外壁で木材を使うと劣化が気になるところですが、美しく劣化をデザインしている建物も存在します。
日本の古くからある建物は屋根や軒庇を深くデザインし、直接雨がかりとならないところで木材を使用することで劣化を防いできました。
最近の建物は防水技術が向上したことにより屋根や軒庇の概念が変化し、様々なデザインが可能となりました。
案の定、10年もしないうちに外壁が汚れ、劣化し美しくない建物が量産されていますが、そんな中で、外壁に木材を使用し雨さらしのまま10年以上経過しても、美しさが増している建物も存在します。
軒のない雨さらし板張り外壁10年経過の表情
こちらは、静岡県にある駿府教会です。
竣工は2008年ですので、2022年現在で14年経過しています。
竣工当時の木の色は完全に抜け、ダークグレー色に変化しています。
汚れを加えることで更に陰影が深まるデザイン
設計者の西沢平さんは、このダークグレー色にすることを狙って木材の保護塗料も塗らない設計にしたようです。
窓もなく、中途半端な庇などもないため、外壁全面が一様に経年変化しています。
板張りは、レッドシダー厚み18㎜の割肌張りを採用されています。
割肌張りは、板の凹凸をデザインしたもので外壁に陰影を作り出します。
経年による汚れも加わり、さらに陰影が増しています。
足元の雨の跳ね返りの汚れも感じられない?
不思議なところは、外壁足元です。
腰壁が殆どなく、外壁が地面スレスレまで貼られていますが、雨の跳ね返りによる汚れや木材劣化が殆ど見られません。
これも庇がなく、全面が雨さらしになることで、足元の跳ね返り汚れが目立たないことに寄与しているかもしれません。
雨さらしの木材会館、10年以上経過した表情
この建物は、板張りではなく住宅の柱に使うような木材(ヒノキ)を外壁のアクセントとして使用しています。
主な外壁は、コンクリート打放しで杉板を型枠にし木目を転写した表情のもので、木材を十二分に感じられる建築です。
こちらも、竣工は2009年で10年以上経過しています。
木の色が抜け風格が備わるデザイン
竣工当時の木の色は抜け、こちらもシルバーグレーに変化し外壁のコンクリート打放しのグレーに近づいています。
竣工時は、コンクリートのグレーに木のアクセントが効かしたデザインですが、現在のコンクリートのグレーに近づき、建物の形状やバルコニーの奥行き感などの陰影が際立つことにより、経年と共に建物に風格が備わってきているように見えます。
経年変化による木の表情とその後
経年変化による外壁の表情は、軒のない建物では外壁の汚れや劣化による美しさを長く保てない建物が多いなか、経年変化することを設計時から狙って10年以上経過しても、汚れを加えて更に美しくなっている例もあります。
材の選定や、水切りや全体のバランスなど慎重に見極めて計画する必要がありますが、10年以上経過しても美しい木材や板張りの表情は実現可能であることが証明されました。
ただ、、建物の寿命はもっと長く、30年、60年、100年経過した時にどのように変化しているか。雨さらしの木材は果たして、それだけの寿命に耐えられるのか。
外壁としての機能が果たさなくなった場合の処置まで考えておく必要があります。
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