注文住宅と建売住宅、なんとなくイメージがあると思いますが、それぞれのメリットやデメリットについて、詳しく理解するのは意外と難しく、知らずに購入すると後々後悔する事になります。
大きく分けると、土地を購入してその敷地に住宅会社に一から作ってもらう注文住宅と、すでに完成している土地と建物をセットで購入する建売住宅の大きく2つあります。
注文住宅のなかでも、間取りや設備が決まっている規格型住宅から、完全に一から作り上げるフルオーダー型の住宅まで様々で、それぞれメリット、デメリットがあります。
また、分譲住宅についても、比較的安価であることや、すぐに入居できるなどの分かりやすいメリットがありますが、目に見えないデメリットもあり後々トラブルに巻き込まれることもあります。
比較的安価な建売住宅ではありますが、それでも一生に一回の買い物ですので、注文住宅、分譲住宅のそれぞれの特徴や違い、メリット、デメリットを十分に把握した上で、自分はどちらに合っているのかを見定めて購入を決めることが大切です。
注文住宅と建売住宅の価格について
国土交通省では、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的として 、住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象に、注文住宅、建売住宅、既存(中古)住宅、民間賃貸住宅、リフォーム住宅の別に購入価格等の調査を行っています。
その国土交通省が行った調査結果では、全国平均で建売住宅(土地建物セット)は約3,800万円、注文住宅は約4,600万円と公表されています。注文住宅の4,600万円の内訳は、土地購入に1,400万円、建築費に3,200万円となっています。※1
※1令和元年度住宅市場動向調査報告書 令和2年3月 国土交通省住宅局
全国平均だけを見ると圧倒的に注文住宅に比べ、建売住宅が安い結果がわかります。
ただし、それぞれもう少し詳しく見ていくと、注文住宅でも建売住宅に近い金額で購入できる場合があることや、建売住宅が安い理由があることがわかります。
注文住宅の相場
注文住宅の相場については、全国平均では4,600万円ですが、建売住宅とは違い、すべて自由に設計できますので、工夫次第では土地も含めた全体購入価格を抑えることも可能です。
注文住宅の購入方法には、大きく分けて規格型住宅とフルオーダー住宅がありますが、価格面だけを見ると、規格型住宅が安い傾向があります。
それは、規格型住宅の場合、間取りや設備の規格が決まっていることが大きなコストパフォーマンスを生むことになります。
間取りや設備が決まっていることは、住宅会社が材料を注文するときに、決まった内容で大量購入することが出来ることにあります。
また、いつも同じ間取り、設備であれば、大工や職人の施工性に大きく貢献し、工期を短くすることが出来ます。工期が短くなれば、それだけ経費が少なく済むことで、全体予算を抑えることにつながっています。
規格住宅の相場は、建物グレードによってかなり幅広くありますが、グレードを最低限まで落とした場合、1500万円程度で購入することも可能です。平均的には、2000万円前後が一般的だと言われています。
つまり、先に挙げた全国平均である土地購入に1400万円かかったとしても、規格住宅がその土地にピッタリはまれば、1400万円+2000万円=3400万円となり、全国平均の分譲住宅より安く購入できることになります。
比較的安価に抑えられる規格型住宅ですが、デメリットとしては間取りや設備の自由度が低いことと、土地の形状に合わせたプランが出来ないことが挙げられます。
土地は気に入っているけれども、規格型住宅の場合、うまくその土地にあったプランが当てはまらないことも考えられます。その為、そのプランに合わせた土地を検討することになり、逆に土地部分が思った以上に割高となる場合もありますので注意が必要です。
一方、フルオーダー型の注文住宅の場合は土地の形状に合わせたプランニングが可能で、その土地に暮らす住まい手に合わせたプランを作ることが可能で、世界に二つとない自分達だけの住宅を実現することが出来ます。
フルオーダー型の注文住宅の場合は、比較的平均価格が高くなる傾向があります。これは、フルオーダー型の注文住宅を購入される年齢層と年収が高い層が比較的多いため、平均価格を高くしていることにつながっています。
フルオーダー型の注文住宅であっても、建て方の工夫によりローコストを実現することは可能です。
それは、例えば廊下が殆どない最短ルートの動線計画でのプランニングで、建物の面積を小さく抑えることが出来れば、その分、土地の購入面積も小さく抑えることが出来、トータル金額を抑えることが出来ます。
具体的には、坪単価80万円かかるフルオーダー型の注文住宅の床面積を40坪であれば、3200万円必要となってきますが、プランの工夫により30坪まで抑えることが出来れば、80万円×30坪=2400万円まで抑えることが可能です。
また、土地価格についても40坪×坪単価35万円=1400万円だったとして、プランを小さく抑え、土地面積も30坪程度まで抑えたものを見つけることが出来れば、30坪×坪単価35万円=1050万円となります。
よって、建物2400万円+土地1050万円=3450万円でフルオーダー型の注文住宅を購入することも可能となります。
建売住宅の相場
建売住宅の相場については、全国平均では土地建物セットで3800万円となりますが、売れ残りがないよう建物は出来る限り金額を抑えてつくられていることが多いため、土地の価格によって総額が上下することになります。
つまり、建売住宅で全国平均よりも金額を抑える術としては、駅から少し離れることや、都市部から少し離れ郊外で探す等の立地条件を少し変えるだけで、総額は大きく下がってきます。
建売住宅で建てられる建物の価格については、注文住宅で挙げた規格型よりもさらに低い金額で建てられています。
それは、建売住宅の場合は、同じ間取り、設備による建築材料の大量購入や、大工や職人の手間費削減に加えて、同じ場所で複数等同時に施工することで、大工や職人が効率よく施工できることがあります。
さらに、工事期間中はその施工会社以外は立ち入りすることがありません。注文住宅の場合、施主や設計者が施工期間中も現場へ足を運び、確認しながら施工を進めることになります。そのため、分譲住宅の施工期間は注文住宅に比べて一段と早くなります。施工期間が短くなることでその分の経費も安く抑えられますので、建築費用も安くなります。
建売住宅のデメリットについて
建売住宅は、注文住宅に比べて安価に購入でき、現物を確認した上で、すぐに入居できるメリットがありますが、いくつかデメリットもあります。
建売住宅のデメリットとしては、大きくは以下の3点です。
1、外観や間取り、設備が既に決まっていて変更できない
2、屋根や外壁の仕様を選ぶことができない
3、工事期間中、どのように建てられたのか分からない
この中で特に、将来のメンテナンスにも影響を及ぶ2つ目の屋根や外装材について詳しく解説します。
建物の寿命にかかわる重要な仕様としては、以下の3点です。
1、建物の強度を左右する耐震性
2、快適に暮らすための省エネ性
3、雨風に対して建物を守る屋根や外壁等の性能
耐震性については、現在建築基準法で厳しく確認されますので、施工不良がない限り、現在建てられる建物は問題ありません。
省エネ性については、最近の建物であれば、外装部の断熱性能や窓ガラスの断熱性能と表記されていることが多いため、購入前に確認できます。
問題なのは、雨風から建物を守る屋根や外壁等の性能についてです。
これら外装材の性能については、見た目ではなかなか判断できません。また、これらの性能については説明している建売住宅はほとんど見受けられませんので、知らずに購入するのが殆どだと思われます。
建売住宅購入のトラブルについて
建売住宅については、購入前に実際の建物を確認してから決めることが出来、注文住宅に比べて、購入後に思ってもいなかったことに対するトラブルは少ないと言われています。
ただし、住んでからすぐにはわからない所でのトラブルがいくつかあります。
建売住宅の場合、出来る限りコストを下げて売れ残りがないように計画するため、屋根材や外壁材にグレードの高い仕様を採用することが少ないと考えられます。
住宅で重要な雨風等を防ぐ役割のある屋根材と外壁材は、出来る限り丈夫でメンテナンスも容易なものを採用することが重要ですので、どのような材が採用されていて、どのようにメンテナンスしてく材であるか十分に理解して購入することが大切です。
屋根材や外壁材の選定については、その敷地や周辺環境に合った材の設定が必要で、例えば、昨今メンテナンス頻度の少なくて済むガルバリウム鋼板の屋根材や外装材が人気となっていますが、海に近い立地や、近くに公園や森林があり鳥類が多くいる立地、鉄道が近い立地については、鋼板に悪影響を及ぼす塩分、鳥糞、貰い錆の問題があり、採用は慎重に検討する必要があります。
建売住宅は、新築時は非常に綺麗で、屋根や外壁も美しくみえますが、それらの敷地環境に合った外装材でないものが採用されている場合は、10年もたたない内に、メンテナンスが必要となる場合がありトラブルの元となりますので注意が必要です。
また、注文住宅の場合は施主や設計者が現場へ足を運び、施工内容を確認しながら工事は進められていきますが、分譲住宅の場合、それら確認作業はなく施工会社だけで現場は進められていきます。
建物が完成すれば、壁や床、天井は美しく見えますが、床下や天井裏に欠陥があったとしても、その内側はわかりません。
床下、天井裏の欠陥については、すぐにその欠陥が表に出ることは少なく、遠い将来の10年後や20年後に床が沈んできて、床下を除けば、施工不良が見つかることもあります。
建物の完成して見えなくなる部分が確認できるのは施工期間中しかありません。
建売住宅の場合、それらは確認することが出来ないのが一般的ですが、販売会社によっては、施工期間中の写真や動画を見せてくれるところもありますので、それらを確認してから購入をすることがトラブル回避の一つとなります。
注文住宅を購入するときの流れ
注文住宅を購入するときの流れについては、土地を先に決めて、そのあと住宅会社へ建物を依頼する場合と、先に住宅会社や設計事務所へ相談をして、土地と建物をセットで考える場合の2種類があります。
住宅購入の優先順位が、立地条件を最優先させたい場合は、土地を先に決めてしまうケースもあると思いますが、建物にこだわりをもって注文住宅を検討したい場合は、土地を先に決めてしまうと、土地の条件によって、注文住宅に制限がかかる場合があるので注意が必要です。
例えば、建築条件付きの土地があります。注文住宅で建築することは可能ですが、依頼する住宅会社が決まっている場合や、建設時期が条件として決まっている場合がありますので、その土地を購入する前に、その住宅会社で建築してもよいかを検討しておく必要があります。
注文住宅は自由に間取りや設備が選択できることが大きなメリットで、それを最大限活かす方法としては、土地と建物をセットで検討することです。
土地と建物をセットで注文住宅を購入する流れとしては、まずは住宅会社選びを行うことになります。
住宅会社を数社選んで、その会社と土地、建物についてセットで検討をスタートいたします。
気に入った土地、概略プラン、概算金額が希望に合えば、その住宅会社と契約し、詳細設計を経て、建築がスタートします。
詳細設計では、その住宅の耐震性や断熱性の詳細設定や、屋根や外壁材を具体的にどのようなものにするかを決めていきます。また、内装材やキッチンやお風呂等の設備機器を決めていきます。
それから、建物が着工しますと、内装クロスの色や、キッチンの色、カーテンや照明、家具等を選んでいくことが一般的です。
建物が完成しますと、建物の使い方やメンテナンスに対しての説明を受け、引き渡しされます。
建売住宅に比べて、この設計期間での決め事や、建築中での決め事にかなりの時間と労力がとられることになりますが、一生住まいになる建物となりますので、住まい手自身が建築の中身を十分に知っていることは非常に重要なことです。これらの時間や労力は一生の宝物となることでしょう。
注文住宅の住宅会社選びについて
土地と建物をセットで購入する場合の住宅会社の選び方については、以下の3種類があります。
1、ハウスメーカーへ依頼する
2、設計事務所へ依頼する
3、工務店へ依頼する
ハウスメーカーへ依頼する場合は、住宅展示場へ足を運び、自分にあったハウスメーカーへ相談し、そのハウスメーカーで土地と建物をセットで検討していくことになります。
ハウスメーカーも沢山種類があり、このハウスメーカーを選ぶ時点でかなりの時間と労力をつかうことになりますが、メーカーを決めてしまうと、そこからは、営業、設計、インテリアコーディネーター、税金やローン担当、アフターメンテナンス担当等、それぞれの専門の担当者が施主をバックアップする仕組みがあり、契約から建物引き渡し、アフターフォローまで安心して任せて進めることが出来ます。
ただし、それらの安心費が建設費に含まれていることになります。
次に設計事務所へ依頼する場合です。
「あの建築家の設計事務所で家を建てたい」と決めているケースが多いと思いますが、建築家ネットワークサイト等による設計事務所選びから検討するケースもあります。
設計事務所の大きなメリットは、すべて一から作りあげることで、手作り感は最も感じられるところです。ただし、すべて一から作りますので、設計に最も時間と労力がかかります。
設計が終わると、次は施工会社である工務店を選ぶことになります。設計図を基に、この設計では、どの工務店が向いているかを設計事務所が見定め、数社に見積もり依頼をかけ、コスト、工期、会社対応等を比較検討し、工務店を決定し、建物の工事が着工します。
設計事務所は、ハウスメーカーとは異なり、基本施主がすべてのことに関わることになります。土地探しや、それらの手続き、税金やローンについても、基本的には施主が行うことになります。また、アフターフォローについても、ハウスメーカーのように任せっきりにはなりません。
それらの時間・労力はハウスメーカーに比べて多く必要となりますが、その分建物に対しての知識が得られることになります。
最後に工務店に依頼する場合です。工務店の中でも、設計士を社内で抱えている会社と、設計は外部に発注する会社の2種類あります。
住宅を建てる流れが、先ほどの設計事務所の例とは逆で、先に施工会社を決めることになります。
この施工会社を先に決めるメリットは、全体予算の把握が早い段階で想定できることです。
設計事務所の場合は、施工する工務店が決まるまでは、概略でしか全体費用を把握できません。最終は施工会社へ発注する必要がありますので、設計まで順調に進むことができても、施工する会社が見つからなければ、設計を見直すケースもあります。
工務店の規模は、1人で経営している小規模な所から、100人以上も従業員を抱える規模の工務店まで様々で、ローンのフォローや、アフターメンテナンスのフォロー方法等も様々です。
工務店を先に決める場合は、金額面と合わせてそれらの体制も踏まえて検討することが重要となります。
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