水を建築に取り込む環境サスティナブルデザイン

水を取り込む環境デザイン

地球環境へ配慮し、持続可能な社会を目指すサスティナブルデザインは、今や建築にとどまらず食品や日用品などあらゆるところに広まりつつあります。

建築では、廃材のリサイクル活用や太陽光発電などの創エネ、高断熱化による省エネの技術が成熟されるなか、水を取り入れた環境デザインが注目されています。

本来、建築(建材)にとって水は遠ざける存在ではありますが、ヒトにとっては必要不可欠なモノで、うまく共存することでこれからの新しいサスティナブルデザインにつながるものだと考えられます。

本記事では、最近の水を取り込んだ環境サスティナブルデザインの事例の紹介と、水を取り入れることの注意点とその効果について解説します。

目次

水を建築に取り込む環境デザイン例

NBF大崎(旧ソニーシティ大崎)ビル 日建設計

打ち水

日本の夏の風物詩である「打ち水」をヒントに、ヒートアイランド現象の抑制につなげている事例です。

建物に降る雨を利用し、「打ち水」の気化熱現象を建物の表面に再現することで、建物内の夏の暑さを軽減するだけでなく、建物周辺の温度も下げる効果があり、ヒートアイランド現象の抑制につながっています。

具体的には、

  1. 建物の雨水を一旦地下の貯留槽へ蓄えます。
  2. 太陽光発電の自然エネルギーを使って、地下に蓄えられた雨水を外装のルーバーへ循環させます。
  3. 外装のルーバーは水がにじみやすいレンガのような素焼きパイプで計画されていて、外装ルーバーに雨水が循環されると、素焼きのパイプから発生した気化熱で建物を含めた周囲全体を冷却します。
日建設計HP(NBF大崎)

熊本ピカデリー

この施設の特徴は、建物内に計画されている7層吹抜け分を流れる滝にあります。

外観は普通の商業施設ですが、エントランス入った瞬間空気感が変わります。
7層分吹抜けに計画されている滝と植栽帯(もはや森)が圧感です。
入った瞬間に、森林浴のような心地よい瑞々しい風と光と水音に包まれ、明らかに人工的な空調設備とは異なることが分かります。

随所に植えられている高木は、照度分析シミュレーションを用いて自然光が効率良く当たる木の高さや配置、密度などを検討されて、商業空間としての光の演出も加味して、緑のランドスケープをつくっている。
更に、7層分吹抜けに計画されている滝は、落水音や湿気を、商業空間に適したレベルに抑えつつ、自然な滝に近い水景をつくるために、3階にある池に水をためた後、滝口から「線状」に流すことで、落水音を抑えることができた。

日経アーキテクチャー2021.07

プール学院中学校・高等学校

竹中工務店HP(エコスクールの実現)

校内にビオトーブを横断させることで、屋外の学習環境の整備に加え、水の気化熱を利用して自然風による換気がデザインされています。

ビオトーブの水源は、校内の井戸水と、建物に降る雨を放流することで、自然の水を循環させています。

また、建物に降った雨水がビオトーブに放流され、オーバフローした余った分は貯留、浄水することで水使用量の削減につながっています。

水を建築屋内で使用する場合の注意点とそれらのコスト的影響

一般的には建築は、屋根、外壁、窓に囲まれていることが前提で、内装材に水がかかることは想定されていません。

水を屋内に取り入れると、その「水がかからない」の大前提が崩れることになりますので、内装材が痛む、室内の湿度が高まりカビが発生するなどのリスクに対する処置が必要となります。

下階や他室への水のまわり込み防止の技術と建設コストへの影響

屋内で水を使用することで、使用した部分の下階への防水処理が必要となります。

具体的には2階で水を使用すると、1階部分へ漏水しないように屋根で施すような防水を2階床面で施工しなければなりません。

1つの建物で2枚の屋根が必要となるイメージです。更に、水は重力により上から下へ落ちるだけでなく、狭い隙間があると水平にも伝っていきます。

水平に伝っていく水に対しても、完全にまわり込まない建築的な工夫が必要となります。

それらの水が回り込まない二重、三重の防水処理が必要となり、建設コストに跳ね返ってくることになります。

更に、防水し集水した水は、最終的にはどこかに排水又は再利用するために、建物内部を配管されることになりますが、それら配管を見えない所へ隠す工夫と、配管の漏水リスクに対する防水処置が必要となり、さらに建設コストを膨れ上がらせる要因となります。

結露防止の技術的解決と設計コストへの影響

水が屋内で常にある状態となると、水分の気化により結露の発生の可能性が高くなります。

特に温度差が発生する部分の部材に結露が発生しやすくなります。

一般的に温度差が発生しやすい屋内外との境界は、ガラスや外壁であり結露が発生することを想定し、断熱性を向上させる対策や、結露を排水させる機構が組み込まれます。

一方、室内となると内装材でそのような断熱性の対策や結露排水機構は想定されていませんので、結露させないため、湿度を調整する換気や空調の技術的な解決が必要となります。

昨今は、それら環境をシミュレーションする技術が発達したことにより、換気空調設備による結露を制御することが可能となりました。

仮想空間をコンピューターのなかでモデリング作成し、水と空気の環境をシミュレーションして、必要な設備を組み入れる設計を行います。

これらは、設計段階のコストや、設計工期に影響してきます。

水を建築屋内で使用するメリット

技術的、建設コスト的解説が成されれば、建築屋内で水を使用するメリットは今までにない非日常的空間を作り上げることも出来、大きなメリットともなり得ます。

環境シミュレーションによる光の調整が可能

動きのある水を屋内に取り入れることにより、屋外から屋内に入り込む光の反射角や、演出照明による水の揺らめきを感じることが出来る空間が実現可能となります。

環境シミュレーション技術により、動きのある水に対しても、それら光の調整が可能となりました。

動きのある水に加え、植栽や内装のインテリアの配置も環境シミュレーションに取り込むことにより、より奥深い光の演出が可能となり、屋内で居ながらも森林浴をしているような雰囲気に近いものを作り出せるところまで技術は進んでおります。

動きのある水の音の効果

建築屋内で水を使用する場合、ビオトーブや水盤のように静かに使用する場合と、滝などのような動きを魅せる場合の大きくは2種類あります。

ビオトーブや水盤のような静かに使用する場合は、水の音の効果は、コンピューターによる人工的な効果音により空間を彩ることがあります。

一方、滝のような動きのある水を魅せる場合、水の生の音を効果音として使用することが出来ます。

ただし、生の音の場合は制御が難しく、建物用途によっては逆効果となり得ることも考えられます。

これらの音の制御についても、水を流す角度や、水を流れる隙間を調整し、コンピューター上で環境シミュレーションすることで、程よい音質となるよう制御することが可能となりました。

その建物にあった、最も効果的な水の落ちる音をつくりだしています。

水を屋内に取り込む建築

水を屋内に取り入れる建築は、温浴施設、商業施設、美術館など特別な建物に採用されることが今までは一般的ではありました。

防水技術や、環境シミュレーション技術の発達により、屋内に水を取り込みさまざまな効果を得ることになった今、さらなる新しい使用方法が考えられるのではないかと思わせてくれます。

今後も、屋内に水を取り込んだ建築に期待感が膨らみます。

水を取り込む環境デザイン

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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