美しい建物は樋のデザインが決め手!!樋の美しい見せ方、隠し方

美しい建築は、計算に計算を重ねて樋がデザインされ外観が整っています。

逆に言うと、樋を美しくデザインすれば、建物デザインも整ってきます。

樋の成り立ちから、樋の役割や雨水の処理方法、デザイン手法、事例を交えて紹介していきます。

目次

樋の成り立ち

樋は建築にとって雨水を建物外部の狙ったところへ導く為の重要なパイプとして平安時代から存在していたとされています。

平安時代では雨水を飲み水等の上水として利用するために、集水する役割だったものが、現在では雑排水や汚水と同様に公共の下水道へ導き、最後河川や海へ排水されるよう計画されます。

ただ、現在においても、雨水を上水として利用する場合があります。その場合、一度貯留槽へ導き、浄水してから利用する場合があります。または、浄水せずに、飲料水以外のトイレの排水や、庭木への散水利用で使用される場合があります。

どちらにしても、集水し必要な所へ導くための役割で建築には必要不可欠な部材の一つであります。その樋をいかにデザインするかで建築物の印象が大きく変わってきます。

樋のデザイン手法

樋のデザインは、樋の存在自体を消してしまう手法や、樋自体にデザイン性を持たせるものなど様々です。

それぞれの特徴について事例を交えて紹介します。

樋の存在を消してしまう方法

都市部では、よく全面ガラス張り建築を見ることがあるかと思いますが、ガラス張りの建築には樋がないように見えますよね。

建物に屋上がある場合は、必ず樋は存在します。

このようなガラス張りの建築の場合は、外観を損なわないために、樋を建物の内側へ設け、存在を完全に消してしまいます。一般的には「内樋」といわれる手法です。

樋の存在を消す内樋は、北海道や東北地方の寒冷地では技術的解決の上で採用されている

この内樋の手法については、実は北海道や東北地方の寒冷地では一般的です。

それは、寒冷地で外部に樋があると凍結により、水が氷となることで膨張し樋が破損してしまうからです。

一般地では建物の内側へ雨水を導くことは、漏水のリスクとなることから、出来る限り内側には入れないよう設計されます。

つまり、雨を室内に取り入れても漏らさないよう検討に検討を重ねた技術の結晶が、樋の見せない美しい外観を実現しています。

雨水をうまく処理し、樋の存在を感じさせない外樋のデザイン

内樋手法以外にも、樋の存在を消してしまう方法はあります。
例えば、外壁の一部を雨水が導かれる形状に工夫する方法です。

こうすることで、樋の存在を消すことができます。また、この手法では、室内に雨水を導きませんので、技術面(漏らさない技術)でのハードルは、先程の内樋手法に比べてやや低く安全性は高いと考えられます。

樋自体をデザインする方法

最近では、樋メーカーが建築家と共同でデザインし美しい樋を開発しています。

既製品の樋でスッキリさせる方法

日本の高度成長時代から現代まで、建築の樋は施工性とコスト重視の観点から、鋼管(SGP)や塩ビ管(VP)が普及し一般的になりました。

それらの樋は、薄肉である為に、1m以内毎に掴み金物で外壁や構造躯体へ緊結する必要があり、どうしても見た目がごちゃごちゃします。

そこで、樋メーカーはその掴み金物が見えにくい納まりになる商品(例:バンドレス樋)を開発し樋が垂直の直線だけに見えるよう工夫した商品を取り揃えています。

設計者としては、この商品を使えば比較的スッキリするのでデザインするのは楽です(笑

既製品樋を使わず、建築的な工夫による美しい樋デザイン

一方で、既製品を使わず、樋自体を美しくデザインする手法もあります。

こちらは、日本一の設計事務所「日建設計」設計のパレスサイドビルです。

こちらは、樋の代わりに鎖に雨水を這わせ、さらにその鎖樋を緑化と融合するデザインで雨水を緑化に使った非常に効率的で美しいデザインです。

くさり樋の種類も複数使い分け、取り付けるピッチにも変化を与えることで、緑化のような自然なものと一体となり非常に美しい外観を実現しています。

アートなデザイン樋

こちらも樋を隠さず、建物のデザインの一部として見せています。

雨水を見せる方法

屋上緑化から、建物の全体へ雨水を利用するデザイン

こちらの建物は福岡に建つアクロスという商業施設となります。建築家の数々の賞を受賞している建物です。

この建物では屋上を緑化し、屋上にたまる雨水を建物全体の緑化部分へ導き潅水しています

また、屋上へたまる雨水は、緑化散策道のビオトーブに使われていたり、雨水で滝を作っていたりと、建物の利用者の目を楽しませてくれる仕組みもあります。

子供の遊び心をくすぶる雨水の導き方

建築家手塚貴晴設計のふじようちえんです。

ことらは保育園の事例で、子供たちは雨が降ると、この雨どいで遊んでしまいます。

雨水があえて見せるデザインとなっていて、子供たちが雨の日も雨水を見て楽しめるデザインです。

建築界の巨匠フランクロイドライトの代表作も雨水の処理が秀逸!

こちらの建物は、滝の上に建っていますが、雨どころか自然の滝まで取り込んでデザインされています。圧巻です。

これも水を建物内へ入れない技術、川の上での立地条件に対する構造力学的技術、滝の力をうまく逃がす技術が詰め込まれた上にデザインが成立しています。技術とデザインがうまく成立した建築は本当に美しいものです。

あえて建物内へ雨水を導くデザイン

どうしても雨は室内がへ入れたくないと考えるのですが、こちらは逆の発想で室内外へ入れてしまい、それをデザインにしてしまっています。

これら雨水を見せる手法はいくつかありますが、どれも樋が解放されているため、必ず水しぶきがあがります。その水しぶきを想定したうえで、建物のデザイン、水気に対しての技術的解決がなされて成立しています。

美しい建物の樋のデザインは建築技術の結晶

雨水の処理に対して重要な役割をもつ樋のデザインですが、建築にとって、雨漏れの原因を作るわけにはいかないので、デザイン重視では考えられないところであります。

もっとも簡単で安全な方法は、既製品樋で外壁の外を通す方法です。

ただし、それでは面白みに欠けますので、検討に検討を重ねその建築に最も相応し雨水処理方法を見定め、長い年月にも耐え得るデザインになっているか、それらを確認した上で採用可否を決定する必要があります。

樋に深くかかわる屋根のデザインについても解説していますので、ぜひそちらもチェックください。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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