古くなった住宅の建て替え、リフォーム若しくはリノベーション、費用面と今後もまだまだ長く住めるのか、非常に悩ましいところで決めかねている場合が多く見受けられます。
一軒家の建て替え、リフォーム、リノベーションについては、既存にある建物の状態、築年数、リフォームする規模感等によって、必要となる費用が大きく変わってきます。
一見、リフォームやリノベーションの方が安く済むイメージですが、場合によっては建て替えの方が安く済むケースもありますので、どういった場合が最もコストパフォーマンスが高いのか、それぞれ解説していきたいと思います。
一軒家の建て替え費用
まずは、一軒家の建て替えの場合の費用についてです。
大きく分けて、以下の5項目の費用が必要です。
1、既存建物の撤去費用
2、新築建物の建設費
3、引っ越し費用
4、仮住まい費用
この中でも、既存建物撤去費用と、新築建物の建設費については、その環境や依頼方法等によって大きく変わってきますので、それぞれ詳しく見ていきます。
一軒家の建て替え時の撤去費用
一軒家を撤去するケースは以下の場合が見受けられます。
・今住んでいる建物が古くなったので建て替えする場合、
・中古建物付き土地を購入し、新たに新築する場合、
・親から引き継いだ建物があり、その建物を撤去して新築する場合、
・親の土地に、倉庫や離れの家があり、それを撤去して新築する場合
いずれの場合についてもまずは既存の建物の撤去が必要となってきますが、撤去する費用については、その建物の構造や、周辺環境によって大きく変わってきます。
一軒家の撤去費用、構造別による費用の違い
建物の構造については、鉄筋コンクリート、鉄骨造、木造と大きく分けて3種類あります。
撤去費用については、木造が最も安価で、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順に高くなります。
一般的な木造2階建て30坪の建物を撤去する場合、150万円~250万円程度必要となります。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造となってきますと、撤去に大掛かりな重機が必要となり、撤去手間が大幅にアップしますので300万円以上する場合もあります。
一軒家の撤去費用、周辺環境による費用の違い
次に、撤去する建物の周辺環境による費用の違いについてです。
例えば、撤去する建物の前面道路や、敷地自体が狭く、大型重機が入っていけない場合は、全て人の手による解体となり、機械で解体するより量力が倍以上となり、費用も比例して高くなります。
また、人力で解体する場合、機械で解体する場合に比べ、解体期間も長くなります。
一軒家の解体費用、建物以外でも撤去が必要なもの
その他、撤去する建物以外でも既存の敷地内の構造物の有無、状態によって撤去費用の上乗せが必要な場合があります。
例えば、昔使っていた浄化槽が残っている場合、次に新築する建物の基礎の障害となるため、その浄化槽の撤去費用が必要となってきます。
浄化槽撤去は、地下に埋まっているものを掘り上げる必要がありますので、それだけで数十万円も撤去費用が必要となってきます。
また、古いブロック塀が残っている場合、建築基準法上違法となれば、撤去費用の上乗せが必要となる場合があります。
建築基準法上、合法であっても古いブロック塀や既存の囲い壁は、次の新しい家との外観デザインの相性が悪ければ撤去も考える必要があります。
それら既存の外構デザインと、次に建てる新築の外観デザインとの調整によっても、それらの撤去費用が変わってくる場合があります。
一軒家の撤去費用、既存のライフラインは問題ないか
ライフラインである水道やガス等の引き込みについても、注意が必要です。
建て替えの場合すでに水道は引き込まれているはずですが、古い基準で作られている場合もあるため、新しい基準で作り直さなければならないケースもあります。
一軒家の撤去費用まとめ
このように既存の建物の構造種別、敷地周辺環境によって、大きく撤去費用が変わってきます。
解体工事は、次の建物が健全に建てられる為の下準備の重要な工程となり、十分な調査と、次の新しい建物の計画も含めた解体費用を把握することが重要となります。
一軒家の建て替え時の新築費用、相場
一軒家を建て替える場合、その一軒家の依頼先は工務店、設計事務所、ハウスメーカーが考えられます。
工務店とハウスメーカーについては、撤去から新築まで一括で請け負います。
設計事務所に依頼する場合は、撤去や新築を別で考えることも可能ですが、次の新築建物の設計も考慮して解体工事を計画することも可能です。
いずれにせよ、撤去を含めたトータルで新築建物を計画することが重要で、新築する建物の計画によっては、撤去費用を抑えることも可能です。
例えば、既存建物の撤去に加え、お庭の樹木も撤去し更地としてから建物を計画することが一般的だと思われますが、お庭の樹木は残したまま、それを活かした新築設計とすることで、樹木の撤去費用と、新築時の外構費を抑えることが出来ます。
建て替えの場合の、新築については注文住宅を依頼することになります。
国土交通省調査報告書※1では、令和元年度の注文住宅購入価格(全国平均の建築費の相場)は約3,200万円とあります。
あくまでも平均ですので、建て方の工夫によりローコスト住宅とすれば、2,000万円程度で建築することも可能です。注文住宅であるが故に、ある程度予算に応じてコントロールすることが可能です。
※1令和元年度住宅市場動向調査報告書 令和2年3月 国土交通省住宅局
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001348002.pdf
一軒家の建て替え、その他の経費
親御さんの敷地に立てる場合は、敷地を分けて建てるのか、それとも分けずに建てるのかによっても必要となる費用が変わってきます。
敷地を分けずにローンを組む場合は、元々立っている母家にもローンの担保に入ってしまうため、敷地を分筆することも考えられます。その場合は、測量、分筆費用が必要となってきます。
この測量、分筆費用については土地の広さや形状によっても変わってきますが、数十万円程度です。
一軒家のリフォーム・リノベーションと建て替えの比較
すでに土地建物がある場合、費用を抑える為にリフォームやリノベーションの選択肢があります。
リフォームとリノベーションの違いは、また別の会に解説したいと思いますが、今回は建て替えとの比較となるので、大まかには同じ扱いで解説したいと思います。
建て替えに比べ、リフォームやリノベーションの方が見積り金額はかなり安くなる傾向があります。
それは、リフォームやリノベーションは、基本的には建物の基礎や柱・梁・屋根等の主要な構造部材は既存のものをそのまま使うためです。
ただし、リフォームやリノベーションは、想定外な場合が多く、当初予定していた予算をオーバーすることは多々見受けられます。
いざ工事を着工、内装をはがしてみると、柱や梁が痛んでいた補修が必要となる場合や、床下や屋根裏が元の設計図と違っていた場合、設計の変更をする必要があり、想定外に高くつく場合があります。
また、リフォームやリノベーションして住み続けたけど、表面的なところだけのリフォームやリノベーションだったため、床下等の見えない所が痛んできて、すぐに改修する必要が出てくることも考えられます。
リフォームやリノベーションの方が良いと判断できる基準は、改修後健全に長く住めるのかが重要です。
一軒家のリフォームやリノベーションと建て替えとの見極めポイント
リフォームやリノベーションして、その後も長く快適に住み続けられると見極めるポイントは以下の5点です。
1、既存建物の耐震性に問題はないか。
2、屋根や外壁の外装材のコンディションの良し悪し
3、床下のコンディション
4、違法建築となっていないか
5、現在の建物の間取りを大きく変える必要がないか
見極めポイント1、既存建物の耐震性に問題はないか。
建物の耐震性いついては、まずは建築基準法で見極めることが出来ます。
1981年に建築基準法が改正され、それ以降の建物は新耐震基準で建てられています。
耐震性が不足している建物を現在の耐震基準に適合させる費用は、改修費の中でも最も費用のかかる一つでもありますので、1981年以前の建物であれば、建て替えた方が費用対効果は高いと考えられます。
見極めポイント2、屋根や外壁の外装材のコンディションの良し悪し
次の見極めポイントは、屋根や外壁の外装材のコンディションの良し悪しとなります。
これが悪ければ雨漏りや結露によって、天井内や壁内部の木材等の構造材が腐ってしまっている可能性があります。
構造材の改修が必要となる場合は、構造材だけでなく、本来改修が不要だった構造材周辺の健全な材も撤去が必要となるため、金額が大きく膨らむ可能性が高くなります。
リフォームやリノベーションにする費用対効果が低いと判断できるでしょう。
見極めポイント3、床下のコンディションの良し悪し
フローリング等の床材だけが痛んでいる場合であれば、表面だけの改修で比較的安価にリフォーム可能ですが、床下内部の構造材が傷んでいる場合は、リフォーム費用も大きく膨らむ可能性が高くなります。
見極めポイント4、違法建築となっていないか
違法建築となっている場合、改修範囲が想定以上に大きくなり、費用も大きく膨らむ可能性があります。
例えば、築年数が古い建物の場合、現在の法律ではアスベストを含む建材は使えないこととなっていますが、古い建物は内装材等で使われていることもありました。
改修時に、撤去する内装にアスベストが含まれていることがわかりますと、撤去や撤去した材の処分方法が法で厳しく規定されていますので、非常に手間のかかる撤去となり、費用がかさむことにつながります。
見極めポイント5、現在の建物の間取りを大きく変える必要がないか
間取りを大きく変える必要がある場合は、工事が大掛かりとなり、住みながらの改修は難しくなります。
そうなると、リフォーム費用が膨らむだけでなく、引っ越しや仮住まいの費用も必要となり、建て替え費用に近づいてきます。
見極めポイントまとめ
築年数が古い建物については、これらの見極めポイントを十分に確認した上で、リフォームした時の費用対効果が建て替えに比べて良いかどうかを見極める必要があります。
リフォーム後も長く住み続けられる住居にする為の、リフォームの優先順位としては、まずは、耐震性や断熱性能を現在の基準レベルに対応させること、それから、雨風から建物を守る屋根や外壁を健全な状態にすること、次に内装や設備の改修を考えることです。
ただし、一般的には、この優先順位を逆にする場合も多くみられます。壁クロスやキッチン、ユニットバス等、目につきやすい所ですので、そこをリフォームしようとしますが、耐震性や外装材が痛んでいては、せっかく綺麗にリフォームしても、すぐに改修が必要となることも考えられます。
この優先順位順に検討し、最初の段階の耐震性や断熱性で費用がかかりそうな建物であれば、建て替えの方が費用対効果が高いと言えます。
逆に、耐震性や断熱性が現在の基準レベルにすることが容易で、外装材が健全な建物であれば、リフォームの方が費用対効果が高い建物であると言えます。
これらの耐震性や断熱性、外装材の健全性については素人ではなかなか判断が難しい所となりますので、建築士等の専門家に相談しながら進めることになります。
一軒家のリフォームの費用、相場
建物が健全で、リフォームする場合の費用については、リフォームする範囲で大きく変わってきますが、事例を2つ紹介いたします。
例1
一軒家リフォーム約30坪
築20年の耐震性能に問題のない場合、
リフォームの内容としては、断熱改修、金属屋根の塗り替え、外壁塗り替え、シロアリ対策、水廻り(キッチン、お風呂、トイレ)全て交換です。
上記内容で費用は1000万円です。
耐震性の確保と断熱改修、水廻りが一新し、今後のセカンドライフを安心して住み続けられる改修で非常に費用対効果の高いリフォームです。
例2
一軒家リフォーム約30坪
築53年耐震改修の必要な場合
リフォームのとしては、耐震改修、断熱改修、バリアフリー改修、省エネ改修、収納対策、内装改修、外壁メンテナンス、シロアリ対策です。
上記内容で費用は2500万円です。築年数が53年と古い建物を新築同様に蘇らせています。
ここまですると、費用が建て替えに近づいてきます。また、建物全面改修となりますと、引っ越しや仮住まいの費用も必要となってきます。
リフォームの相場としては、耐震性や断熱性を確保した上で建て替え費用の半分から6割程度以下に抑えることができれば費用対効果が高いリフォームと言えるでしょう。
一軒家の建て替えとリフォームの流れ
それでは最後に、一軒家の建て替えと、リフォームをする場合の大まかな流れを見ていきます。
一軒家の建て替えの流れ
一軒家の建て替えの場合の大まかな流れについては、下記の①から⑦の工程となります。
①撤去する建物の調査
建物の築年数、構造種別の調査を行い撤去方法を検討します。また、周辺環境を調査し重機での解体が可能な敷地であるかどうかを調査します。
②新築建物の概略検討
撤去したあと、どのような建物を建てるか概略検討します。
それにより、撤去する建物や外構で活かせるところはないか、
撤去費用を抑えられる要因がないか、逆に撤去費用が嵩む要因がないか
等の見当をつけます。
撤去する前に、新築建物の設計をすることで、撤去する範囲や費用を把握することが出来ます。
③撤去開始、仮住まい
新築建物の計画により、解体建物の見当がつけば、引っ越し仮住まいし、いよいよ既存建物の解体です。
④解体工事
解体工事は、一般的な木造30坪の場合は凡そ2週間程度あれば解体が完了します。
⑤地鎮祭
解体工事が完了すると、次の新築建物のための地鎮祭を行います。
⑥新築建物着工
新築建物の工事については、ハウスメーカー等の規格住宅であれば3カ月程度の短工期で済みますが、一般的な木造注文住宅の場合は6カ月程度となります。
⑦新築建物完成
新築建物が完成すると、仮住まいから引っ越し、建て替え完了となります。
一軒家のリフォームの流れ
一軒家のリフォームの場合の大まかな流れについては、下記の①から⑦の工程となります。
①リフォームする建物の調査
建物の築年数、構造種別の調査を行います。また、周辺環境を調査し重機でのリフォームが可能な敷地であるかどうかを調査します。
ここの工程は、建て替え時の工程とほとんど同じとなります。
②リフォーム内容の検討
耐震改修、断熱改修、バリアフリー改修、内装改修、水周り改修等、リフォームする範囲を検討します。
③建物調査
決定したリフォームの内容に照らし合わせ、それらが対応可能か否か、建物の詳細調査を行います。
④リフォーム開始、仮住まい
外装、水周り、内装すべて改修する場合は、引っ越し仮住まいを行い、いよいよ既存建物のリフォーム開始です。
部分的なリフォーム水周りのみや、内装のみの場合は引っ越し仮住まいをしなくともリフォームすることも可能です。
⑤リフォーム工事期間
リフォームの工事期間については、リフォームの内容により大きく変わってきますが、仮住まいしていれば一気に工事を進められるため、比較的短工期でリフォーム可能です。仮住まいなしで行う場合、住んでいながらリフォームを部分的に行うため、工期は長くなることもあります。工期が長くなれば、その分の経費も必要となりますので、リフォーム費用にも影響がでてきます。
リフォームの工事期間については、リフォームの範囲、内容を検討する際に、仮住まいするか否かを合わせて検討し、費用効果の高い方を選択するようにしましょう。
⑥リフォーム完成
リフォームが完成すると、仮住まいから引っ越し、すべて完了となります。
建て替えに比べ、リフォームの方が全体的な工程は短くなります。
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