注文住宅を購入する際の依頼先として大きく分けて3つあります。
それは、ハウスメーカー、設計事務所、工務店となります。
それぞれの違いについて、実際にハウスメーカー、設計事務所で勤務してきた建築士の目線で解説します。
ハウスメーカー・設計事務所・工務店の違いは、注文住宅のこだわり度で選ぶ
住宅を建てる際に、どこに依頼して建てるかによって注文住宅か否かが決まります。
日本で最も認知度が高く、多くの方が購入されているハウスメーカーを基準に解説していきたいと思います。
ハウスメーカーは注文住宅ではあるけれども、完全注文住宅ではない
最もポピュラーな選択肢としてハウスメーカーがあります。
借家や建売住宅を除く日本の新築住宅購入市場では最も大きな割合を占めています。
ハウスメーカーの住宅については、昔はプレハブ住宅と言われており、字のごとくプレファブリケーションにて建物が効率よく造られることを目的として作られていましたので、自由度の低いものでした。
ただし、昨今のハウスメーカーが造る住宅は、かなり自由度もあがり建築家が造るようなクオリティに近づいています。(へたな建築家よりいいかもしれません)
ただし、やはり効率的に造られることを目的に作られていますので、標準仕様が決められています。
その標準仕様の中ではコストパフォーマンスの高い住宅が実現しますが、それをはみ出すことになれば、コストパフォーマンスは一気に下がるものとなります。
例えば、日本の大手住宅メーカーとして、積水ハウス、大和ハウス、住友林業、セキスイハイムなどがありますが、基本的には軽量鉄骨造もしくは、木造で外壁は窯業系サイディングです。
コンクリート打放しの外観やインテリアにしたいと思っても、対応は難しくなります。
あと、こまかな所では、コンセントやスイッチプレートを拘りたいと思っても、対応できない可能性があります。(メーカーによっては対応可能なところもありますので、都度相談になります)
その他、セキスイハウス、ダイワハウスも非常にデザイン性の高い住宅を販売しています。
設計事務所や工務店に依頼する完全オーダーの注文住宅
ハウスメーカーは、間取りもある程度自由に計画でき、省エネ性能も非常に高く、アフターフォローも充実していて初めて住宅を購入する方としては申し分ない選択肢ですが、もっとこだわりを持つ少数派が存在します。
そんな一から全てオーダーで建築を造るのが、建築設計事務所、若しくは設計部を有する工務店となります。
完全オーダーの注文住宅を造る建築設計事務所若しくは設計部を有する工務店ですが、ハウスメーカーと違いTV CM等の広告は行っていないことが多く、展示場もありませんのでアプローチの仕方がわからないと思われている方が多いのではないでしょうか。
インターネットで調べると数多くの設計事務所や工務店がヒットしますが、ネットの情報だけではなかなか把握することが難しく、実際に会って話をしたり、実例の見学会に参加したりと、その設計事務所のことを知るだけでもかなりの労力と時間を費やすこととなります。
ただし、それだけの労力や時間を費やし、自分に合った設計事務所が見つかれば、世界に一つしかない自分だけの完全オーダー住宅を実現することが可能となります。
設計事務所に依頼するのは、少しハードルが高い、建築費が高くなりそうなどのイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。なかには建築家きどりした設計事務所もありますが、紳士に建築に向かい合い、予算の中で世界に一つの建築を造り上げる設計事務所は各地にあります。
まずは、労力と時間をかけて自分達に一番合った設計事務所に出会うことが最も重要です。
設計事務所や工務店に依頼する注文住宅 のメリット デメリット
完全オーダーの注文住宅は、設計事務所若しくは設計部を有する工務店へ依頼することになりますが、メリットとデメリットは隣り合わせとなる事が多く、依頼する施主の考え方によって変わってくることが多いと考えられます。
コスト的メリット、デメリット
完全オーダーの注文住宅は、コスト的に高くなると思われますが、一概に言えません。
もちろん、こだわりを詰め込んだ住宅は割高になる傾向ですが、わりきった考え方をすることで、コストを抑えつつ、こだわりを持った住宅を実現することも可能です。
大手ハウスメーカーの住宅は、最近特に耐震性や省エネ性を非常に重視する傾向です。
その土地の地盤の状況や、地域の地震による被害状況は、その場その場で変わってきます。
例えば、静岡県等の比較的地震が起こりやすい地域で、公共建築物を建てる際は、通常の建物の1.5倍の強さで構造計算を行って計画致します。
また、地域によって温暖地や寒冷地があり、公共建築物では、それぞれ地域に合わせて断熱性や気密性等を慎重に計画し、過度な設計とならないよう計画しています。
公共建築物の場合、多額の税金が投入されますので、それらの性能を慎重に検討し必要な性能を確保するよう計画されます。
一方、ハウスメーカーの建物は、地域や環境にかかわらず耐震性能上、問題のない建物を建てます。
また、ハウスメーカーの建物は、断熱性や気密性が高く、エアコン一台で住宅丸ごと温めたり、冷やしたりすることが可能となっています。
それは、全国どこで建てても同じ性能の建物が出来ます。
完全オーダーの注文住宅の場合は、公共建築物同様に、それらも自由に設定できます。
お金をかける所を住まい手自身で設定できるところが、大きなメリットです。
それらの耐震性や断熱性については、建物の非常に重要な性能となりますので、難しい技術的判断が必要となります。信頼のおける設計者と出会いが必須となります。
それら技術的判断の上、自身の納得のいく範囲で耐震性や断熱性等の性能を設定し、ローコスト住宅を実現することも可能です。
コスト的デメリットとしては、一品生産品であるということです。
例えば、キッチンやお風呂等の住宅設備や、収納棚や洗面台等の既製品について、ハウスメーカーは大量に製作し、比較的安く仕入れていますが、一品生産物の建築の中にそれを入れると高くなる傾向です。
これは大量に仕入れているか、そうでないかの違いが出てきます。
時間的メリット、デメリット
建売住宅は、購入すればすぐに住むことが出来ます。
また、セミオーダーのハウスメーカーも、在来工法に比べ早く建設されます。
設計事務所に依頼する完全オーダーの注文住宅の場合は、全て自由で、設計段階も住まい手自身が納得できなければ、いくらでも時間をかけることが出来るところがメリットではあります。
逆に、考えすぎていつまで経っても決めきれない場合は、いくらでも遅くなってしまうところが時間的デメリットです。
設計事務所は時間が経費となりますので、時間がかかればかかるほど、経費もかかります。
建てる時期によって、ローン金利や補助金等の内容も変わりますので、時間を自由にコントロールできる注文住宅ですが、それらの経費も考慮し慎重に決める必要があります。
建設時も、一品生産品ですので比較的建設工期は長くなります。
アフターフォローのメリット、デメリット
住宅は建てて終わりではなく、住み続けて住まい手と一緒に育てていくものです。
その中で重要となるのが建物のアフターフォローです。
大手ハウスメーカーであれば任せっきりで問題ありませんが、注文住宅の場合は、その設計事務者の担当や工務店の担当によります。
また、大手ハスメーカーは倒産することはまず考えにくいですが、設計者事務所や工務店はいつ倒産するか分かりません。
大手ハウスメーカーの場合、初期投資が割高ですが、これらを安心して任せられるのは、大手ハウスメーカー以外は難しいと思われます。
住宅は、何十年もメンテナンスしていきながら、一生付き合っていくものです。
注文住宅の場合は、メンテナンスが必要な部分を設計者と一緒に勉強しながら進めていく過程があります。
どの部位がどの程度でメンテナンスが必要で、どのようにメンテナンスしていけば良いかを理解していけば、設計者や工務店が倒産しても、自身で対応することが可能です。
建物の設計時に、それらを勉強する時間、労力が必要となりますが、それだけ愛着がわいてきます。
設計事務所や工務店に依頼する場合、アフターフォローを楽に任せておくことが出来ないのがデメリットですが、自身で勉強し、愛着をもってメンテナンスして建物を熟成させていくことが出来るのが注文住宅のアフターフォロー面での最大のメリットともなります。
注文住宅を後悔しないために
注文住宅は、コスト、時間、アフターフォロー等について、全て自由に決められる反面、それだけ自身で勉強する必要もあります。
セミオーダー住宅や建売住宅に比べ格段に勉強する労力と時間が必要となりますが、それらを怠ると、建物が出来上がって思ってもいないものが出来たり、住んでから思ってもいないメンテナンスが必要になったりと後悔することとなります。
それら思ってもいなかったとならない様にするために、信頼のおける設計事務所に出会うこと、建物性能を十分に理解した上で計画することが重要となってきます。
後悔しないための設計事務所選び
建物は見た目の美しさも重要ですが、耐久性、耐震性、断熱性、経済性等の総合的な判断が必要となります。
最初は、自分好みのデザインができる設計事務所を探されるかと思いますが、見た目だけでなく、性能面や経済性等の総合的判断の上で、建築を提案しているかを確認しておく必要があります。
デザイン重視で進めると、あとで耐久性や経済性に難が分かれば後悔することになります。
建物が出来てから後悔することになれば取返しがつきませんので、設計段階でそれらを十分に検討する必要があります。
全てを設計者や工務店に任せるのではなく、自身も勉強して建物づくりに加わり、共に建築を作り上げることが、いい建物を実現させることに繋がります。
それが出来る設計者かどうかを見極めることが非常に重要なポイントとなります。
建物性能について
インターネットの普及により様々な情報が溢れかえっています。
建築の必要な性能は本来、その地その地で異なります。
また住まい手の考え方でも大きく変わってきます。
ネットの信憑性の低い情報に惑わされず、正しい情報を理解し、技術的に解決していく必要があります。
例えば、耐久性面では、建物の外装材や内装材は、どの程度でどのように経年変化していくかを考えます。
経年変化した場合にどのようなメンテナンスが必要となるか、若しくは、経年変化を楽しめる材であるか否か。それを理解することで、将来のメンテナンス費が大きく変わってきます。
断熱性では、その地の環境(温暖地、寒冷地、偏西風の様子など)により設定方法が変わってきます。
また、住まいになられるヒトの冷暖房の好みにより変わってきます。
例えば、エアコンが苦手なヒトとエアコンが好みのヒトでは、断熱方法や結露防止手法も変わってきます。
それら建物性能はコストに直結することです。
住まいになられる地域や、住まい手にとって、過度なスペックとなっていないかの確認が必要です。
それらの建物性能までも自由に微調整出来ることも注文住宅のメリットではありますが、勉強せずに任せっきりとなっていないかが後悔しないためのコツともなります。
総合的なコストコントロール
大手ハウスメーカーに依頼すれば、建築費からカーテンや家具、ローンや税金等、建物に住むまでの全てをコストコントロールしてくれます。
設計事務所や工務店は、中にはそのように全てコストコントロールしてくれる所もありますが、殆どは、建築費以外は、住まい手自身で手配する必要があります。
設計事務所は建築に対してのプロですが、ローンや税金のことについては素人と変わりません。
ローンや税金については、ファイナンシャルプランナーや、銀行の窓口に相談すれば教えてくれます。
また、ネットでもそれらの解説は沢山されていますので、勉強すれば素人でも十分対応可能です。
大手ハウスメーカーの任せきり対応に比べると労力はかなりかかりますが、こちらについても住まい手自身で勉強していれば、後々の変更や、何かあったときの対応も自身で対応し、その後の変更に対しても選択肢が広がることに繋がります。
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