日本の瓦の色は、黒、銀、赤、青、緑など様々ですが、実はこの色に地域の歴史や風土が詰まっています。
沖縄の赤瓦は、台風が多く、高温な地域性から導かれている
沖縄の赤い瓦は、レンガと同じように土を焼いて作られた素瓦が使用されています。
着色しているわけではなく、土そのものの色があらわれて赤く見えています。
レンガと同じなので、質感は粗い感じがします。
素瓦は、土を比較的低温で焼き上げた瓦で、製法はレンガと同じです。
- レンガと同じ製法で作られているので、土の色そのものがあらわれ赤くなる。
- 低温で焼き上げているので、密度が比較的粗い。
- 密度が粗いので、水がしみこみやすい
- レンガは漢字で書くと、「煉瓦」。つながりがあるのかもです。
遠くからみると全体が赤く見えますが、近くでみると赤い瓦(レンガ)を白い漆喰で塗り固められています。
沖縄の台風の多い地域では、瓦が吹き飛ばされないことが屋根に求められました。
そこで、黒い日本瓦を使用するのではなく、着色しない素瓦(レンガ)を使用することで、
台風時に雨を屋根にしみこませ重量を重して吹き飛ばされにくくしています。
また、漆喰で素瓦をとめつけることで、瓦の隙間に風が入り込まず、吹き飛ばされない。
さらに、雨があがったときに、素瓦(レンガ)にしみこんだ雨水が蒸発し、打ち水効果により周辺温度を下げる効果もあります。
よく考えられたものです。
神社仏閣で使用される燻(イブシ)瓦の意味
日本を代表する瓦の風景となっている寺社仏閣の建築ですが、銀色に燻された瓦が多く採用されています。
燻(イブシ)瓦は、字のごとく、瓦を燻製(クンセイ)させてつくられています。
燻(イブシ)瓦は、沖縄の素瓦と焼き上げるまでの工程は全く同じで、粘土を瓦の形へ成形し、釜で高温で焼き上げます。
焼きあがったあと、そのまま着色もせずに使用するのが沖縄の素瓦ですが、その素瓦を燻製釜で、燻すことで表面に炭化膜が形成され、銀色の燻(イブシ)瓦となります。
燻され炭化された瓦の表面を雨が伝うことで、雨水が浄化されて地面に落ちることになります。
しかも、寺社仏閣では雨樋は設けず、そのまま地面に落とすことが多く見られます。それは、建築の周辺地面は、雨水が浄化された水により覆われていることになることからだと考えられます。
表面が炭化された燻(イブシ)瓦をつかうことで、瓦を伝う雨水が浄化される。
施釉の色瓦
施釉は、素瓦や燻(イブシ)瓦とは異なり、施薬を土に含めて高温で焼き上げることで、施薬の成分により瓦を着色させる技術で、器などの陶器の技術が応用されて造られています。
島根県の特有の赤錆色(アカサビイロ)の石州瓦
島根県の石州瓦は、火事の多い地域と、日本海の凍てつく寒冷地に耐える材が必要とされる地域性から、水甕(みずがめ)に使われていた来待石を原料とした釉薬を用い、現在の陶器瓦として誕生しました。
来待石は、島根県松江市に分布する「大森-来待層」で採れる凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)で、日本でも有数な豊富な埋蔵量を有しています。
凝灰質砂岩 (ぎょうかいしつさがん) は、火山堆積物が海底に堆積して形成されたもので、アルカリ質の物性となります。
この来待石を施薬として用いることで、独特の赤錆色となります。
島根県の赤錆色の瓦は、地域で豊富に採れる来待石を施薬としているから。
来待石を施薬 とすることで、火事から家を守る耐火性と、日本海の凍てつく寒冷地に耐えうる「耐凍害性」と「防水性」を兼ね備えている。
さらに、アルカリ質の物性から、日本海からの塩害にも強い性質を持っています。
瓦の色の役割、デザイン
瓦は、地域の必要とされる暴風や耐火、耐塩害等の性能面から導かれるものや、建物の用途によって導かれるものまでさまざまです。
すべて、瓦の色には意味・意図があり、デザインだけで作られているものではないことが分かります。
この土を使った瓦を応用して、現在の建築に活かされている事例もあります。
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