自然素材で出来ている日本の床材「土間」「板の間」「畳の間」のデザイン

日本の住処は、靴を脱いでの生活習慣であり床材の選定は直接触れるものとして、耐久性や意匠性だけでなく材質感を重視して選ばれています。

日本にある床材として、土間、板の間、畳の間があり、いずれも自然素材で作られ古くから親しまれています

古くから日本の風土で育まれ親しまれてきた土間、板の間、畳の間は、現在の住まいにも和の感じられる日本らしい床材としてデザインに取り込まれています。

目次

土で作らている「土間」の役割

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「土」の間と書いて「土間」、まさに土で作られていました。

土だけでは、砂誇りが舞うので、石灰などが混ぜられ締め固められて造られています。

作り方は今のコンクリートに似ています。

土間の歴史

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日本では履物を脱いで生活する習慣があり、土足と上足を履き替える空間が必要でした。

また、昔は野菜など農作物の下準備や保存をしたり、かまどがあって炊事をしたりと土足での作業、水気にも強い床材が適していたため、土間のある程度広さがある空間が必然とされていました。

現在では、農作物の下準備などもすることも少なくなり、炊事場もシステムキッチンと変わり、土間の必要性が少なくなりました。

しかし、現在となっても新しく土間の空間が見直されつつあります。

この土足のままで利用できる土間の空間は、サーフィンや釣り、キャンプ、自転車、バイク、登山など、家の中であっても、水濡れや砂や泥を気にすることなく道具のお手入れをする空間としたり、外で使う趣味のものを室内で収納しておくことが出来る空間として活用されています。

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また、自然素材の「土」で作られた空間は長く使えば使うほど味わいが出てくるものです。

この長い期間使われてきた土間は劣化することはなく、永年に使い続けることが出来ます。

その魅力を活かしたリノベーションも昨今見受けられるようになりました。

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土間のメリット

土足のままで作業できる。

自転車をいじったり、ボードのワックスを塗ったり、観葉植物の土変えなどのガーデニング作業などに使えるだけでなく、雨の日は、子供の遊び場としても利用できます。

外で使う物の収納に便利

子どもの外で遊ぶおもちゃや、自転車や釣り道具、ゴルフ用品、バーベキューセットなども濡れたまま収納することが出来ます。

土を感じることが出来る。

昔は室内でも土壁が主流でしたが、現在は石膏ボードにクロスや塗装が主流となりました。

土の優しい感じを味わうことが出来なくなりましたが、土間にすることで土を感じることが出来ます。

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土間のデメリット

居住スペースが圧迫される

ある程度の広い土間をつくることは、その分の居住スペースが圧迫されることとなります。

土間は便利な空間として利用することが出来ますが、限られた敷地や予算の範囲の中で、どの程度土間にスペースを割くことができるかは慎重に検討する必要があります。

埃っぽくなる

外で使ったおもちゃや自転車などを室内に入れることになるので、泥やほこりをそのまま室内に入れることになります。

綺麗にしていたとしても、やはり埃っぽさは拭えません。

断熱が疎かになる

土間下に断熱を施すこともありますが、基本的に屋外モノの収納につかうことを想定すると断熱までは要らないと考えて、土間部分の断熱を行わない場合があります。

ある程度まとまった範囲の断熱がない建物となると、建物全体の断熱性能にも影響を及ぼすことに繋がります。

現在も日本の住処で主流として利用されている板の間

板の間の歴史

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板の間は昔、土間と畳の間の中間的な空間で、家族がくつろぐ場として使用されていました。

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履物を脱いで生活する場としては、板材のぬくもりは今も変わらず親しまれる材として活用されています。

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板の間(フローリング)のメリット

板の間(フローリング)のメリットは、今は様々な樹種を選択できるので、和の空間でも洋の空間であったも、さまざまなインテリアテイストにも合わすことが出来ることです。

また、価格も比較的ローコストなものから超高級なものまで幅広く選択することが出来ます。

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板の間(フローリング)のデメリット

板の間は木材で出来ていますので、一般的には水に弱いことです。

水に強い表面保護剤をコーティングすることも可能ですが、やはり自然な木の雰囲気を感じにくくなります。

昔から親しまれる畳の間

日本では馴染みのある畳の間ですが、昨今は非常に少なくなりつつあります。

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畳の歴史

畳の寸法は、日本人の平均的な肩幅から導き出されていると言われています。

日本人の平均的な肩幅は1尺5寸(45.5cm)で、廊下でふたりがすれ違う幅として、肩幅の倍の3尺(91cm)が畳の短辺方向の寸法とて採用され、組み合わせやすいように、その倍の6尺(182cm)が長辺方向の寸法として採用されています。

この畳の寸法は地域によって、若干の差があります。
西日本では、この基準の寸法よりやや余裕を持たせた3尺1寸5部(95.5cm)で中京間と言われています。

一方、東日本では、この基準寸法の3尺(91cm)に柱を落として、その間に畳を割りつける効率的な作り方をしたため、その分畳寸法が少し小さくなり約88cmとなります。

現在では、それらの考え方から開放され様々な畳寸法、デザインで和の床材の象徴として使用されています。

現在の畳の種類

畳の縁をなくした「縁なし畳」や半畳サイズ(正方形)の「琉球畳」

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最近の住宅では、この縁なし琉球畳スタイルが多く見受けられます。

縁がないことで、和からモダン系まで幅広くインテリアのテイストに合わせられることが多く採用される理由と考えられます。

畳の心材を薄くした「薄畳」

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現在の洋式スタイルにもしっくり馴染むデザインで、簡単に移動させることも出来る機能性も併せ持っています。

天然のイグサではなく、樹脂を使った「化学畳」

樹脂で出来ているため、色彩やデザインを自由に変えることが出来ます。

また、経年による色の変化なども少なく、天然のイグサに比べてメンテナンスは非常に楽なものになります。

ただし、畳の本来の良さは湿気の多い時には、天然のイグサが水分を吸収し、部屋が乾燥している時は、イグサに含まれる水分を放出する湿度の調整機能ががあるところです。

化学畳の場合、取り扱いメンテナンスは非常に楽になりますが、それら日本の風土にあった畳の自然素材を感じることが出来ない所があります。

現在の畳のデザイン事例紹介

ベンチ畳事例

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この事例では、ベンチの代わりに畳を使用しています。

畳の良さは調湿機能の他に、触り心地がよい所だと思います。

直床に座るスタイルが少なくなってきていますが、このようなベンチに畳を使用することで身近に畳を感じることが出来ます。

小上がり畳事例

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洋室と連続して畳の空間を構成する場面がよくありますが、段差をなくしてフラットに繋げることがあります。

フラットに繋げることで、掃除のしやすさや、段差のないバリアフリーの観点でもよいとされますが、椅子に座る洋式のスタイルと直に座る畳の洋式で、人の目線レベルに大きな差が生まれ、落ち着かない空間となりがちです。

直に座る畳の空間だけは小上がりにすることで、洋式スタイルの目線レベルに近づき、落ち着いた空間となります。

伝統的な縁のある畳を美しく魅せる事例

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昔からある縁のある伝統的な畳を方向性を合わせた敷き並べ方とし、壁・天井は出来る限り主張しない黒い面で構成することで、シンプルな空間となります。

元々和室は、畳以外にも障子や格子天井、鴨居などデザイン要素が多いなかに畳は存在しますが、シンプルな空間の中では、縁ありの畳の存在感がより美しく引き立ちます。

和が感じられる床材

現在では、カーペット、木目調塩ビシート、タイル、コルクなど様々な床材が使用されていますが、土間、板の間、畳の間は、日本では非常に歴史ある床材で今でも日本的な和を感じられる床材として使用されています。

また、自然素材で作られることで、調湿効果や吸音効果、心身をリラックスしてくれる効果があり、長く使えば使うほど経年変化による味わい深さも出てきます。

土間、板の間、畳の間は、昔から日本人に馴染みのある素材として利用されているだけなく、全て自然のもので、人の手で造られています

その地のモノを使って、その地の人の手で作られる床材は、昔から今もその地で造られる建築に根付き、その住処を暖かに包み込む特別なチカラがある感じがします。

現在の住まいでは、使い勝手やメンテナンスの楽なものが選ばれる傾向があり、大量生産できる工業製品が主流となりつつありますが、少し面倒な自然素材をあえて使い込むことで愛着が湧いてくるものです。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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