自然光を入れる方角と、強い光を制御するスクリーンの作り方

建物内へ太陽の自然光を入れる場合、一般的には南側が一番よいと考えられています。

果たして、「南側が一番よい」がすべての建築に当てはまるのでしょうか。

答えは、もちろんすべての建築には当てはまりません。

どのように自然の光と家族が付き合うかは住まい手や、立地条件などにより大きく変わってきます。

プライバシーや防犯面に加え、花粉やPM2.5などへの備えなど、今まで以上に窓(開口部)に要求されるグレードが高くなり、自然光の取り入れ方が変わりつつあります。

また、省エネ性能を向上させる高気密・高断熱化への風潮もあり、窓を出来る限り少なくする傾向があります。

「明るい家にしたいから南側に大きな窓を」は現在の住まいにはそぐわなくなってきています。

方角の違いによる光の取り込み方の特徴やメリット、デメリットを把握し、立地条件や住まい手に最も適した窓の取り方を導く必要があります。

目次

自然光を取り入れる方角別の特徴

南面、北面、東西面でそれぞれ自然光の入り方に特徴がありますので、それらをまずは把握します。

南側からの自然光は制御がしやすい

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南面からの自然光は季節により太陽の高さが変化し、それに合わせて室内へ入ってくる光の角度も変化します。

夏は高い位置から自然光が入ってくるため、庇などをつけておくことで容易に直射日光の侵入を防げることができます。

冬は低い位置から自然光が入ってくるため、庇などに遮られることなく、日差しを取り込むことができます。

植栽帯(落葉樹)や、庇の出寸法で制御しやすいのが特徴です。

北側から取り入れる自然光は安定している

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北側の窓からは一年中、殆ど直射日光は入ってきません。(実は真夏日の太陽高度が非常に高い時、直接入る日があります)

その分、強弱のない柔らかい自然光が、季節や天候などに大きな影響をうけず安定的に入ってきます。

特徴的なのは、直接光が室内に入ってこないため影がなく光はグラデーション状に室内に広がっていきます

東西面から取り入れる自然光は強すぎる

東西面から入ってくる太陽の光については、角度が低い非常に強い光が入ってきます。

朝夕の光は特に強く、急激な温度差でガラスが熱割れする場合もあります。

オフィスやビル建築では昨今、東西から入ってくる光に対してルーバーを設置しているのは、それらの角度の低い太陽光を制御するためでもあります。ルーバーの角度、奥行き、密度はすべて夏場の東西面から入ってくる太陽高度を計算して導いてきているものが多くあります。

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北側に窓を取る場合のメリット・デメリット

北側の窓は、寒くて暗いイメージがありますが、それはマンションの間取りが画一化したことにあります。

日当たりが悪く、共用廊下側の北側の小部屋が納戸のような使われ方をすることで、常に寒くて暗いイメージにつながったと考えられます。

北側の窓には、メリットも沢山あり、使われ方、建築の作り方を変えることで、大きくイメージを変えることが出来ます。

北側の窓のメリット1、安定した光を取り込むことが出来る

北側以外の南、西、東の窓は季節・時間によりますが、必ず直接太陽光が入る時間があります。

太陽の光は直接入ると眩しさを感じるため、庇やカーテンなどのスクリーンによって直接光を制御することになります。

一方、北側の窓については、直接光の入る時間帯が年間通じて殆どありません。

太陽光は直接入らなくとも、必ずいろんなものに反射・拡散して室内に入ってきます。

空気中の水蒸気やちりにも反射、拡散された光は方角関係なく室内に入ってきます。

この反射、拡散された光は全天空照度とあらわされていますが、照度は曇りでも2,000ルクス、快晴では50,000ルクスあります。

一般的なリビングで確保されている照明の照度は100ルクスから500ルクス程度です。商業施設の陳列棚の非常に明るい場所でも1,000ルクス程度ですので、全天空照度がいかに明るいかがわかるかと思います。

その2,000ルクス以上の全天空照度の光が一年中、安定的に入ってきますので北側窓でも十分明るい部屋にすることが可能です。

直接の太陽光は紫外線が強すぎる為、ヒトへの眩しさだけでなく内装建材の劣化に繋がりますので、一旦どこかに反射させた間接光を入れるか、障子やカーテンなどで光を和らげてから入れることになります。

北側の窓は、直接光をそのような間接的な制御をする必要はないため、効率的に全天空照度を室内に取り入れることが可能です。

北側の窓のメリット2、光の当たる方向から景色を見ることが出来る

窓の大事な機能の一つに「景色を眺める」があります。

室内から見る景色は、光の当たり方によって見え方は大きく変わってきます。

例えば、花木などの植栽や庭園を窓から見る景色は南側と北側では大きく異なります。

南側の窓からみる花木は、影の方を見ることになる為、少し暗く見えます。

南側から見た植栽帯

一方、北側の窓から見る花木は、光の当たる方を見ることになる為、美しく見えます。

上の写真と同じ植栽と同じ時間に北側からと南側からで撮影してます。

北側から見た植栽帯

このことは、日本の寺社にある歴史ある庭園が物語っています。

日本庭園の殆どが北側配置で、北側の縁側から庭園を眺めるようになっています。

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北側窓のデメリット

北側窓のデメリットは、直接光が室内に入ってこないことで、冬場の室内の温度が他の部屋に比べて低くなることが考えられます。

ただし、それは昔の断熱性の低い住宅でのはなしで、昨今の断熱性を十分確保した住宅では、家中一定の温度を保つ住宅が増えてきていますので、それほど大きなデメリットにはなりません。

東西面の窓との上手な付き合い方

東西面の光は朝夕に強いことが特徴ですが、その特徴的な朝焼けや夕焼けは幻想的なオレンジ色の光を感じられる方角になります。

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朝夕の幻想的な光は、スクリーンで制御する

朝夕の幻想的なオレンジ色の光を感じられるのは非常に魅力的ではありますが、全て取り入れると夏場は生活に支障が出る程熱くなりますので、何らかの対処をする必要があります。

少しでも東西面から角度を振った平面の場合は、ルーバーにより角度を調整して強い光を緩和させることで幻想的な光を感じられ、強い光を遮ることが可能となります。

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生活に合わせた朝日、夕日の建築的な取り込み方

北側採光のようなやさしいグラデーション的な光とは対照的に東西面の光については、非常に強い陰影を作り出します。

意図的に光と影を操ることで、シンプルな壁面に強烈な影を落とし込みアーティスティックな表情を作り出すことが出来ます。

ポイントは、強い東西の光がヒトに直接当たらない位置で開口をとることです。

例えば、高窓に横スリットの窓を設けると、ヒトの高さより高い位置で、強いアーティスティックな光が壁面にあたります。

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また、ヒトの寄り付かない位置に光が落ちるよう方角を調整したトップライトを設けると更に劇的な空間が生まれます。

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南面の窓からの光を最大化させる方法

南側から入ってくる光は比較的太陽高度が高いのが特徴です。

この高さをうまく活用した光の入れ方がポイントです。

太陽高度に合わせたスクリーン(庇や植栽帯)で光を制御する

夏場の暑い時期は、直接光が室内に入り込まないようにするには庇を設けることが最も有効な手段です。

日本の建築は昔から庇を設ける文化があります。

古来から日本の建築は木造であり、外壁や構造体を雨から守るためでもありましたが、夏場の暑い時期もエアコンなしで涼しく過ごす術の一つとして庇の効果があります。

また、落葉樹を南面に植えることで、夏場の暑い日差しを緩和し、木漏れ日のような緑で緩和された光がやさしく室内へ入ってきます。

冬場になると、落葉樹の葉っぱがすべて落ち、温かい太陽の光を直接室内に取り込むことが出来ます。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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