎなど不規則に変化する音や光景が多くみられます。またヒトの心臓や、静脈の流れなどわずかな不規則性など、ヒトも含めた自然界全体に不規則性をもったゆらぎが存在し、ヒトはそのゆらぎに安心や癒しを感じられるという研究結果があります。

目次

コンクリート打放しと木とレンガの自然界のゆらぎとの関係性

自然界に存在するゆらぎが発見されたのは、約80年ほど前と言われています。

自然界にあるものの殆どは大小は異なれど不規則に変化しゆらぎがあります。

自然界のゆらぎ

自然界のゆらぎはヒトの心を落ち着かせる

このゆらぎが大きいと意外性や突発性が高く、ヒトは不安を感じたり違和感を感じます。

逆にゆらぎが小さすぎると、安心を感じる場面もありますが単調に感じます。

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自然界にある木漏れ日や海のさざ波などのゆらぎは、規則性と突発性、予測性と逸脱性が適度に組み合わさったもので、心地のよい空間と情報を与え、ヒトの心を落ち着かせるといわれています。

ゆらぎを感じるコンクリート打放しの魅力

コンクリート打放しには、人工的であるはずなのに、なぜか魅力的に感じるところがあります。

コンクリート打放しは、その地の石や水などの自然材料をつかい、その地の温度や湿度などの自然環境に大きく影響をうけて造られます

その表情はヒトが意図して造られるものではなく、不規則に濃淡や凹凸形状の密集度合に変化があり、その地の自然のゆらぎが反映されています。

木のゆらぎの魅力

木は、まさに自然の材料がそのまま表情に反映された建築材料です。

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木の表情にあらわれる年輪の模様ひとつ取っても、木の育ってきた自然環境によって変わってきます。太陽の当たり方やその地の気候によって、同じ木の種類であっても一つ一つ異なる年輪の表情がありその不規則性がヒトの心を落ち着かせてくれます

また、木は古くから建物に使われてきたこともあり日本人にも馴染みのある素材で、経年変化によって表情に深みを与える

レンガのゆらぎの魅力

レンガは、木やコンクリートよりも歴史があり紀元前4000年頃の古代メソポタミアにすでに存在していたと言われています。

レンガは粘土質の土に藁や小石などを練り混ぜ天日干しにすることで造られていましたので、世界中どこででもつくることが出来る材料として古くから建築に使われてきました。

今では、粘土を高温で焼き上げることで耐久性や耐水性の高い建築材料として使われています。

自然の土で造られるレンガは、そのまま自然のゆらぎが表情として反映され、時を重ねるごとに汚れを纏い美しさに深みを与えてくれます。

建築空間で感じるゆらぎ

コンクリート打放しや木・レンガは古くから建築で自然のゆらぎを感じられる素材として建築空間を彩ってきましたが、他にも自然のゆらぎを感じられる建築空間のつくりかたがあります。

借景や中庭空間によってダイレクトに自然のゆらぎを感じる

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建築空間を自然界と繋げる役割をもつ借景窓や中庭。これらは直接的に自然界のゆらぎを建築空間のなかで感じることができます。

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この借景や中庭を建築空間として取り入れてつくられているのは、自然のゆらぎが研究される前からありました。

今は研究がすすめられ、ゆらぎがヒトの心にいい影響を与えることが分かってきていますが、ヒトはこのゆらぎを感覚的に心地よいと昔から気付いていたのかもしれません

バイオフィリックによる自然を感じるデザイン

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バイオフィリックとは、1984年にアメリカの生物学者エドワード.O.ウィルソンによって提唱された「人間には“自然とつながりたい”という本能的欲求がある」という概念で、ヒトは本能的に自然の風や木々、水の流れなどに接することで、幸せを感じられるようにできています。

この考えを最近オフィス建築で取り入れる事例が増えています。これは、バイオフィリックの考え方が、社員の知的生産性と健康増進に効果があるという考え方が浸透してきているからです。

バイオフィリックデザインを取り入れる例として多いのはオフィス建築の緑化です。これはダイレクトに自然を感じられ社員の知的生産性の向上に繋がります。更に企業としてSDGsへの取り組みも積極的であることを示すことができます。

緑化は建築空間にとって、少しインパクトが強いところがありますが、コンクリート打放しや木・レンガなどの自然のゆらぎを感じられる素材と組み合わせることで、自然と馴染み落ち着いた空間となります。

サーカディアンリズムの光を取り入れたゆらぎ

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サーカディアンリズムは、人が生まれながらにしてもっている身体リズムで「体内時計」とも呼ばれています。

サーカディアンリズムは人だけでなく、動物植物にもあるとされていますが、25時間の周期になっているといわれています。

一日24時間の現代からは1時間ずつずれていくことになりますが、太陽の光によってヒトや動植物は体内時計をリセットし24時間に同調していくとされています。

この同調因子はいくつかあり、代表的なものに「太陽や人工的な光」「時計など時間がわかるもの」「食事」「運動」「通勤・通学などの習慣」などがあります。これらによって、25時間のリズムが24時間へとリセットされることで、私たちは日々規則的な生活を送ることができるとされています。

この自然界のサーカディアンリズムをリセットする太陽の光は朝から夜まで少しずつ色温度や光の角度が変化しています。

この太陽の光の変化を照明器具によって再現し、ヒトの体内時計と同調させることによって、ヒトのもつパフォーマンスを最大化させることができます。

このサーカディアンリズムの光は、素材感のあるコンクリート打放しや、木・レンガと組み合わせることで、より自然のゆらぎを感じられる空間となります

コンクリート打放しと木とレンガがいつまでも美しく感じる理由

コンクリート打放しと木とレンガがいつまでも美しく感じる理由は、自然界の木漏れ日、海のさざ波、雨の音、川のせせらぎなど不規則に変化する音や光景が表情に表れる素材であるからです。

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建築空間として、借景や中庭、バイオフィリックによる緑化や、体内時計のサーカディアンリズムと調和できるコンクリート打放しと木とレンガは、ヒトの心に癒しや落ち着きを与えてくれる素材であり、見た目だけの美しさでなく、内面からくる表情が意匠として建築空間を彩ります

また、時代を超えていつまでも美しさを保つ秘訣は、素材自体が自然であることが1つのヒントになっているのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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