石や木、レンガに比べて工業製品っぽさがあるタイルですが、つくり方によって陶器と同様に一期一会のような魅力的な表情を見せてくれる場合があります。
タイルは耐久性や耐火性、耐水性に優れ建築の外壁材やインテリアにも非常によく使われる材ではありますが、簡単に扱うにはもったいない魅力が沢山ありますので、その魅力について解説していきたいと思います。
吸水率の違いによるタイルの違い
タイルは、吸水率の違いにより種類が分かれています。
具体的には、土を焼く温度の違いにより緻密度が変化し吸水率の違いとなって現れてきます。
1、磁器質タイル(JIS:Ⅰ類)
約1200~1350℃程度の高温で焼き上げます。
緻密で硬く、吸水性が低いのが特徴です。
吸水率が低い為、水に塗れても問題とならない外壁や水廻りでつかわれることが多くなります。
(旧JIS基準:吸水率1%以下、新JIS基準:吸水率3%以下)
緻密に焼き上げられるため、たたくと金属のような澄んだ音がします。
表情にも緻密さが伝わってきますので、金属に近い透明感や硬質感、シャープさを感じられます。
2、せっ器質(JIS:Ⅱ類)
約1200℃前後の温度で焼き上げてつくります。
吸水性は中程度で、磁器質に比べて吸水率が高い為、あまり水廻りでは使用されません。
(旧JIS基準:吸水率5%以下、新JIS基準:吸水率10%以下)。
やや温度が低く抑えられている為、タイルの表情がやや柔らかく感じます。
煉瓦(レンガ)の焼き温度も、このせっ器質に近い温度で焼かれているため表情がよく似ています。
3、陶器質(JIS:Ⅲ類)
約1000~1200℃で焼かれてつくられます。
多孔質で吸水性が高いのが特徴で、水廻りには殆どつかわれることはありませんが、内装の壁材等でつかわれます。
(旧JIS基準ん:吸水率22%以下、新JIS基準:吸水率50%以下)
ただし、釉薬により表面をガラスコーティングすることにより水廻りにも使用することが可能です。
成形方法による分類
1、湿式成形タイル (JIS:A類)
土練機で原料を混練し、押出成形したものです
湿式製法は、焼き物特有の味わいや、温かみのある表情が魅力です。原料の含水率が高いため、焼成により、収縮や歪みが生じやすいですが、その少々の誤差が、焼き物ならではの個性や質感、いわゆる「味」を生み出します。
湿式タイルの見分け方は、押出成形のため、裏足の形状がスタンプ状にはならず、筋状の窪みが見られます。
押出成形のため、基本的には形状が正方形又は長方形となります。
2、乾式成形タイル (JIS:B類)
粉状の原料を高圧のプレス機で成形したものです。
乾式製法は「乾燥」「焼成」の時間が短いため、寸法精度が高く品質が安定しています。金型に坏土を取り、プレスするため、均一なすっきりとした風合いのものが多いです。
乾式タイルの見分け方は、プレスして成形するため、裏足の形状がスタンプ状になります。金型からつくることが出来るため、比較的自由な形をつくることが出来ます。
釉薬の有無による違い
釉薬は、タイルを焼く前に表面に塗るガラス質のものです。
吸水率の低いタイルであってもガラス質の釉薬を施すことで吸水率をカバー出来る特性もあります。
コーティングすることで表面からの吸水を防いだり、割れにくくしたり、汚れを付きにくくするといった清掃性に優れた実用的な役割も兼ねています。
例えば、洗面器・便器等は陶器質で多孔質に焼き上げられ、吸水率を上げるために釉薬によって水に強くなるようにつくられています。
無釉タイルでは、土に含まれる素材自体の色がそのまま表情としてあらわれてきます。より素材感が感じられる仕上げとなります。
また、ガラスコーティングしていないため、質感はマットな感じになります。
タイルの色の違い
タイルは、陶器類と同様に粘土を焼いてつくり上げられるもので、粘土に含まれる天然の鉄や銅、クロム、コバルト、ニッケル、アンチモンなどの金属の化合物が、土の成分と混ぜて高温で、反応してさまざまな色があらわれてきます。
鉄…赤、茶、黄、褐色、黒
銅…緑、水色、赤
クロム…緑、紫、ピンク、黒
コバルト…青
ニッケル…青、緑
アンチモン…黄
錫…白
マンガン…紫、褐色、ピンク
(LIXIL:タイル・レンガの豆知識より)
焼成方法によるタイルの違い
1、酸化焼成タイル
酸素を多くして焼成したものです。
素地や釉薬に含まれる酸化金属と酸素が結合させ、別の化合物に変えて呈色させます。
比較的安定した色が得られるのが特徴です。
「酸化する」=「錆びる」ですので、「銅」が錆びると緑色になります。
鉄が錆びると赤〜茶色になります。
2、還元焼成タイル
酸素を少なくして焼成したものです。
素地や釉薬に含まれる酸化金属の酸素を取り去って呈色させます。あたり具合等で、色が微妙に変化し、焼き物らしい色幅(窯変)が生じやすいのが特徴です。
酸化金属から酸素が奪われることを「還元」反応と呼びます。(不完全燃焼とも言います)
錆びた「銅」から酸素を奪うと、銅の元の色(赤銅色)になります。
鉄から酸素を奪うと元の色「黒」に近づきます。
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