建設コストダウン策の一つとして、施主手配(施主支給)という手段があります。
照明やカーテンは、施主手配モノの代表的なものでネットで買って自分で設置すれば、かなりコストは圧縮されます。
他にどんなモノが施主手配可能か、どの程度コストダウン可能か、施主手配するときの注意点などについて、建築士の目線で解説します。
施主手配(施主支給)とは
住宅を新築、リノベーション、リフォームする場合、一般的にはハウスメーカーや工務店等の住宅会社へ依頼し、建築に関する殆どのことを、その住宅会社へお任せすることになります。
その中で、自分達で手配出来る分(例えば、照明やカーテン等)については、住宅会社を通さずにインターネット等で直接購入し、設置も自分ですることで、住宅会社の経費が係らない分、大きな建設コストダウンに繋がることがあります。
施主手配、施主支給とは、そのような照明やカーテン等を自分達で材料を手配(購入)し、設置まで完成させることを示します。
または、商品の手配だけを自分達で行い、住宅会社に設置だけお願いすることを示します。
施主手配(施主手配)出来るモノ、それぞれのメリットデメリット
それでは、どんなモノが施主手配可能か。
それは、建築に関する殆どのものが可能です。
例えば、柱1本から可能です。
「昔からある母屋の大黒柱は、次の住宅にも使用したい」と要望があれば、柱1本だけ施主手配も可能です。
どんなモノでも施主手配することは可能ですが、モノによってメリット・デメリットがあります。
一般的に施主手配されているモノとしては、インテリア、住設備、給排水工事、電気工事、エクステリアなどがあります。
インテリアのメリット・デメリット
インテリアの中で、施主手配する代表的なものは、照明、カーテン、家具です。
メリット
メリットとしては、施主手配導入のハードルが低いことです。
住宅会社へ、「照明とカーテンと家具は自分で準備・設置します。」と一言伝えるだけで、あとは、自分でインターネットで商品を購入し設置するだけです。
また、照明、カーテン、家具についてはインターネットでかなり安く購入することが可能で、住宅会社へお任せすることに比べ大きくコストダウンさせることが可能です。
デメリット
商品を選ぶ労力、設置する手間が必要なことです。
インテリアコーディネートは自分達で考えなければなりません。
インテリアのコーディネートについては、下記も参考にしてください。
注意点
どこまで、施主手配かの確認を住宅会社と認識を合わせておく必要があります。
例えば、下記のイメージです。
・カーテンの場合、カーテンレールは住宅会社で設置し、カーテンは自分達で設置する。
・照明の場合、照明のソケットまでは住宅会社で設置、照明器具は自分達で設置する。
・大型の組み立て家具の場合、購入の搬入までは施主で手配し、組み立て・設置は住宅会社とする。
住設備の施主手配のメリット、デメリット
住設備とは、キッチン・バス・トイレ・洗面の機器を示します。
メリット
何十万円~数百万円もの大幅なコストダウンとなる場合があります。
選択肢が大幅に広がります。
住宅会社によっては提携しているメーカー等の繋がりがあり、一部のメーカーは取り扱えないことや、取り扱いがないのでコストアップに繋がることがあります。
施主手配とすることで、その縛りを外し、自由に選べることが可能となります。
デメリット
住宅会社と綿密な調整と、責任範囲の取り決めを行う必要があります。
例えば、キッチン本体、IHヒーター、シンク、水栓、レンジフードの本体は施主手配、機器の取付、配管のつなぎ込みは住宅会社とした場合、
IHヒーター等の機器の保証は施主の購入した会社とし、漏電や漏水等が発生した場合の保証は、どちらが責任を負うのかの取り決めを行う必要があります。
あとは、インテリアと同様に商品手配の労力とコーディネートが必要です。
注意点
住設備は、本体の金額が大きいため、大きなコストダウンに繋がり易いところではありますが、保証の範囲が不明確になることが多く、万が一トラブルが発生した場合、住宅会社が保証してくれないことが殆どです。
給排水工事施主手配のメリット、デメリット
給排水工事とは、水道を引き込み住宅内の水栓へ配管する工事と、トイレやキッチン等からの排水を、公共の下水管まで配管する工事を示します。
住宅会社とは別に、この給排水工事だけを別会社へ依頼することが可能です。
あまり知られていないかもしれませんが、給排水工事を専門を行う会社は、それぞれ市町村ごとに指定された専門業者が複数社あり、住宅会社も給排水工事を行う業者は、物件ごとに選んでいることが少なくありません。
その手配を自分達で行うことで、住宅会社にかかる経費を抑えることに繋がります。
また、給排水工事業者を数社から見積りを提出してもらい、コスト比較することも可能です。
メリット
数十万円~百万円程度の大幅なコストダウンとなる場合があります。
給排水業者は地元の小さな会社が多く、地元重視でお客様への面倒見がよく、何か合った時にすぐに駆けつけてくれるイメージです。(これは個人的な意見かもしれません)
デメリット、注意点
住設備と同様に、責任範囲の取り決めを行う必要があります。
例えば、お風呂のバスタブまでは住宅会社が請け負い、バスタブへの給水・排水の繋ぎ込みは施主手配の給排水業者とした場合、そこで漏水した場合は、どちらが責任を負うのか。
電気設備工事の施主手配のメリット、デメリット
電気設備工事とは、照明やテレビ等へ電気やLAN等の配線・配管を行う工事です。
こちらも給排水工事と同様に、地元に根ざした専門業者が存在し、住宅会社とは別に依頼することが可能です。
メリット
上で挙げた給排水工事と同様に大幅なコストダウンが可能です。
デメリット・注意点
上で挙げた給排水工事と同様に、責任範囲の取り決めを行う必要があります。
例えば、エアコンは家電量販店で購入し、電気設備工事は専門業者へ施主手配し、
エアコンに漏電エラーが発生した場合の責任は誰が負うのかを取り決めておく必要があります。
エクステリアの施主手配のメリット・デメリット
エクステリアとは、お庭の植栽やカーポート、床面の舗装工事を示します。
エクステリアについても、専門業者が存在し、住宅会社とは別に施主が別で手配することも可能です。
極端な例は、施主がDIYする場合もあります。
メリット
ホームセンターで材料を買ってきて、自分でDIYすることも可能で大きなコストダウンが可能です。
デメリット・注意点
カーポート等の大型のものは、建築基準法を考える必要があります。
施主手配し、違法建築となる場合がありますので注意が必要です。
また、インテリアと同様に、無数の商品から自分達で商品を選び、コーディネートしなければなりませんので、時間と労力が必要となります。
まとめ
施主手配は、モノによってコストダウンの有効さが異なってきます。
万が一トラブルが発生した場合の対応が容易か否かで、後々の時間・労力・コストが大幅に変わってきますので、それらを加味した上で施主手配によるコストダウンが有効か否かを判断することが重要です。
照明やカーテン等のインテリアを施主手配する場合は、建築本体工事との取り合いが分かりやすく、責任範囲も明確であり、トラブルになることは少ないと考えられますので、非常に有効な手段です。
住設備(キッチン、トイレ、バス、洗面等)については、責任範囲を明確にすることが難しい所については、万が一トラブルが発生した場合の対応が非常に煩雑になります。
給排水工事や電気設備工事については、地元向きに仕事を構えている会社が多く、面倒見がいいので、万が一のトラブル時は、大きな住宅会社より迅速に駆けつけてくれることがあります。これは、給排水工事や電気設備の業者選定時によく吟味しなければならない項目の一つでもあります。
それらを踏まえた上で、商品を自分で見つけ出し、その住宅との相性を見極め、コーディネートする時間と労力を確保出来れば、施主手配は非常に有効なものとなります。
施主手配する場合のありがちなトラブルについて分かりやすくまとめた記事がありましたので参考に紹介いたします。
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