窓周りのリフォーム、断熱性と防犯性を両立する方法

エアコンの冷暖房費を抑えるために有効な手段として、窓の断熱リフォームが広く認知されるようになりました。

また、昨今は侵入窃盗の犯罪も増えていることもあり、窓周りの防犯性についても重要性が増しています

窓リフォームにおいて、以下の3つのポイントを抑えることで、断熱性と防犯性を両立し、更に快適で豊かな窓周りを実現します。

  • 窓周りの断熱リフォームが有効な理由
  • 防犯性と意匠性を同時に考える
  • 窓周りを整え良好な住環境を実現する
目次

窓周りの断熱リフォームが有効な理由

窓周りの断熱リフォームが有効な理由は以下の3つです。

1、窓周りは建物の構造上、最も断熱的な弱点となっている部分である

2、窓周りのリフォームは局所的でありコストパフォーマンスが高い

3、体感温度に影響し光熱費削減につながる

1、窓周りは建物の構造上、最も断熱的な弱点となっている部分である

室内での暑いや寒いなどの外部環境からの影響は、大部分は窓から影響を受けます

建物は大きく以下の3つの外皮によって、外部環境から守られています。

・屋根

・外壁

・窓

この3つのうち、最も断熱性能が低い部分が窓です。

屋根も外壁も鉄板やサイディングなどの仕上材と、内側に断熱材が施されます。

一方、窓はガラスだけ。

窓周りには快適な住環境を整える以下の重要な機能があります。

・自然の光を取り入れる採光

・自然の風を取り込む通風

・外の景色を縁取る眺望性

・火災時の煙を排出する排煙機能

窓は、これら重要な機能をキャンセルすることができないため、屋根や外壁のような完全に閉じた断熱性を確保することが難しい構造となっています。

この断熱的な弱点となる窓を強化することができれば、建物全体の断熱性が効率的に向上することになります。

2、窓周りのリフォームは建物全体の割合から局所的でありコストパフォーマンスが高い

屋根や外壁に比べ、窓の面積は建物全体の割合からして局所的です。

住宅であれば、法的に居室面積の1/7以上の窓面積を確保する必要があり、15%程度の割合です。

また、窓すべてを断熱リフォームする必要はありません。

最も弱点となる以下の部分を重点的にリフォームすることでコストパフォーマンスが最大化します。

面積の大きいリビングなどの居室の窓

方角的に熱の影響を受けやすい西面や東面の窓

西面や東面の窓は日射角度が鋭角で室内に直接太陽光が入ってきますが、北面の窓は直接太陽光は殆ど入って来ません。

全体コストを見ながら北面の窓は今回リフォームを見送るなどのコストコントロールが可能です。

屋根や外壁の建物全体の断熱性を向上させたり、高性能な設備を投資することに比べて、窓のリフォームは局所的で断熱性の低い部分を改善することからコストパフォーマンスが高いことになります。

3、体感温度に影響し光熱費削減につながる

室内に居て、室温や湿度と同じように人に快不快の影響を与えるものが体感温度です。

体感温度は、室内の壁面や天井面、窓面から直接人に感じられる温度です。

窓面については、特に外気からの影響を受けやすく、外が寒いと窓周りは室内の温度が高くても人は寒く感じます

これは、窓の近くにいる人の体の表面からの熱を奪われて寒く感じるようです。

外壁や屋根に比べ、特に窓は断熱性が低いため、この体感温度に大きな影響を与えることになります。

そのため、窓を断熱強化することで体感温度へ与える影響を抑えることでエアコン温度を無理に高く設定する必要がなくなり、光熱費削減につながります。

防犯性と意匠性を同時に考える

窓周りのリフォームで断熱性と同じくらい重要なのは防犯性と意匠性。

ここでは、意匠性とは、見た目の美しさだけでなく、自然の光や風を取り込む良好な住環境も含めた性能を示します。

相反する防犯性と意匠性ですが、両立できる以下の2つの方法を紹介します。

外部の格子デザイン

防犯遮熱フィルム

1、外部の格子デザイン

光や風は通過させ、人の侵入だけを防ぐ格子状のものを窓外部に取り付けることで、良好な住環境と防犯性を両立させることができます。

古くから日本の建物は、窓の外側に木製の縦格子がついているものが多く見られます。

木製の縦格子はまさに防犯性を高め、光と風を住居に導くために考え出された先人の知恵によって生まれた日本の伝統技術の一つです。

今も残る京町屋の縦格子が連なる様は、日本的な美しい風景のひとつとして認識されているのではないでしょうか。

この外部の格子は、現在では更なる進化を遂げ、材料は木製だけでなく鉄製やアルミ製、テラコッタや人工木など耐久性や装飾性が向上しています。

また、格子のつける角度や形状によって、光や風をコントロールするだけなく、日射遮蔽機能によるエアコン負荷を軽減し光熱費の削減にも寄与しています。

2、防犯遮熱フィルムによる意匠性と防犯性の両立

窓から見える風景の眺望性や、外観の意匠性を損なうことなく防犯性を高める手段として、防犯遮熱フィルムがあります。

ガラスにフィルムを貼るだけでどの程度効果があるか、下記のメーカーホームページでバットを用いて強度実験をしていますので参考にしてください。

(住友3Mホームページ参照)

窓ガラスにフィルムを貼るだけであるため、工事にかかる時間も費用も比較的少なくてすみます

また、フィルムにもいくつか種類があり、ガラスの見た目は変えずに防犯性を高めたフィルムや、遮熱性能を高めたフィルム、目隠し対策のための透明度を抑えたフィルムもあります。

窓周りを整え良好な住環境を実現する

現在は、窓周りの断熱性や防犯性に対する様々な情報が溢れ、沢山の選択肢の中で家づくりをすることが可能となりました。

過度な断熱性や防犯商品に予算をかけても、完璧な建物はできません。

建物は人と同じように、成長し、そして老いていくものです。

寒ければ服を着て、暑ければ窓を開けて自然の風を取り込み、自然と共生していくことが豊かな暮らしでもあります。

防犯性を高める最も効果的な手段は、住人の防犯意識が高いと思わせることです。

また、家づくりは断熱性や防犯性だけでなく住人にやさしく快適でなければなりません

窓周りのデザインは、建物の外観へ影響を与えるだけでなく、内部環境に大きな影響を与えるものです。

長い歴史の中で培われてきた日本の古い建物をヒントに、限られた敷地の中でも、自然の摂理をうまく利用し、防犯性と快適な住環境を両立することが重要です。

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この記事を書いた人

・一級建築士
・インテリアプランナー
幼少期から大学までは和歌山の実家で田舎暮らし。
大手ハウスメーカーで累計約40棟の住宅を技術営業として担当。
その後、組織設計事務所に転職し、学校・庁舎・道の駅・公民館・発電所等の主に公共建築物の設計に携わる。
現在は組織設計事務所に所属し、日々建築設計業務に取り組む傍ら、建築系webライターとして建築に関わるマニアックな情報から住宅購入に関わる内容まで幅広く発信している。
和歌山から、大阪、東京と住まいを移し、また和歌山戻り、田舎に自邸を建てる。

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