大地震時の建物被害への影響は阪神大震災、東日本大震災、熊本地震などにより十分認知され、建物の耐震化が進んでいます。
戸建住宅では、耐震性能の表示制度もあり、新たに建てる場合は震度6以上の大地震で倒壊しない建物になりました。
また有事の際に避難する学校や公共施設についても、大地震時に倒壊しないよう耐震補強が行われ、日本の殆どの公共施設の耐震化が完了しつつあります。
大地震時に建物が倒壊しない構造的な措置については、十分認知され建物の補強方針も整備されていますが、天井落下措置については、まだまだ十分な措置が図られていないのが現状です。
建物が倒壊しない為の構造的な補強の次は、天井落下に対する措置が必要です。
有事の際に避難した体育館の天井が落下し、人的被害もありました。また、建物は倒壊していなかったが、天井が落下し施設の利用が出来なくなった公共施設も存在します。
天井を落とさない天井耐震化
建物の構造的な耐震化については、建築基準法や耐震改修促進法などで十分整備されていますが、天井の耐震化についての法律については、特定天井(200㎡以上、6m以上)だけが規定され、それ以外の天井については設計者判断によることになっています。
ただし、官庁施設などの根拠の求められる施設については、官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説(2021.2/大臣官房長官営繕部監修)及び資料編:(官庁施設の基本的性能基準(最終改訂2021.3)含む)に記載の性能を満足させる必要があります。
上記基準の非構造部材の設計用標準水平震度については、下記のように設定されています。
非構造の耐震分類Aの場合
1階及び地下階 0.6
中間階及び上層階 1.0
非構造の耐震分類Bの場合
1階及び地下階 0.4
中間階 0.6
上層階 1.0
上記の水平震度を満足するか否かを確認するには構造計算をする必要があります。
耐震天井を取り扱うメーカー見解では、通常のLGS下地では上記水平震度は満足できない可能性が高いとされています。また、在来の天井下地では上記の水平震度の計算は対応不可とのことでした。
官庁施設などの不特定多数の利用が考えられる施設や国家重施設以外についても、設計者として安全性の担保をどこまで考えておくかが問われています。
天井耐震化の考え方
200㎡超、天井高6m超の特定天井については、法的(確認申請)に審査されるため構造計算書が必須となります。(メーカーに依頼、または構造設計者による検討及び計算書の添付)
面積が小さく(200㎡以内)、天井面が平坦、天井懐が1m以内の天井下地が大きく揺れないと想定される場合は、官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説に記載の「標準仕様書の仕様は、耐震性が確認されたものではないが、標準仕様書を参考に適切に使用を決定したものは、当該ランクに相当するものとして扱っている」と判断できます。
面積が大きい場合は、天井が大きく揺さぶれることを考えると個々の検討が必要です。
グレード1(耐震天井同等)
特に安全性の必要な施設・用途の場合は、耐震天井と同等の構造計算を用いる検討が望ましいと考えられます。
例として下記の商品です。
桐井製作所「新耐震 DELTA Power」、オクジュー「SDタイプ」など
これらは原則、ボード面での評価となる為、ルーバー天井などは不可で設計自由度が低くなりますが、水平震度計算の根拠作成可能です。
または、建築構造的に天井を揺れない構造としてデザインすることが考えられます。
例として下記の商品があります。
C型鋼などを躯体からブドウ棚状に吊り下げたところへ直接野縁を固定しするオクジュー「準構造化天井材OJ型シリーズ」、モリソン「JM金具」など。これはら、水平震度計算の根拠作成可能で、ルーバー天井など設計の自由度が高いものとなります。
グレード2(地震対策天井)
次に安全性の必要な施設として、水平震度1.0の根拠が必要な施設としては、天井下地(LGS)メーカーの地震対策天井(水平震度1.0確保)のブレース、ビスハンガー、クリップ補強などの仕様を検討することが考えられます。
例えば、桐井製作所「耐震Power天井」、オクジュー「TSタイプ」などで、これらは水平震度計算の根拠作成可ですが、ボード面での評価となるため、設計自由度は低いものとなり、ルーバー天井などのデザインは難しくなります。
グレード3(落下低減天井)
天井面積も大きくなく、重要性も高くない場合はビスハンガークリップを仕様書に明記し落下防止に努めることが考えられます。
例えば、オクジュー「REタイプ」などで、水平震度計算の根拠作成は不可ですが、低コストで耐震化が可能です。何も考慮しない天井に比べるとはるかに安全性は高いものとなります。
コメント
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[…] 地震時に建物が壊れなくても天井が落ちてくる。天井を耐震化するには。 […]