舗装のデザインを決定づける4つのポイント

舗装は、使う場所と必要とされる機能性により様々な材質や傾斜角度でデザインされています。

舗装のデザインを決定づける4つのポイントは以下です。

1、必要とされる機能を満足させる材質選定

2、雨水の導き方

3、歩行感に影響を与える硬さ加減

4、人の心理や安全性に影響を与える傾き加減

目次

必要とされる機能を満足させる材質選定

舗装には、歩きやすさを向上させるだけでなく、防滑性や排水性など様々な機能性を付加するために、さまざまな材質が適材適所に選定されています。

舗装に必要とされる機能

舗装に必要とされる機能は、歩行者や車両の安全性確保です。

舗装は、もともと雨天でも通行の支障にならないよう床面を補強する目的で作られたものです。

土のままでは晴天時に砂埃が巻き上げられることや、雨天時に泥化することで通行の妨げになるのを防止する機能が必要とされています。

歩行だけでなく、自転車や自動車などが高性能化することで、舗装に対する必要性能も、平坦さだけでなく、素早く排水される構造や、摩擦抵抗などの滑りにくさなどの機能性が必要とされてきました。

舗装の最近の付加機能

最近では、舗装に付加される機能として、以下のようなものがあります。

・車両走行時の低騒音型舗装

・安全性を考慮した滑り抵抗値の基準を満たしたタイル舗装

・視覚障害者でも容易に判断できるユニバーサルデザインに配慮した舗装

・都市部のヒートアイランド現象を抑制する保水性舗装

安全性がより向上し、環境に配慮した舗装材によって、昨今の街がデザインされています。

一方で、昔からある石畳の風景は趣のある風情が感じられ今でも大切に保存されている街もあります。

必要とされる機能を満足させる材質選定

舗装の必要とされる機能と、それを満足させる材質選定については、以下のように整理できます。

各種舗装比較表

道路にアスファルトが使われ、コンクリートが使われていないのは広い面積を施工する施工性とコストの観点から導かれることが分かります。
ただし、トンネルなどのメンテナンスが難しい箇所については、耐久性を考慮したコンクリートが採用されていると考えられます。

車両の通行があまりない場所では、耐久性や景観への配慮として意匠性を考慮したものがコスト見合いで採用されます。

雨水の導き方

雨天時、足元が水たまりとならないよう雨水をすばやく排水する必要があります。

どのようにして雨水を狙ったところへ排水するか。

この雨水の導き方が舗装のデザインを決定づける要因になります。

舗装表面の雨水の導き方

舗装の種類によって、雨水の導きかたも異なってきますが、駐車場や道路に使われるには、アスファルトが多く採用されます。

アスファルトは、舗装表面に傾きをつけ側溝等へ雨水を導くよう設計されます。

雨水が浸透するアスファルトもありますが、どちらにしても表面に一定の勾配が設けられています。

道路は一般的には、中央が高く両サイドが低く設定されています。

見た目はフラットですが、標準的には1.5%の勾配で傾いています。

この傾きにより、水たまりとなることを防ぎ安全性が確保されています。

駐車場も同様に、1.5%程度の勾配によりデザインされています。

戸建て住宅程度の小規模な場合は、大きな落差とはなりませんが広大な敷地に駐車場となると、排水勾配だけでかなりの落差が発生し敷地周囲に大きな擁壁が必要となる場合もあります。

側溝をつかった雨水の導き方

一般的には舗装表面を集水したあと、側溝によって一旦表面の雨水を受け持ち、表面から水たまりができない構造としています。

広い敷地であれば、舗装表面で集水される雨量も多くなるため、一定間隔で側溝が設けられています。

ただ、デザインされた舗装面に側溝がみえてくるのはあまり美しいものではありません。

よく見える場所に側溝が必要となる場合は、出来る限り、端に寄せる、側溝蓋を舗装面に合わせるなどの景観性への配慮も必要です。

側溝を使わない工夫

側溝の蓋はコンクリート製や鉄製のグレーチング等が一般的で、意匠上あまり美しいものではありません。

側溝を使わない方法や、できる限り少なくする方法は以下の3点があります。

・浸透する材を使用する
・植栽帯を利用する
・表面排水だけで完結させる

浸透する材を使用する

表面の舗装材を雨水を浸透させる材に変えることで、表面の雨水量を減らし側溝を少なくすることが可能です。

具体的には、浸透性アスファルト舗装や、浸透性インターロッキングブロック、浸透性コンクリート平板舗装等があります。

それらは、雨水を浸透させますので、表面に雨水が溜まりにくい構造となっております。

これら浸透性の舗装は、浸透する分勾配は緩く設定できるため側溝を少なくすることに繋がります。

植栽帯を利用する

表面勾配により集水した雨水を、側溝ではなく植栽帯へ排水する方法があります。

植栽帯の範囲、浸透するか否かの土質の検討も必要ですが、上手く植栽帯が計画できれば側溝をなくした外構デザインが実現可能です。

表面排水だけで完結させる
 

側溝をなくす手法として、表面排水だけで完結させることも可能です。

水たまりができないように、かなり高度な計算が必要ですが、舗装表面で集水された雨水が人の寄り付かない場所へ流し、床立ち上がり角度や、排水スピードを調整することで側溝ななしのデザインが可能です。

具体的にこの排水デザインを実現しているのは、ディズニーランドでみることが出来ます。

歩行感に影響を与える硬さ加減

床面はどっしりと安定感があるほうが、人は違和感なく歩行できます。

舗装がなく、泥でぬかるんでいたり、落ち葉の上を歩くようなふわふわした床面では人は安定しません。

人は床の硬さに意外と敏感な生き物で、少しの硬さの違いでも違和感を感じたりします。

人は硬い床の方が安定して感じられる

コンクリートとアスファルトも硬さは微妙にことなりますが、この微妙な硬さも人は認識しています。

この硬さ加減は、硬ければ硬いほどスポーツをするときの体への負担は重くなりますが、通常の歩行では、硬い方が安定感を得られます。

舗装材は、アスファルトやコンクリート、インターロッキング、タイル、石等様々ありますが、石が最も硬度が高く、人は安定して感じられるようです。

石の硬さが人へ与える安定感

石舗装は、硬さだけでなく昔から石畳の舗装で生活してきた文化もあり、安心感や懐かしさも合わさった心理的なところもあるようです。

石畳は日本だけでなく、ヨーロッパでも昔から使われており、人にとって安定感だけでなく、最も馴染みのある舗装材であるといえます。

石畳は、四角いサイコロ状のものを敷きならべる方法や、薄くスライスした石を敷きならべる方法や、丸みを帯びた石を並べる方法等、様々です。

石畳はどれも歴史性が感じられ、歩いていると程よい緊張感と風情を感じられます。

人の心理や安全性に影響を与える傾き加減

外構舗装は、雨水排水のための勾配だけではなく、敷地内の高低差解消や、バリアフリーのスロープ等、なんらかの理由で、床面が傾いている場合があります。

床が傾くと人は、違和感を感じるネガティブな感情もありますが、床材のデザインと合わせることで開放的なポジティブな心理作用を与えることも可能です。

バリアフリーがもたらす傾斜角度

雨水排水での標準勾配は1.5%前後ですが、バリアフリーでのスロープの勾配は1/12より緩くとされています。

バリアフリーの1/12(約8%)は車いすの方でも走行可能な勾配とされています。

雨水排水勾配1.5%前後に比べて、1/12(約8%)は非常に傾きがきつく、明らかに床が傾いているのが判断できるレベルです。

人の心理に影響を与える傾斜

駐車場や歩道等では、違和感なく駐車や歩行できるよう1.5%前後で設計しますが、公園や広場等の公共の憩いの場所ではあえて起伏をつけデザインする場面があります。

その場合は、床面への舗装材も工夫が必要となってきます。

曲面への施工性や、起伏があることでの安全面を考慮すると、石のような硬い材よりは、もっと柔らかい材の土を固めて作る舗装や、芝生張りが合っています。

また、舗装材を比較的柔らかいもので起伏があると、石畳みでの歴史性や重厚感とは対照的に、遊び心が生まれ人は開放的になるといわれています。

まとめ

舗装のデザインは、材質や傾斜などの作用により、人の心理的な感覚に影響を与えることになります。

ほかにも温度・湿度の操作や、音に対する操作などの触覚、聴覚等に対して操作することも可能なところです。

何気なく感じられている舗装材ですが、実は奥が深く人の感覚的なところを操作するもので、建築設計の中でも非常に重要なところでもあります。

建築の外観やインテリアは視覚的にわかりやすいところですが、舗装のデザインはあまり気になって見ていないところです。

五感で知らず知らずのうちに感じられて操作されているところでもあり、建物へのアプローチで建築が美しいと感じているのは、実はそのアプローチの舗装からそれらを感じられるように操作されているのかもしれません。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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