インテリアを美しく見せるコツは天井にあり!

美しい天井デザイン

天井は普段、意識して見ることはありませんし、見られることもありません

ところが、天井のデザインがインテイリアに及ぼす影響は意外と大きいものです。

美しいと感じられる建築はすべて、天井のデザインが整っています。

建築界の巨匠(安藤忠雄、隈研吾、谷口吉生、内藤廣など)が設計する美術館や、日本トップレベルの組織設計事務所(日建設計など)が設計する商業建築や官庁施設はすべて、天井のデザインに魂をこめて設計されており数々のデザイン賞を受賞しています。

https://pin.it/VPD5Z2L

天井のデザインは、視覚的効果、建築的に必要とされる機能、材質の選定や色の選定方法、インテイリアとの組み合わせ方法により、コストパフォーマンスが最大化します。

また、それらの天井デザインを美しく見せる仕組みについて知ることで、インテリアをより美しくできるようになります。

目次

天井の見え方による視覚的効果

天井は、床や壁、家具などのインテリアの中でヒトの視線に直接入らないところです。

そのため、天井は潜在的な意識で空間を認識させる隠し味的な存在です。

実は潜在意識で天井は認識されている

ヒトは過去の経験などによって無意識のうちに蓄積された価値観や思い込みがあり、住宅の天井であれば白くてフラットなものと勝手に決めつけています。

もっと言えば、白い壁紙が貼られた天井に、既製品のシーリングライトと換気扇のガラリがついているのが当たり前であると無意識に認識しています。

それは、住宅の購入者の大部分がマンションや建売住宅を購入されている現状があります。

国土交通省の住宅市場動向調査では、

住宅購入者のうち注文住宅を購入される層は全体の約13%となっています。

しかも、この統計は注文住宅、建売住宅、中古住宅、賃貸住宅、リフォームの合計からの割合であり、分譲マンション、賃貸マンションは含まれていません。

ほとんどの住宅が、デザインされていない経済性を重視した天井になりますので、天井は白い壁紙に既製品のシーリングライトが付いていることを当たり前と認識します。

したがって、少しのデザイン・工夫でインテリア全体に大きなインパクトを与える空間とすることが可能となります。

天井は照明の見え方が魅せ方になる

天井には、既製品のシーリングライトの照明がついていることが殆どです。

https://pin.it/3VF8tzX

照明器具メーカー各社、天井のシーリングライトの商品を無数に用意しています。

大手だけでも、パナソニック、東芝、大光、遠藤照明、ヤマギワ、オーデリック、山田照明などあり、

それ以外を足し合わせると、到底選びきれない数の照明メーカーが存在し、選びきれないほどの商品が存在します

これが原因で、照明選びに力を入れてしまい、天井やインテリア全体がおろそかになってしまう

照明を見せるのではなく、光の魅せ方、光の壁や床へのあたり方を意識すれば、インテリア全体に馴染む天井デザインにつながります。

https://pin.it/hsLvLQa

そうすれば、メーカーや商品に縛られることなく、おのずと照明器具は絞られてきます。

天井と壁の境目がポイント

一般的には、天井と壁の境目は既製品の廻り縁や見切り材が取り付きます。

壁と天井が角度をつけて取り合うために、材の切り替え部分となってしまう部分です。

材が切り替わると、施工上切り口が綺麗に取り合わないために、廻り縁をつけて不揃いな切り口を隠しています

また、台風や地震により建物が揺れた時に、その材の切り替え部分が弱点となってひび割れているように見えてしまうことから、廻り縁をつけて目立たないようにすることが一般的となっています。

この廻り縁も、私たちのあたりまえの意識に刷り込まれています。

廻り縁は建築の中では小さな部材ではありますが、余分なデザイン要素を入れることになります。

インテリアは、一つ一つ意味をもったデザイン要素がバランスすることで、美しい空間が造りあがります

廻り縁を入れずとも、不揃いの切り口を隠す方法、地震時の割れを吸収する方法があります。

廻り縁を入れずに美しい天井をつくる方法

例えば、天井材と壁材を浮かして取り合う方法です。

天井材を壁から浮かして取り合うことで、天井材が壁で止まらず、水平方向に広がりのあるイメージとなります。

水平方向に広く見せたい時に非常に有効な手段です。

天井を勝たせて水平方向に広がるイメージ
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逆に壁材を勝たせて天井材を壁の手前でとめると、壁面が垂直方向に広がっていくイメージとなります。

壁を勝たせて垂直方向に広がるイメージ
https://pin.it/5uglcYy

狭い空間に、高さ方向の抜けを感じさせる有効手段です。

天井と壁を浮かしてとりあう方法は、地震や台風時の材のクリアランスが確保されるため、耐震安全性も高くなります

天井に必要とされる建築的機能

天井は、経済性や施工性の観点より、現在の白くてフラットな面に照明用ソケットが付いている状態が最も効率的とされています。

照明などの設備は必ずしも天井につける必要はない

部屋全体を明るく照らすためには、部屋の中心に大きなシーリングライトを取り付けることが最も効率的です。

ただ、部屋全体を明るくする必要性があるか否か、考える必要があります。

現在は、照度分布や均整度を容易に計算することが可能で、部屋の隅々まで必要照度を確保する設計がなされています。

その結果、やたら明るいリビングが一般的となりました。

部屋一面同じ照度を確保したフラットな空間ではなく、

適材適所に必要照度を確保し、奥行き感をつけると自然な雰囲気に近づきます。

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日本の縁側の風景は、そんな灯りのグラデーションによる趣が感じられます。

https://pin.it/3zUqb8B

照明などの人工的な設備はできる限り天井面に見えないよう工夫をすることで、

光のすべり込むグラデーションを更に美しく自然に魅せます

https://pin.it/1APjP8T

天井は、経済性と施行性の観点から設置されている

そもそもなぜ天井を張るか。

それは、経済性の施行性の観点です。

天井を張ることの経済性の観点

  1. 天井高さを抑えることの壁材料の削減
  2. 室容量を抑えることの冷暖房負荷の削減による

天井を張ることの施行性向上の観点

  1. 複雑な形状の天井懐を隠すことができる
  2. フラットな天井面を作ることで、作業性がよく工期が短縮できる

天井はない方が、実は耐震安全性は高い

天井を張る=構造部材から吊り下げている

吊り下げられた部材は、地震時に大きく揺れることになります。

1995年(平成7年)阪神大震災時、震度6以上の揺れに対して、構造部材に吊られていた天井が崩壊する事故が多く確認されています。

1996年(平成8年)に、構造体の耐震安全性だけでなく、天井材などの非構造部材の耐震安全性に対する基準が国土交通省により策定されました。

その後の東日本大地震、熊本大震災の時にも、補強が間に合わず天井崩壊の事故が起きています。

天井崩壊の事故は、大面積の天井面を構成する公共建築物が大きな被害を受けておりますが、住宅程の小規模であっても、構造的な仕組みは同じで、吊るされているものは地震時に大きく揺さぶられることは間違いありません

では、耐震上有利な構造は!?

  1. 吊り下げる距離が短い天井

天井の吊り下げる距離が短ければ短い程、水平方向への荷重が小さくなり揺れにくくなります。

結果、地震時に受ける被害も小さく抑えることに繋がります。

  1. 耐震ブレース付天井

天井を耐震補強することで、地震時の揺れに耐える構造です。

  1. 天井を張らない(構造をあらわす)

そもそも、揺さぶられる構造の天井を張らない。

天井がなければ、地震時に揺さぶられて落下してくるものはありません。

最も耐震安全性の高い天井デザインです。

https://pin.it/2qVKj0d

天井の材質選定、色選定のポイント

美しいインテリアを作り上げるには天井を美しくデザインすることが効率的です。

上で挙げたように経済性と施行性の観点から、現在日本でつくられる住宅の大部分が、石膏ボードに白いクロス貼りです

それを、石膏ボードにクロス以外の方法色彩選定方法で、インテリアに大きなインパクトを与えることが可能です。

天井材の材質選定は、インテリアの雰囲気を決定つける。

工場での大量生産と流通量の多さが圧倒的な経済性を産み、現在の日本では天井にクロスを貼ることが最も効率的とされています。

天井にクロスが貼られることを前提に設計が進められている現状がありますが、他にも少しのコストアップで効果的な雰囲気を得ることが可能です。

また、大量生産されるクロスの均整の取れた材ではなく、昔からある自然素材を使うことで味わい深い空間になります。

自然素材の木を使った天井例

自然素材の左官を使った天井例

コンクリート打放しを使った天井例

天井のコンクリート打放し型枠の木の方向性と、床のフローリングの方向性を合わせているところもポイントです。

いずれの例も、天井面に余計なものはなく素材を存分に活かした天井デザインとなっています。

天井壁紙や塗装の色選定のポイント

素材をクロス又は塗装にする場合にも、色選定で大きく空間の質は変わってきます。

広く明るく、パリッと感じさせたい場合は、白いクロスが適していますが、

マンセル値N9程度、この白さ加減が丁度いい塩梅です。

マンセル値N9は、無彩色で、真っ白でなく、ほんのちょっとだけグレー入ってる色です。

真っ白をマンセル値で表すとN10、数字が下がっていくと黒に近づきます。

N9程度の無彩色天井のイメージ

一般的に白い言われるクロスは、マンセル値Nではなく、Y(イェロー)R(レッド)がほんの少しだけ含まれたものが多く流通しています。

マンセル値にY(イェロー)R(レッド)が含まれると、暖色系の温かみのある雰囲気となります。

マンセル値にYやRを含めた暖色系としたイメージ

どちらの例も、艶を抑えてマットな質感とすることで落ち着いた雰囲気を狙っています。

色の艶は、抑えめ。艶なし〜3分艶程度がマットな質感を生む。

インテリアに合わせた天井デザインのポイント

天井だけをデザインしても、美しい空間は出来ません。

インテリアと上手く調和させること、又は対比させてメリハリを付けるなど、全体のバランスを図ることが重要です。

天井と床の材質感を合わせることで、空間に奥行き感が増す

天井と床の材質を合わせることで、水平方向の広がりを感じさせ、さらにインテリアの統制を図ることが出来ます

この場合は壁面はできる限りシンプルにする。

これだけで、上質でバランスの取れた美しいインテリアが実現します。

天井と床で、空間全体を引き締めるため、家具やファブリックの選択肢も開放されます。

家具や照明などのインテリアに素材感のある材質がある場合はシンプルに

家具や照明などのインテリアアイテムのデザイン要素が強い場合は、天井面をできる限りシンプルにすることで、空間を落ち着かせることができます。

https://pin.it/5cFs9YG

重心を低く抑え、シンプルな天井にひかりをあてることで自然とのつながりを強調する

照明を目線より低い位置にまとめ、天井は出来る限りシンプルにすることで、重心を低く抑えた落ち着いた空間となります。

天井には、低い位置からあたる光だけで浮遊感が増し、より外部の自然とのつながりを感じられます。

https://pin.it/41t7Qnq

インテリアを美しく見せるコツは天井にあり!

天井のデザインは、ヒトの潜在意識に作用するインテリアの中では隠し味的な存在です。

視覚的効果を十分に理解し、 建築的に必要とされる機能、材質の選定や色の選定方法、インテイリアとの組み合わせ方法をうまく活用することで 、コストパフォーマンスの高い美しい天井デザインが実現します。

ヒトは生まれながら自然や植物を好む性質があるといわれています。材質選定には、自然素材を採用することで、美しいだけでなく、何となく心地よいと感じられる空間となります。

是非、クロスに照明ソケットのある経済性重視の天井から解放されましょう!

美しい天井デザイン

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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