外観の美しさを保つ切り札『水切り』

建物の外観は、時間が経つにつれ汚れが足され、美しさが増す場合と、そうでない場合があります。

汚れが足されて美しくなる秘訣は、外壁材の選定に加え、いかに雨水の汚れをデザインするかです。

目次

雨水の汚れをデザインする=水切りを考える

雨水は、屋根や外壁を伝って地面へ流れていきます。

雨水の流れる経路の中で汚れを拾って流していくことになります。

雨水の流れる道はおのずと雨水の流れない場所に比べてはるかに汚れがひどくなります。

その汚れを自然なカタチに近づけるかが美しく錆びるか否かにかかっています。

その自然なカタチに近づけるためには、水切りのデザインがとても重要となります。

雨水を流れをデザインする水切り

『水切り』とは、水を切る部位を示しています。

水は、重力に従って屋根から外壁、そして地面へ流れます。

ただし、伝わる所があれば、表面張力と毛細管現象により水平にも、重力に逆らう部分にも入って行きます。

それを物理的に切断し、雨水の流れを狙ったところへ導いてあげるのが水切りの役割です。

建築では、水切りを至る所に計画し、建物内部への漏水を防止する非常に重要な役割を担っていますが、それに加え、汚れを制御する役割も担っています。

水切りは、どんなところに付いてるか

水切りは、屋根、外壁、窓周りなどに必ず付いてきます。

室内では、キッチンやお風呂、洗面なんかにも付いてきます。

『外観を美しく』の意味合いでは、水切りは邪魔者扱いされることが多くあります。

どうしてもデザイン上、余分な線となって表れてきます。

この余分な線となって表れてくる水切りをいかに美しく魅せるか。

消し去る手法とあえて見せる手法、さまざまな手法で水切りが存在しています。

部位ごとの水切りのデザイン

部位ごとに水切りは様々な手法をつかってデザインされています。

屋根、外壁頂部の水切り

昔の建物は必ず、屋根の先端(軒先)部分が水切りの役割を持っていました。

pinterest(昔ながらの屋根のある風景)

それは、外壁が土壁や板張り、障子など、水に弱い材料で出来ているため、屋根の水が外壁に伝うことのないよう、軒を深くして、必ず軒先で水が切れるようデザインされています。

一方最近の建物は、外壁の防水性能が向上し、軒のないデザインが多く見られるようになりました。

こうなると余計に水切りの役割が重要となってきますが、軒がないデザインの場合、水切りの存在が余計大きく感じられるので、デザイン重視で水切りを小さくしたり、水切りをなくすような危険なデザインも見受けられます。最初は美しいのですが、何年か経つと汚れの酷いところとそうでない所がはっきりしてくるのであまり美しくありません。

pinterest(水切りのない最初は美しいデザイン)
pinterest(水切りを極小とした場合)

どうしても、軒のないシンプルな美しいデザインにしたい場合は、屋根と外壁を一体にデザインする方法や、2重外壁にすることで水切りの存在を消してしまう手法があります。

pinterest(屋根と外壁を一体にデザインした例)
pinterest(外壁を2重にして水切りを隠している例)

この外壁頂部の水切りは、外観の美しさを保つだけでなく、建物の寿命にも大きな影響を及ぼす所となりますので、慎重にデザインする必要があります。

外壁最下部の水切り

外壁の最下部の水切りについては、外壁を伝ってきた雨水が外壁の内側へ侵入しないようにする役割があります。

pinterest

外壁最下部は一般的には、コンクリートの腰壁と取り合うことが多く、外壁材とコンクリート腰壁の間へ、金物を曲げ加工した水切りを設置します。

水切りがなく、シーリングだけで止水している例も見受けることもありますが、シーリングは永久的なものではないので、シーリングが切れた途端、室内へ雨水が侵入することになります。

腰壁を高く立ち上げ、外壁を大きくオーバーラップさせることで、雨水の侵入も防いで水切りもなくシンプルに納める方法もあります。

pinterest(水切りをなくして外壁を切りっぱなしとした例)

シンプルに安全にデザインするのであれば、外壁内に雨水が侵入しても、外部へ排水できる構造とすることで、防水機能面と美観を両立することが可能となります。

窓上部の水切り

窓上部に設置する水切りの役割は、窓上部の外壁から伝ってくる雨水が窓へ入るのを防ぎます。

外壁を伝う雨水の量は、屋根面に溜めた量に比べると少なくなりますが、計算上は、フラット屋根面へ溜まる雨の量の5割程度と考えますので、外壁面を伝って流れてくる雨の量もかなりの量が流れてきます。

それらの雨水が窓面へそのまま伝わりますと、窓面の汚れや室内への漏水に直結しますので、窓上の水切りは必須となってきます。

窓上の水切りには、建物の構造によっても設置の仕方は様々です。

コンクリート造の場合、窓を外壁面より室内側へセットバックさせた位置へ設置し、窓上部のRC面へ水切り目地を設けます。

最も目立たず、ローコストな方法で、RC造の公共建築物では最も多く採用されている手法だと思われます。

鉄骨造では、窓位置が外壁面と同面に設置されることが多いため、窓上に金物で水切りをつけて、窓から上部の外壁を伝って流れてくる雨水が直接窓面へ伝わらないように設置します。

木造でも、鉄骨造と同様に窓と外壁が同面に設置されることが多いため、鉄骨造と同様に金物で水切りを設置する例が多いです。

こんなのも窓上の水切りです。新幹線に乗車する人に雨垂れが落ちないように水切りがつけられています。

pinterest(新幹線入口の水切り)

窓下部の水切り

pinterest

窓下部の水切りの役割は、窓上部の水切りとは少し様子が異なり、主に窓の下部の外壁汚れ防止の意味合いが大きくなってきます。

窓は、外壁面より、内側にセットバックされてたり、窓上部に水切りが設定されることにより、埃がたかりやすい構造となっています。

外壁面と異なる汚れ方をする窓面に雨水がかかり、そのまま外壁面を伝うと筋状の汚れが残ることになります。

外壁面が一様に汚れれば、それほど気にならないですが、筋状に汚れが目立つとあまり美しくありません。

外壁面の汚れは、建物劣化状況が一番目立つところですので、この窓下の水切りの計画一つで、大きく差が出てくることになります。なので、汚れた窓まわりの雨水を外壁に垂らさない工夫はさまざまです。

pinterest(汚れた雨水を外壁に垂らさない工夫)

窓下部の水切り種類については、窓のとりつく位置(外壁との関係性)によって変わってきます。

例えば、窓位置が外壁面より飛び出してとりつく出窓型であれば、窓下部の水切りは、比較的シンプルに金物折り曲げの金物で計画できます。

pinterest

逆に、内側へ入り込んでいる窓については、窓から外壁面までの距離全てを囲うようにして水切りを設置する必要があり、水切りに要する面積が大きくなります。

これを逆手に取ってデザインする例もあります。

一般的には、スチールやアルミ材を曲げ加工して水切りを設置しますが、石を使ってデザインに組み込んだり、鉄の無垢材をそのまま飛び出させてデザインする例があります。コストはやや高くなりますが、見た目がかなり良くなります。

pinterest

外観の美しさを保つ切り札『水切り』

部位ごとに、色んな意味合いをもつ水切りですが、最大の目的は建物内に雨水を侵入させないこと、次に外観の美しさを保つことです。

水切りを適切に選択し、そして上手くデザインすることで、建物の外観を長期に渡り美しく保つことが可能となります。

また、汚れを加えてますます建物が美しく錆びていく様子を楽しめます。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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