外壁材の選び方と、仕上げ材の組合せ方

外壁材の選び方は、デザイン・耐久性・コストをバランスさせて決定します。

外壁材は、主架構となるRC造(鉄筋コンクリート造)・S造(鉄骨造)・木造それぞれの構造体によってある程度選択範囲が絞られることになります。

また、外壁本体と仕上げ材の組合せにより、外壁として必要となる耐久性を確保します。

目次

外壁材の種類と仕上げ材との組合せ

外壁材は、RC打放しからサイディングや板張り、タイル貼りなど沢山の種類がありますが、「外壁本体」と「仕上げ材」の2つの組合せによって造られています。

例えば、タイル貼りは仕上げ材であり、RCやサイディングなどの外壁本体が無ければ外壁として成立しません。

タイルは外壁本体の上の装飾としての役割や、外壁本体の経年劣化を防ぐためのもので、タイル貼りに防水性などの外壁としての役割はありません。

外壁は「雨風から建物を守る防水性」「火災から建物を守る耐火性」「地震から建物を守る耐震性」「長期間劣化させない耐久性」などの役割を担っています。

これら外壁の役割を達成するために、外壁本体と仕上げ材を組合せて性能を確保します。

外壁材本体

代表的な外壁材本体としては以下の種類があります。

  • RC(鉄筋コンクリート)
  • PC(プレキャストコンクリート)
  • ALC(高温高圧蒸気処理軽量気泡コンクリート)
  • ECP(押出成形セメント板)
  • 金属板(ガルバリウム鋼板、アルミパネル、鋼板断熱複合板など)
  • サイディング(窯業系、木質系など)
  • 板張り(杉、檜など)

これら外壁材本体だけでは、雨水を吸い込み汚れの原因になることや、材自体の劣化に繋がるため、いずれも耐久性を向上させるために本体の上に仕上げ材を施すことになります。

RC(鉄筋コンクリート)

RCは、現地の職人が現地の材料(砂利や水)を使い、現地で一発勝負で作られるものです。

造る日の温度や湿度などの影響もうけ、その地だけのものが出来上がることが特徴です。

RCは仕上げがなくとも外壁として成立させることが可能ですが、耐久性を向上させるために保護塗料を塗ることが一般的です。

RCは工場生産ではないため、他の外壁材と異なり専門メーカーがなく、在来の現場でつくる外壁材であることが特徴です。

PC(プレキャストコンクリート)

PC(プレキャストコンクリート)は、あらかじめ工場でコンクリートの壁を造って現地で組み立てる工法です。

RCとは違い、環境の整った工場で製作されるため、精度の高い外壁が造られます。

ただし、工場から現地への搬入と、現地での大型クレーンを使った組み立てが必要となり、RC造に比べるとややコストが高くなります。

PCのメリットとしては、工場生産での品質確保のほかに、現場での工期を短く出来ることが挙げられます。

PCについても、RCと同様仕上げがなくとも外壁として成立させることが可能ですが、耐久性を向上させるために保護塗料を塗ることが一般的です。

代表的なPCメーカーは、高橋カーテンウォール工業です。

ALC(高温高圧蒸気処理軽量気泡コンクリート)

ALC(高温高圧蒸気処理軽量気泡コンクリート)は、耐震性(ロッキング工法など)や耐火性があり、RCやPCに比べ軽量で施工性に優れ、コストも安いことが特徴です。

また、壁面内部に気泡(空気)を含んだ構造となっており断熱性も高いことが特徴です。

施工性に優れコストが比較的安いことから、小規模な住宅から、中規模ビル、大規模工場など様々な建築で使用されています。

ALC自体の表面は細かな気泡でできており、吹付仕上げを行わないと内部に水が浸透してしまい、内部の鉄筋が錆び外壁自体の強度が弱くなる性質があるため、必ず防水性の高い吹付材等を施す必要があります。

ALCは工場でパネル化したものを現地で組み立てていくもので、パネルサイズごとに継ぎ目の目地が見えてきます。

タイルや塗装など様々な仕上げを施すことができますが、このパネルごとの目地は耐震上重要な役割があるため消すことができません。(低層の建物であれば、目地を消す工法もあります)

低層建物でALCの目地を消す工法参考例:ジョイントV

パネルのサイズは600mmが標準的なサイズです。600㎜ごとに目地が通ることになり、この600mmごとの目地をどのようにデザインするかで見た目の印象が大きく変わってきます

代表的なALCメーカーは、以下の3社です。

ECP(押出成形セメント板)

ECP(押出成形セメント板)は、ALC同様に耐震性(ロッキング工法など)や耐火性があり、RCやPCに比べ軽量で施工性に優れ、コストも安いことが特徴です。

ECPの素材感は、コンクリートに近しいものがあり、塗装などの仕上げをしなくとも耐久性に問題はないところも特徴です。

ただし、美観保持の観点から仕上げ塗装などの保護を行うことが一般的です。

ECPもALC同様、工場でパネル化したものを現地で組み立てる工法であることから、パネルごとに目地が見えてくる特徴があります。

代表的なECPメーカーは、以下の2社です。


アイカテック建材https://www.aica-tech.co.jp

金属板(ガルバリウム鋼板、アルミパネル、鋼板断熱複合板など)

金属板は、金属単体のものと、金属と断熱材などと組み合わせた複合板があります。

金属板は、0.8mm程度の薄板を使うため、強度をあげるために折板状に折り曲げて成形するものや、断熱材を組み合わせるものがあります。

金属の種類は、アルミ、ステンレス、銅、ガルバリウムなど様々ですが、殆どの場合は金属素地で使うことはなく、耐久性や意匠性を考慮し表面塗装を施して使用されます。

金属板外壁の代表メーカーとしては、以下があります。
・三晃金属https://www.sankometal.co.jp/
・ヨドコウhttps://www.yodoko.co.jp/product/ken/
・ダイムワカイhttps://dymwakai.co.jp/index.html
・日鉄鋼板http://panel.niscs.nipponsteel.com/line-up/exterior-wall-material/isowand-bl-hbl/

戸建て住宅で使われるメーカー以下です。
・アイジー工業https://www.igkogyo.co.jp/
・旭トステムhttps://www.asahitostem.co.jp/
・ケイミューhttps://www.kmew.co.jp/

金属板外壁を取り扱うメーカーは、PC、ALC、ECPに比べ多くの企業が参入しています。
これは、ビル建築だけでなく住宅でもよく使われる外装材であるためだと思われます。

サイディング(窯業系、木質系など)

サイディングについては、主に戸建て住宅を想定して造られているため、規模の大きなビル建築では殆ど使われることがありません。

規模の大きなビル建築では、耐風圧や耐火性などの要求性能が高いためサイディングでは対応出来ない場合があります

大手住宅メーカーのセキスイハウス、ダイワハウス、住友林業、セキスイハイム、三井ホーム、一条工務店はいずれもサイディングが標準となっています。

サイディングについては、細かく分割されたパネルを現場で組み立てることになります。そのため、細かく目地が入ることが特徴です。

サイディングの主なメーカーは以下です。
・ニチハhttps://www.nichiha.co.jp/products/wall/
・神島化学工業https://www.konoshima.co.jp/bm/exterior/siding.html
・アイジー工業https://www.igkogyo.co.jp/
・旭トステムhttps://www.asahitostem.co.jp/
・ケイミューhttps://www.kmew.co.jp/

板張り(杉、檜など)

板張りは最近あまり見なくなりましたが、古くから使われている外壁材の1つです。

工場生産ではなく、RCと同様に現地で大工が造っていく在来工法の外壁です。

板張りに使われる材は、日本では杉・檜(ひのき)が採用されることが殆どです。

杉・檜共、雨がかりになると劣化が進行するため、深い軒をもった元来の日本的な建築に使用されていました。

また、古くから日本の建築では、外壁板張りは簡単に張り替えられるようなディテールになっています。

劣化が激しい部分だけは部分的に張り替え可能なため、持続可能性の高い外壁材の1つと考えることができます。

最近の建築は外装材の性能が高くなってきたため、軒のない建築が増えてきました。

そのため、杉や檜などの板張りを採用されることも少なくなりました。

経年変化する木の良さもあるのですが、長期間変化しないことを求める現代では受け入れがたい工法となっています。

板張りも、仕上げ塗装なしでも外壁として成立しますが、耐久性を考慮して保護塗料を施されることが多くあります。

外壁仕上げ材

外壁本体のRC、PC、ALC、ECP、金属板、サイディング、板張りの上に防水性や耐久性を確保するための仕上げ材として代表的なものは以下です。

・塗装(耐候性塗装、保護塗料、特殊塗装など)
・吹付(複層塗材、吹付タイル、リシン吹付、石調吹付など)
・タイル貼り(磁器質タイル貼り、炻器質タイル貼りなど)
・石貼り(御影石、ライムストーンなど)
・左官(モルタル塗り、漆喰、珪藻土など)

塗装(耐候性塗装、保護塗料、特殊塗装など)

いわゆるペンキ塗りです。

塗装はRC、PC、ALC、ECP、金属板、サイディング、板張りなど、あらゆる外壁材に採用することが可能です。

外部で使用するため、耐候性の高いフッ素系塗料、無機系塗料、ガラスコーティング、光触媒などが採用されます。

公共建築物のRCやPC、ECPに最も多く採用されるフッ素系耐候性塗料の参考メーカーとしては、以下があります。
・SK化研クリーンマイルドhttps://www.sk-kaken.co.jp/product/overcoat-materials/cleanmild-fusso/
・日本ペイントデュフロン100https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/253/
・関西ペイントセラMフッ素https://asset.kansai.co.jp/uploads/products/decorative/fm/catalog_pdf/941.pdf

RC打放しでRCの質感を残しながら耐久性を確保する商品として、無機系塗料のランデックスコートなどがあります。(打放しの安藤忠雄建築でもよく採用されています)
・大日技研ランデックスコートhttps://www.dainichi-g.co.jp/lineup/wssosuizai/
・日本ペイント水性4Fプーレシステムhttps://www.nipponpaint.co.jp/products/building/211/
・SK化研セラミクリートhttps://www.sk-kaken.co.jp/product/exterior-finish-materials/cerami-crete/

ALCは吹付塗装されることが多いですが、特殊塗装により表情が大きく変わるような塗装も最近はあります。


OSHIROX特殊塗装(ALC)https://oshirox.jp/assets/wp-content/themes/core/images-dl/documents/book-color.pdf

木材の質感を残したい場合、含浸系の保護塗料が採用されます。参考メーカー商品としては以下です。
・キシラデコールhttps://www.xyladecor.jp/products/xyladecor.html
・オスモカラーhttps://osmo-edel.jp/product/osmocolor/
・ウッドコートhttps://planetjapan.co.jp/color/
・リボスhttps://www.livos-jp.com/

吹付材(複層塗材、吹付タイル、リシン吹付、石調吹付など)

現在の日本のビル建築で、最も多く採用されている仕上げ材の1つです。

最も多く採用されている理由は以下です。

・下地を選ばず、どんな外壁材にも採用することができる
・特殊技術を要せず施工性がよい
・下地を綺麗に仕上げずに済む
・下地の動きにも追従する
・コストが比較的安い、
・耐久性の高い商品もある
・仕上げ種類のバリエーションが豊富
・指定の色で仕上げることが出来る

これだけのメリットが並ぶと、誰もが吹付材を選ぶことになりますがデメリットもあります。

メリットの1つにも挙げた「下地を綺麗に仕上げずに済む」は、少し危険なところがあります。

例えば、RC造であればひび割れやジャンカの発生した壁であっても吹付をすると綺麗に仕上がってしまう為です。

また、吹付材の性能が高いため、長期間雨漏れもせず健全に出来上がってないことに気付かないことです。

そのため、吹付材を選ぶ場合は下地の状態が健全であることを確認した上で施工することが重要です。

吹付材を取り扱う代表メーカーは以下です。
・SK化研
・日本ペイント
・関西ペイント

タイル貼り(磁器質タイル貼り、炻器質タイル貼りなど)

一昔前は、タイル貼りは耐久性が高く、見た目も長期間変化しないため、少し割高になるがライフサイクルを考えると間違いないと考えられていた仕上げ材です。

しかし、何十年も前に施工されたタイルの剥落事故が多数確認されています。

タイルが剥がれる原因は、タイルを貼り付けるために使用されたモルタルの施工不良や経年劣化によるものです。

現在では、モルタルでタイルを貼ることが少なくなり、高層ビルではタイルを金物で物理的に固定し、地震時の揺れに対して追従する工法が採用されるようになりました。

タイル貼り工法としては、現在以下の4種類が多く使われています。
(※正式には、もっと多くの種類の工法が存在します)

湿式工法先付け工法乾式工法(金物)乾式工法(接着剤)
工法の特徴モルタルでタイルを貼り付ける型枠にタイルをセットし、コンクリート打設金物を使用しタイルを固定する接着剤でタイルを固定する
耐震性△モルタルが地震の揺れに追従しない〇躯体と強固に固定されているため剥落の可能性は低い◎地震の揺れに追従する(計算により評価可能)〇伸縮性のある接着剤により揺れに追従する
地震追従性の計算△計算不可△計算不可〇計算により確かめることができる△計算不可
下地外壁の選択肢△RC・PC△RC・PC〇RC・PC・ALC・ECP・サイディングなど〇RC・PC・ALC・ECP・サイディングなど
施工性△職人の腕、天候に左右される△職人の腕に左右される
コスト◎安価※ただし、今後職人が減少し高くなる可能性有◎安価※ただし、今後職人が減少し高くなる可能性有△高価〇比較的安価

タイルメーカーの代表的なものは以下です。
・リクシルhttps://www.lixil.co.jp/lineup/tile/
・国代耐火https://www.agorabrix.co.jp/
・名古屋モザイク工業https://www.nagoya-mosaic.co.jp/
・ダントータイルhttps://danto.jp/

石貼り(御影石、ライムストーンなど)

石貼りの外壁は、コストが高いため予算に余裕のある建築でしか見ることが出来ません。

石貼りもタイルと同様に、最近では金物を使って地震の揺れに追従できる乾式工法が一般的となってきています。

石貼りで乾式工法となると、更にコストが割高になります。

コストが高い分、石は耐久性が高く、汚れも目立たないため、メンテナンスをすることが殆ど不要な外壁材の1つです。

左官(モルタル塗り、漆喰、珪藻土など)

左官職人によるもので、その時の温度や湿度などの影響をうけることから、同じ表情のものがなく、建築家には人気の仕上げです。

昔からある工法で、一時は左官職人が減っていることや、手間のかかる工法であることから他の仕上げ材に比べコストが高くなることもあり、あまり使われなくなりました

最近では、左官の温かみある表情が見直され再び使われ始めています。

左官は、今までは職人が現地で土を選定し作り上げるものですが、今では全国どこでも同じクオリティのものが造れる商品としてだしているメーカーもあります。

・モールテックスhttps://www.haradasakan.co.jp/webcatalog/webcatamortex/
・ジョリパッドhttps://www.aica.co.jp/products/wall-material/jolypate/
・けいそうモダンコートhttps://kenzai-search.jp/makers/shikoku/products/categories/192?page=1

外壁材本体と外壁仕上げ材の組合せ

外壁本体と外壁仕上げ材の組合せの代表的なものを以下に挙げます。

塗装吹付タイル貼り石貼り左官
RC〇※1〇※1
PC〇※1〇※1
ALC〇※2
ECP〇※2
金属板
サイディング〇※2
板張り

※1:RC・PCのタイル貼り・石貼りについては、金物を使用した乾式工法
※2:ALC・ECP・サイディングのタイル貼りは専用接着剤による乾式工法

外装材は構造躯体によって、ある程度は絞られる

外装材については、構造が決まった段階である程度絞られてきます

たとえば、構造が木造となればRCやPCなどの外壁が選ばれることはありません。それは木造の軽量な建物に、RCやPCなどの荷重の重い外装材は不釣り合いでコストパフォーマンスが悪いためです。

また、RC造の建物に金属板やサイディングが選ばれることはありません。それは、RC造の耐震性や耐火性のある構造に対して、金属板やサイディングなどの軽量な外装材は不釣り合いであるためです。

RC造での外装材の選び方

RC造の建物は、構造躯体にRCを使うため、そのまま外壁までRCで作ることが最も効率的です。

また、RC造は鉄骨造や木造に比べ、外壁の挙動が少ない構造であることが特徴です。

外壁の挙動が少ないため、継ぎ目のない大きな壁面をつくることができます。

RC造で外装材としては、RCに塗装・吹付・左官が順当です。

稀に、RC造でALCやECPなどが採用されている場合がありますが、構造計算上柱と外壁の縁を切り、軽量化する必要がある場合にやむを得ずALCやECPが選ばれます。

また、木質化を図るため、RC外壁の上に板張りを施す場合もあります。

S造での外装材の選び方

S造の建物は、構造上地震時の揺れに追従する外壁が必要となります。

そのため、S造の外壁はPC・ALC・ECP・金属板・サイディングに塗装が順当です。

木造での外装材の選び方

木造の建物は、鉄骨造と同様に地震時の揺れに追従する外壁が必要となります。

また、木造は戸建て住宅に採用される場合が多くあり経済性を重視されるため、PC・ALC・ECPはあまり選ばれることがありません。

木造では、金属板やサイディング、板張りに塗装が順当です。

構造別での外装材の選び方一覧

構造別の外装材の組合せとしては、以下の表が順当な選び方となります。
ただし、どの組合せもできないことはないですが、経済性の観点から以下の表で選ばれることが殆どです。

RC造S造木造
RC
PC
ALC
ECP
金属板
サイディング
板張り

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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