トイレを上品に魅せるコツ

ホテルや商業施設等では、トイレも営業のツールの1つと考えられ上質でおしゃれなトイレが多くあります。

住宅についても、トイレ空間を上品にデザインしたいと考える方は多いのではないでしょうか。

トイレを上品に魅せるコツは以下の3つです。

・照明にこだわる

・内装の選び方

・五感を楽しませる

トイレは、建物全体の中では小さな空間です。

こだわった素材を使ったとしても、建物全体のボリュームからすればコスト的なインパクトは小さくコストパフォーマンスが高いといえます。

目次

照明にこだわる

トイレを上品に魅せるために、以下の3つの照明計画を検討します。

・トイレに必要とされる照度とコントラスト

・トイレ照明の色温度

・照明器具の種類と設置方法

トイレに必要とされる照度とコントラスト

トイレの必要照度についてはJIS照明基準では75ルクス以上とあります。

住宅のトイレは、一般的には1畳にも満たない小さなスペースですので、必要照度の75ルクスを確保するための照明はダウンライト1個で十分な広さです。

75ルクスは、掃除するための明るさ、子どもの便を確認するための明るさの最低限です。

この明るさを下回る場合は、掃除や子どもの便を確認するときは補助的な照明を検討することで、さらに雰囲気ある空間をつくることが可能です。

この小さな空間を75ルクスで平均的に照らそうとすると、天井にダウンライトやシーリングライトを付けることになります。

もっと面白い空間や上質な空間を目指すのであれば、部屋を均一に照らすのではなく、あえて光にコントラストを与えることです。

光のコントラストにより暗い部分ができますが、人は見えにくい暗闇を勝手にその先を想像する癖をもっています。

トイレ照明の色温度

次に色温度ですが、これは好みの問題もありますが、事務系や作業系で使われる白い色温度が高い5000ケルビンで青白いすっきりした光です。

色温度を低く抑え3000ケルビン以下の色温度は赤みがあり温かさを感じます。

色温度は、太陽の光も変化します。朝の青空の光は色温度は高くスカッと爽やかな雰囲気で、夕方になると色温度が低く温かみのある雰囲気になります。

この太陽の色温度は、人の体内時計に勝手に刻まれています

太陽の青空や夕暮れの、又は深夜の月明かりなど、時間に合わせて色温度を変化させる照明もあります。

色温度を体内時計に合わせて変化させるサーカディアン照明を選択するのも一つです。

ホテルなどの施設は、基本的には落ち着きのある雰囲気が好まれますので色温度は低く抑えられ3000ケルビン以下で計画されます。

お掃除の時や、小さい子どもの便を確認したいときは、色温度が高い5000ケルビンが明瞭に見えます。明瞭に見たい場合は、補助的な照明を使う等の工夫が必要です。

照明器具の種類と設置方法

トイレは、必要照度が75ルクス以上あれば用は足ります。

そのため、照明器具は小さいものだけでも成立します。

また、器具を隠して間接照明だけでも75ルクスは確保できます

例えば、エレメント電球1つだけをペンダントで垂らす。これだけでかなり雰囲気のある上品な空間になります。

他には、床やカウンターに置き型照明だけで天井や壁を照らすと、ヒトや器具の影が動きのあるコントラストを作ります。

壁面をこんな近くに感じる場面は、トイレ以外にありません。

この壁面を近くに感じられるトイレの狭さを活かして、照明器具に細かな模様が施されているものを選び、壁面に模様を映し出すなどの演出も効果的です。

また、間接照明だけで必要照度が確保されれば、天井や壁面に照明器具が付かない空間ができます。

トイレは、小さな空間の中で、非常に沢山のデザイン要素が存在します。

壁仕上げ、天井仕上げ、床仕上げ、便器、収納棚、紙巻き器、鏡、換気扇、照明等々です。

それらのごちゃごちゃ要素を一つなくすことが出来れば、空間への貢献度は非常に高いと言えます。

人は、壁と壁、天井と壁等の隅を認識することで、空間の広さを判断しています。

その壁ー壁、壁ー天井の境目を間接照明で曖昧にすることで、心理的に誤認識してしまい実空間以上の広がりを感じさせることができます。

内装の選び方

トイレの内装で、それぞれポイントとなる壁・天井仕上げと床仕上げに分けて考察します。

壁・天井仕上げ

トイレ面積は建築全体に占める割合が少ないため、壁天井面の仕上げ素材をやや割高な材料を選択しても、全体的なコストに与える影響が少ないことが特徴です。

経済性を優先すれば、壁天井仕上げは石膏ボードにクロスを貼るのが一般的です。

クロスはデザインも非常に種類も豊富で、抗菌性や防臭機能、汚れ防止機能等様々な機能を有してる商品もあります。

ただし、クロスは、左官調、木目調、メタル調、打放し風等があり、見た目はよく出来ていますが、トレイでは壁面が非常に近いため、それら貼りもの感はより強く感じます

できれば、トイレの小さい空間だけは本当の土を使った左官や木を使い本物の良さをより近くで感じるような設えがおすすめです。

床仕上げ

トイレの床仕上げについては、タイル、石、フローリング、コルク、塩ビシート等が考えられます。

トイレは、その他の室との連続性はそれほど重視するところではない為、比較的自由に決めることができます。

小さな子どもがいるご家庭であれば、掃除のしやすさも重要な選択要素となります。

掃除のしやすさでは、耐水性と目地の有無が重要で、継ぎ目のない塩ビシートが有力となります。

一般的にトイレの床材に塩ビシートが使われるのは、この耐水性と清掃性の理由からだと考えられます。

ただし、こどもが小さい期間は建物の寿命からすると非常に短い期間であり、それほど重視するまでもないとも考えられます。

また、清掃面に関してもトイレは非常に限られた面積のため、目地の有無についてもそれ程影響はないのが実情です。

そう考えると、フローリングやタイルなどの選択肢が増えます。

五感を楽しませる

建築的に五感に訴えかけやすい空間、それが建築を最も近く感じるトイレです。

視覚

トイレ空間は狭いがゆえに、照明や内装仕上げにより、大きく印象を変えることが可能な空間です。

内装仕上げをシンプルにし、遊び心のある照明で空間を彩る。それだけで視覚を楽しませてくれます。

聴覚

トイレは狭い空間に閉じこもる感じがあり、他の部屋と聴覚的に切り放された空間になります。

さらに、内装仕上げを吸音性のある素材を選ぶことで音のない静かな空間が造りやすい構造となっています。

音を遮断し、超プライベート空間を感じさせることができることもトイレの特徴です。

触覚

水を流す、トイレットペーパーを触るなど、トイレにはある一定の動作が必要な空間でもあります。

この動作が建築の壁面や照明との距離関係に動きを生じさせ、より建築を身近に感じさせてくれます

素材感のある内装仕上げにすることで、この動作の影が壁面に映り込み動きを感じることでより素材感を強く感じることができます。

嗅覚

トイレに、ほのかに香りがあるフレグランスをおくことで空間が一気に彩られます

または、檜などの自然の香りのする内装材を使用しても効果的です。

狭いがゆえに、効果的に感じられるものです。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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