在宅勤務やテレワークなどが浸透したことや、田舎での自然の恵みに魅力を感じ、若くして地方移住を考えている人が増えています。
地方移住を考えるきっかけ
・在宅勤務やテレワークによる働き方の変化
・自然の豊かさに魅力を感じる
・ネットで娯楽や買い物が完結できるため都会にいる必要性が薄まりつつある
田舎への移住は豊かな自然が魅力的ではありますが、実際に実現しているのは少数派で、普段都市部で住んでいると想像できないことも多く、地方移住を足踏みしている方は多いのではないでしょうか。
大阪から東京、そして田舎の和歌山へ移住を決意し、実際に7年間住んで思うことは、不便さはあるけれど、やはり自然の恵みを改めて感じられたことです。
元々、田舎で暮らしていたので分かっていたつもりもありましたが、大阪と東京での暮らしを経て、年を重ねてから田舎で暮らすと色んな発見がありましたので共有したいと思います。
地方移住した理由と経緯
地方移住を決意した一番の理由は、ふるさとの土地に自分の設計した住処を建て、その自邸をきっかけに独立を考えていたことです。
親が残してくれた土地があり、建築費が抑えられることも大きな理由の1つでありました。
ふるさとの田舎に戻る経緯
大学卒業後ハウスメーカーへ就職20代後半まで和歌山に暮らす
独立を考え大阪の設計事務所へ転職し大阪市内へ移住、組織設計事務所で約5年大阪市内のマンションで暮らす
東京への転勤、組織設計事務所で約4年東京都内のマンションで暮らす
大学の頃からインテリアが好きで、いつかは自分で設計した家に住みたいという思いが強く、東京にいるころから自邸の設計を進める
子どもが小学生に入るタイミングで大阪への転勤の話があり、このタイミングで夢の自邸を建てようと考え、ふるさとに戻ると決意
東京勤務時代、横浜や埼玉から2時間近くかけて通勤している同僚を見たことも、都会から離れる抵抗感がなくなったきっかけにもなりました。
自然豊かな場所で自由に建築したい
自邸の設計は、都市部での生活に慣れたこともあり、大阪市内など色んな土地でも計画を考えました。
利便性や将来の収益性などを考えると、大阪市内などの利便性の高い土地を購入して建てる考えもあります。
ただし、利便性の高い土地で建物を建てようとすると、狭い敷地だけでも数千万円必要となり、初期投資となる土地代を含めた建設費総額はかなりの金額に膨れ上がります。
大阪市内や東京都内で建設する場合のコスト増要素
土地代が高い
物価や人件費が高い
敷地が狭いために、容積を稼ぐための特殊工法費が必要
敷地内だけで工事ができないこともあり、工事のための借地が必要な場合がある
そこまでの費用を掛けて利便性や収益性を優先するのではなく、自然が豊かな地で自分の好きな建築で暮らす方がずっと豊かに思えたことが、地方移住すると決意できた1つでもあります。
田舎で家を建てるメリット
田舎で建築することのメリットは以下の3点です。
敷地が広く間取りやデザインに制限を受けない
土地代が安く建設費の総額を抑えられる
地方移住の条件を満たせば補助金や住宅ローンの金利優遇を受けることが可能
敷地が広く間取りやデザインに制限を受けない
当然のことですが、敷地形状や広さに建物の間取りは制約をうけます。
地方の土地は、分譲地でも広く開発されていることが多く、一般的なファミリー層の間取りであれば、ある程度まとまった庭付きの住宅を建設できます。
敷地が広いため、平屋の選択肢もでてきます。デザインの制約を受けないことが大きなメリットです。
土地代が安いため建設費の総額を抑えられる
敷地が広ければ土地代は高くなりますが、現在の地方の単価はかなり安くなっています。
東京都内、大阪市内であれば、1坪あたり数百万円の相場ですが、地方にいくと数万円の相場で二桁違うため、いくら敷地を広く購入しても地方の方が桁違いに安く購入することができます。
また、地方では空き家となっている土地が沢山あります。新しい分譲地を購入するより更に費用を抑えることも可能です。
地方移住の条件を満たせば補助金や住宅ローンの金利優遇を受けることが可能
各自治体によって、条件がありますが、都市部で暮らしていて地方に行く場合はかなりの確率で補助の対象となります。ちなみに和歌山県の場合は、「所属先企業等からの命令ではなく、自己の意思により移住しテレワーク勤務を行う場合」も該当し、大阪市内で勤めながら、テレワークすることにすれば、補助の対象となります。
また、地方移住により住宅を購入する場合は、条件に適合すればフラット35の地域連携型の年0.25%金利値下げ優遇を受けることが可能です。
地方移住の魅力や特徴
地方移住の一番の魅力は、自然環境に恵まれていることです。
都市部でも広い公園など自然の環境はありますが、地方は本当に自然が豊かで、空の広さ、季節の空気感がまったく異なります。
その他、地方ならではの特徴や建築的な事情もあります。
自然の恵みを五感で堪能できる
自然豊かな地方では、季節で異なる緑の深さの違いや豊かな色彩、季節ごとに感じられる土や植栽の触感や香りを感じることができます。また、雨や雪などの自然の音を感じられるのも地方ならではの静けさによるものです。
地方には、高い建物は殆どないため空がかなり広く感じます。夜もビルの煌々とした光はなく、星空が美しく月明かりがこんなにも明るかったんだと改めて実感します。
また、地方ならではの食文化があります。和歌山であれば、みかん、柿、桃、びわなどのフルーツや、めはり寿司、柿の葉寿司などの郷土料理が、地元スーパーで安く入手することができます。
地方ならでは特徴
地方ならではの特徴は、人によって感じ方が違うかもしれません。
田舎に暮らすメリットとしては
地方は自然が豊かで空気が綺麗で静かなので、ストレスが少なく健康的に暮らせる。
地方は人口が少なくコミュニティが狭いので、近所付き合いや助け合いの精神が強く、温かみのある人間関係を築ける。
地方は物価や家賃が安く生活費を節約できる。
地方は伝統や習慣を大切にする人が多く、文化的な魅力を感じられる。
デメリットでは
地方は交通や商業施設が不便で、買い物や娯楽に困ることがある。
地方は仕事や教育の機会が少なく、キャリアアップやスキルアップに制限がある。
田舎は近所づきあいや世間体を気にする人が多く、プライバシーを守りにくいことがある。
地方は以上のようにメリットとデメリット両方あります。自分のライフスタイルや価値観に合わせて選択することが大切です。
地方で建築する場合の特徴
地方で建築する場合の特徴としては、土地の広さによる建築的な制限がないことがあげられますが、一部の地方では、地場で活躍している伝統的な工法を扱う職人がまだまだ現役でいることです。
これは都市部でこのような職人を使用すると、かなり高価な金額となりますが、地場の場合は一般的な価格で、そのような職人を使った建築をすることが可能となります。
例えば、和歌山では木材を扱う大工や、建具の職人が地元で活躍されています。都市部での需要も多く地元でないところにわざわざ行くこともありますが、これら技術をもった職人をつかった丁寧な建築を建てられることも大きな特徴ではあります。
これは、職人だけでなく建築材料も同じことがいえます。
地方ならではの建築材料は、都市部にいくとプレミアム価格がつく場合があります。
これら地方の特徴をうまく利用することで、コストパフォーマンスの高い建築が可能となります。
地方移住した後の暮らし、注意点や楽しむコツ
実際地方移住した後の暮らしは、7年の間で徐々に変わりつつあります。
特に大きく変わったのは、移動手段です。
・車オンリー
・歩き
・自転車
・公共交通機関
・車
・公共交通機関
・歩き
・タクシー
元々和歌山で暮らしていた時代は、公共交通機関を利用することは殆どなく、どんなに近い用事であっても車で移動することが当たり前のように思っていました。
それが、都市部で暮らすことになり車での移動の必要性がなくなり、歩いて移動することの抵抗感がなくなりました。
地方移住したての頃は、田舎では車移動が当たり前という考えがあり、車を購入して移動手段として利用していましたが、ふと都市部での暮らしを思い出し、近くのスーパーや通勤に利用する駅まで歩いて移動してみると自然をより感じられる豊かさに気付き、いまでは車での移動は殆どなくなりました。
地方暮らしで注意すべきこと
地方移住して感じた注意すべき点は以下の5点です。
・移動手段を調べておくこと
・地方は老人が多いのでいろいろ頼りにされる
・虫や動物に対する抵抗感が必要
・商業施設や娯楽施設が近くにない
移動手段を調べておくこと
移動手段については、基本車が必須となるところが多いですが、娯楽や商業施設以外の日常的に利用する駅、スーパーが歩いていける距離にあれば、車は都度レンタルすることや、タクシーを利用することで以外と地方でも車無し生活が可能です。
地方は老人が多い
地方は老人が多いため、若い人が入居してくるといろいろ頼りにされます。
自治体の班長や、地域のボランティアなどのお誘いがありますが、これも興味のある場合は参加すればよいですが、割り切ってある程度距離をとることも可能です。
ただし、すべて断るのではなく、順番で手伝うなど上手く付き合う必要はあります。
虫や動物に対する抵抗感が必要
自然が豊かであれば、虫や動物も近くにいることになります。
洗濯物に虫がついていたり、お風呂場に大きな蜘蛛がいたり、寝室にムカデがでたり、イノシシやアライグマなどの動物とばったり遭遇したりと、日常的に虫や動物に遭遇する場面があります。
虫や動物に対する抵抗感を付けておく必要があります。
商業施設や娯楽施設が近くにない
当然、商業施設や娯楽施設は近くにないので車で時間を掛けて行く必要がありますが、買い物や娯楽はネットで済ませることも現在ではかなりリアルになってきたのではないでしょうか。
地方暮らしを楽しむコツ
地方での暮らしは、都市部にくらべると利便性には絶対的に不便になりますが、地方を楽しむコツは以下の3つだと思います。
便利に暮らさない
家族と楽しむ
田舎だからといって地域住民と密に付き合う必要はない
買い物や娯楽などの利便性を追求するのではなく、あえて不便を楽しむことです。
庭が広いために雑草を刈らなけばなりませんが、土を触ることで人は心が穏やかになるといわれています。また、雑草を無心にむしる時は、瞑想している時に近く感じます。
地方は商業施設や娯楽施設が充実していない所が多く、娯楽を楽しむ場所が限られていますが、人が作り出す娯楽を楽しむのではなく、家で家族と楽しむことの方がコストパフォーマンスは非常に高いものとなります。
田舎での不安ごとに地域住民との付き合いについての話題がよくありますが、これは昔のことであって、割り切ってある程度距離を取って付き合うことができると感じています。
地方移住して7年間住んだ感想
地方移住は、自分の考え方やライフスタイル次第で大きく賛否がわかれるところだと感じています。
私の場合は、地元で設計事務所を開業するために地方移住してきましたが、未だに組織設計事務所に勤務しています。
地方移住して通勤しながらも田舎の自然を満喫できると実感できた理由3つ
2時間の通勤が意外と使える
働き方が変化しつつある
ネットで殆どのことが完結できる
組織設計事務所での仕事が面白く、居心地もいいし、働き方も自由に選択できるようになったこともあり独立できずに居ます。ただ、2時間もかかる通勤はかなり効率悪いと考えていましたが、意外と使えることが分かりました。
今では2時間の通勤時間を読書の時間にあてたり、仕事をしたり、SNSをしたり、考え事をしたり、調べごとをしたりと、この2時間が一日のなかで重要な時間になっています。
移動中の時間は、創造性が高まるともいわれています。実際、この通勤時間2時間の中で、ブログを始めることができたし、ライターとしての副業の時間にも充てられています。
考え方やライフスタイル次第で、田舎の自然を満喫する生活は都心部の通勤もしながら実践可能だと感じています。
地方移住して本当によかったと思えることは、空の広さや四季の美しさ、植栽や土の香りなど自然の豊かさに気付いたことです。そんな自然に寄り添う建築をつくり、毎朝季節ごとの緑の光のシャワーを浴びて起きる生活もいいものだと感じています。
自然を大切にした家づくり、お手伝いさせていただいています。
普段は組織設計事務所で大規模な公共建築物の設計をしていますので、安全安心な建物造りはもちろんのこと、地域に根ざした自然を大切にした建築を考えています。
間取りやデザインのご相談だけでもOKです、ご興味のある方は是非お声がけください。
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