住処となる建築の外壁を選ぶ際、まずは見た目のデザインで選ぶことが多いのではないでしょうか。
外壁は建物を雨や風、紫外線などの外的要因から住人を守る大切な役割を担っています。
技術の発達により、昨今の外壁の種類は多岐にわたり無数にありますが、建築は長い時間に耐えうる必要があり、それら耐久性を証明する実証実験により確かめられたもの(=歴史あるもの)を選択することが重要です。
何百年も昔から、様々な条件下で実際に使われてきて、現在も使用され美しく風景を創り出している材があります。それは、石・土・木です。そして、石や土などの鉱物から作られるガラス・コンクリート・レンガです。
石・土・木・ガラス・コンクリート・レンガは世界共通で美しい風景を創ってきました。
美しい外壁の種類と耐久性とコストパフォーマンス
昔から使われてきた石・土・木などの材料を、現在のフィルター(ヒトとエンジニアリング)を通して美しくデザインする現在の外壁の種類と、それらの耐久性、コストパフォーマンスについて深堀りしてみます。
そもそも『美しい外壁』の定義は、ヒトによっての異なる所が大きいですが、『美しい風景』は世界共通で近しいものがあると考えています。
ここでは、美しい風景になりえる時間に耐える自然素材を使った外壁を『美しい外壁』と定義します。
美しい外壁は、美しい風景と同様に長い時間を経て、汚れや材の経年変化などを受け入れ、古びることで更に美しさが増していくものと考えられます。
美しい外壁の種類・デザイン
美しい外壁の種類としては、石・土・木・ガラス・コンクリート・レンガですが。それぞれ使い方によってデザインが異なります。
上で挙げた材の中で、最も耐久性が高いのは『石』『レンガ』です。
石やレンガは厚みを持たせ、積み上げて外壁を構成する方法が昔から採用されてきた工法です。
石積・レンガ積のデザインは、世界で美しい風景を創ってきました。
日本では、お城の石垣が美しい風景を創ってきています。
石やレンガは劣化することなく何百年と外壁として必要とされる性能を維持することが出来ます。
雨や紫外線なども全く気にすることなく外壁として使うことが出来ます。
また、汚れを付け加えて味わい深く美しさを増していく非常に魅力的な材料の一つです。
ただ、日本は世界で稀に見る地震が非常に多い国です。石積みやレンガ積みの弱点は、揺れに弱いところです。
昨今では、耐震性を考慮して石積ではなく、石やレンガを薄く加工して裏の鉄骨で地震の揺れを吸収する構造が主流となっています。そうすることで、高層建築物にも採用されることが可能となっています。
石やレンガのもう一つの弱点は、コストが最も高いことです。材料自体も高級で、高い施工技術も要するため、工事費が非常に高くなる傾向です。
次に、日本では馴染みの深い材料『土』と『木』です。
なぜ日本で馴染み深い材料なのか。それは日本の建築の作り方にあります。
日本は、四季折々環境が異なり、雨の多い特性があります。そんな中で軒の深い屋根で家を守る作り方が最も適していることを先人が創り上げてきました。それは、日本の美しい風景ともなっています。
この軒の深い屋根のつくりが、外壁材に土や木を使うことに適しています。
土や木は、石とは異なり有機性のもので、雨や紫外線により性能が変わり朽ちる可能性がある材料です。
それを軒の深い屋根があることで、雨や紫外線から材料の劣化を防ぐことが出来ます。
深い屋根がある中での土や木の耐久性は、非常に高いものになります。
実際、日本の古い木造建築が何百年も経った今も美しく現存しています。
土や木は、素材自体に色を持っており、その地の特徴もあらわれます。
また、経年変化でその時その時の表情があり、味わい深い材料で、石と同じように汚れを加えて美しさが増していく魅力的な材料です。
最近は左官職人が高齢化に伴い激減しており、土壁は少し難しくなってきていますが、石材に比べ、比較的コストも抑えることが出来るコストパフォーマンスの高い外壁です。
ガラスも実は非常に歴史のある材です。
西暦紀元前25世紀ころ(約4500年前)に造られたものが発見されております。
ガラスの中心になる成分はシリカ(石英を細かく粉砕した粉末)で、窯で高温溶融して作られます。
昔の技術では、不純物の多いシリカで作られていましたので透明ではありませんでした。
時代が変わり、技術力の向上により現在では透明なガラスを精度高くつくることが可能となりました。
今も古い建築物に残っているガラスを見ると、雰囲気があると思います。それはヒトの手で作られた不純物の入ったガラスを使っているかもしれません。
ガラスは石と同じで、雨や紫外線があたる環境でも朽ちることがない非常に耐久性の高い材料です。
また、他の材料にない特徴として光を透過させることが出来ることです。
ガラスの弱点は、モノが当たると割れる可能性があることです。
コストも土や木に比べやや高くなる傾向があります。
現在のガラスは非常に透明で精度の高いものが造られますが、反面汚れが気になる所です。
コンクリートについては、下記記事で詳しく書きました。
コンクリートは、耐久性が高く、ヒトの手で作られた雰囲気があり、非常に魅力的な材です。
コストはやや高くなりますが、構造躯体がそのままデザインとなる構造美を感じられる材です。
石・レンガは朽ちない耐久性の高い材。ただしコストが割高となる。
土・木は日本では馴染み深い材。軒の深い建築では最もコストパフォーマンスが高い。
ガラスは非常に歴史のある材。唯一光を通す素材。ただし割れる可能性がある。
コンクリートは耐久性が高く、構造美を表現できる。
石・レンガ・土・木・ガラス・コンクリートは歴史があり、その材の使い方を間違わなければ半永久に美しさが保たれる。
美しい外壁材の耐久性
耐久性を決定つける要因は2つです。
1つは、材の選定。
もう一つは、ディテール。
建築は、ヒトの寿命以上の100年以上使うことを前提として考える必要があります。
材の選定については、耐久性を証明する実証実験により確かめられたもの(=歴史のあるもの)を確かめることが重要です。
歴史ある材としては、石・土・木・ガラス・コンクリート・レンガです。
その選定した材料は、使い方(ディテール)が重要です。
石、レンガについては雨・紫外線が直接当たる環境でも耐久性を発揮しますが、土や木は深い軒に守られた建築で耐久性を発揮します。
日本は比較的雨の多い地域です。出来る限り雨水が直接かからないディテールで構成することが外壁材を長く美しく保つことに繋がります。
コストパフォーマンスの高い外壁
100年以上も美しさ保つ石・土・木・ガラス・コンクリート・レンガの外壁は、10年から20年でメンテナンスの必要な外壁に比べて、イニシャルコストは高くなりますが、100年でのランニングコストで比較するとコストパフォーマンスは圧倒的に有利になります。
石などの自然素材は、真新しさはありませんが、汚れや経年変化が美しさを増してくれる魅力的な素材です。
コストパフォーマンスだけでなく、本当の美しさによる心の豊かさも与えてくれる材です。
外壁を美しくデザインする方法
『外壁を美しくデザインする』これは建物の機能や中身を考えると自然にカタチとなって表れることが最も美しく、わざわざデザインしないことが本来ですが、あえてデザインする方法を挙げるとすると、『とにかくシンプル』にデザインすることです。=変にデザインしないことです。
とにかくシンプルにデザインすること
とにかくシンプルにすることに尽きます。
庇の水平ライン、シンプルに四角い外壁。それだけです。
窓の位置を調整したり、窓のデザインに凝ったり、変に段差をつけてデザインしたり、部分的にルーバーをつけたり、、、etc、デザインしたくなりますが、美しくするためには、とにかくデザイン要素を少なくすることで、素材自体の良さを活かした造り方がベストです。
また、それらデザイン要素が多いと、汚れの明暗がはっきり表れます。
長年の汚れが美しく見えるのは均一に汚れること、又はグラデーション的に汚れることです。
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[…] 美しい外壁の選び方。コストパフォーマンス・デザインの観点で解説。 […]