建築家が選ぶ床材は、フローリング、タイル、コンクリート、石と自然素材から造られるものがランキング上位にあげられます。
床材は、建築の中でも人が直接触れている時間が最も長いことから、最も心地よく感じられる自然素材がよいと考えられるからです。
以下の3つが床材を選ぶポイントです。
- 建築家が選ぶ床材の人気ランキングと上位に選ばれる理由
- 床材の種類別価額と、ランニングコスト
- 最適な床材の選び方
建築家が選ぶ床材の人気ランキングと上位に選ばれる理由
建築家が選ぶ床材ランキングは以下です。
1位:フローリング
2位:タイル
3位:コンクリート
4位:塩ビシート
5位:石
ランキング上位に位置するフローリング、タイル、コンクリートは、木・土・石などの自然素材で造られています。
4位にランキングする塩ビシートは機能性(耐水性や意匠性)が高く、コストが安いことから上位にランキングします。
特に、1位のフローリングは種類も多く、価格帯も幅広く選ぶことができるため建築家だけでなくハウスメーカーや工務店でも多く採用されています。
フローリングが選ばれる理由
フローリングが選ばれる主な理由は以下の5つです。
- 木の雰囲気がダイレクトに感じられる
- 長く使え経年変化も楽しめる
- 裸足で生活する日本に適している
- 木に調湿効果があり日本の四季に対応する
- 種類が多く価格帯が幅広い
フローリングは、大きくわけて以下の3種類あります。
- 無垢フローリング:表面から裏側まですべて同じ木で出来ているもの
- 複合フローリング:表面と裏側は違う木でできているもの
- 木目調シート:木目調にプリントされた塩ビ製のシート
建築家がよく採用するのは無垢フローリングで、自然の木の雰囲気が最も感じられ、長く経年変化も楽しめます。
複合フローリングや木目調シートの場合は、精度が高くコストが安いことが特徴です。
複合フローリングや木目調シートは、精度が高い工業製品であるため、温度変化による隙間などができる心配はありません。
無垢フローリングの場合、温度変化により木が伸縮することによって、隙間ができたり一部浮きができたりします。
また、無垢フローリングは経年で徐々に変化していきます。
この温度や経年によって変化していく床材の方が自然な姿に近いことが建築家が好む理由なのかもしれません。
タイルが選ばれる理由
タイルが選ばれる主な理由は以下の4つが挙げられます。
- 土の素材が感じられる
- 焼き物特有の重厚感
- 床暖房の場合の熱による材料の変化がない
- デザインのバリエーションが豊かである
タイルは、大きくわけて以下の4種類あります・
- 磁器質タイル:土を高温で焼き上げるため緻密で硬く吸水性が低いのが特徴
- せっ器質タイル:レンガに使われる。温度を低く抑えて焼くため表情が柔らかい
- 陶器質タイル:多孔質で吸水性が高いのが特徴
- 塩ビタイル:タイルに模した塩ビ製のシート
建築家は、磁器質タイル・せっ器タイルを採用する場面が多く見られます。
それは、土本来の風合いが感じられ耐久性が高いためです。
耐水性を要する水周りには磁器質タイルが使われ、耐水性を要しないリビングや玄関などには、せっ器質タイルを使い分けます。
フローリングに比べて、ややコストが高くなる傾向があります。
コンクリートが選ばれる理由
コンクリートが選ばれる主な理由は以下の3点です。
- コンクリート特有の豊かな表情
- コストを抑えられる
- どんな素材との組合せにも調和する
コンクリートは、1階床には基礎をつくるために必ず使用される素材です。
タイル、フローリングなどの床材の下地にはコンクリートが存在します。
そのため、1階床面の仕上げとしては最も安価にできる床材です。
コンクリートが建築家を魅了する理由は以下に詳しく記載していますので参考にしてください。
床材の種類別価額とランニングコスト
床材はタイルのような初期投資は高いがメンテナンスフリーの素材から、塩ビ系素材のような初期投資は安く、逆にランニングコストがかかるものまで様々です。
初期費用とランニングコストも重要ですが、建築は末永く愛着をもって住むことも重要と考えます。
費用とメンテナンスをどのように折り合いをつけるか、以下に整理します。
- 床材の種類別初期費用とランニングコスト
- フローリングはメンテナンスを楽しむもの
- メンテナンスが楽で経年の風合いも楽しめるタイルとコンクリート
床材の種類別初期費用とランニングコスト
床材の種類別初期費用とランニングコストについては、以下のように整理できます。
初期費用 | ランニングコスト | 60年間合計 | |
フローリング | 45万円 | 63万円 | 108万円 |
タイル | 90万円 | 0円 | 90万円 |
コンクリート | 15万円 | 0円 | 15万円 |
塩ビシート | 15万円 | 30万円 | 45万円 |
石 | 120万円 | 0円 | 120万円 |
【上記比較表の条件設定】
- リビング20帖(≒約30㎡)の床材として想定
- 初期費用については、材料費+施工費と想定
- 初期費用は仕上げ材の費用とし、下地のコンクリートスラブは含まない
- 下地にコンクリートスラブがあると想定
- ランニングコストについては、60年間を想定
- コンクリートは1階床スラブをそのまま使用すると想定
- コンクリート不陸調整、保護塗料程度の仕上げと想定
- タイルは下地モルタルを含む
- タイルは国産中級グレードとする
- フローリングは木下地を含む
- 塩ビシートはコンクリートスラブへ直張りとする
- 石は下地モルタルを含む
- 石は国産石中級グレードを想定
- フローリングは1年1回ワックス掛けすると想定
- フローリングは30年に一度張り替えを想定
- 塩ビシートは20年に一度張り替えを想定
フローリング、タイル、塩ビシート、石については、各メーカーから様々な商品がラインナップされています。
グレード感によっても金額は大きく変わってきます。
例えば、上記比較表ではフローリングが高く感じるかもしれませんが、複合フローリングの汎用品を安く仕入れできれば、半額程度にすることも可能です。
フローリングはメンテナンスを楽しむもの
フローリングは比較的コストが高い上に、メンテナンスも必要な素材ですが、経年で徐々に魅力が高まる素材でもあります。
使い込むにつれ、沢山の傷がつき風合いが増していきます。
また、拭き掃除やワックス掛けなどのメンテナンスをすることで木の表情が徐々に穏やかになり、人と同じように美しく老いていくものです。
自然の木がダイレクトに感じられる素材であり、裸足での生活スタイルや小さな子どもがいる家庭にとっても優しい素材で、家族と共に変化を楽しむ素材です。
メンテナンスが楽で経年の風合いも楽しめるタイルとコンクリート
メンテナンスを必要としないタイルとコンクリートも、経年によって風合いが増していく素材でもあります。
フローリングのような大きな変化はありませんが、長い時間を掛け徐々に変化していきます。
タイルもコンクリートも、土や石で出来ているもので風化や劣化することはありませんが人が使うことで、徐々に汚れや傷がついていきます。
また、温度変化などによるひび割れも起きてきます。
そのような長期間をかけて起きる微細な変化が、タイルやコンクリートの表情を徐々に変化させ、風合いが増していく素材です。
床材の最適な選び方
床材の最適な選び方のポイントとなるのは、以下の3つです。
- 床材の性能と使用用途
- 使う期間
- 意匠性とコスト
床材の最適な選び方のポイント①床材の性能と使用用途
床材の選択肢は、以下の性能と使用用途によって絞ることができます。
- 防水性:水気を扱う用途(例:洗面・お風呂など)
- 静寂性:音を気にする用途(例:勉強部屋、趣味室など)
- 防滑性:滑りにくさを要する用途(例:玄関・お風呂など)
- 防汚性:汚れにくさ要する用途(例:キッチンなど)
これら性能と用途を床材別に整理すると以下の表の通りです。
防水性 | 静寂性 | 防滑性 | 防汚性 | 適正室 | |
フローリング | △ | 〇 | △ | 〇 | リビングなど |
タイル | ◎ | × | ◎(△) | 〇 | 洗面など |
コンクリート | ◎ | × | 〇 | 〇 | 全般 |
塩ビシート | 〇 | △ | 〇 | ◎ | キッチン |
石 | ◎ | × | ◎(△) | 〇 | お風呂など |
カーペット | × | ◎ | 〇 | △ | 勉強室など |
床材の最適な選び方のポイント②使う期間
床材をどの程度使うことを想定するかも重要なポイントとなります。
例えば、賃貸での場合は安く簡単に張り替えられる更新性の高い床材の方が都合がいい場合があります。
長く使い続けたい場合は、耐久性の高い床材が望まれます。
更新性と耐久性を床材別に整理すると以下の表となります。
更新性 | 耐久性 | 適正室 | |
フローリング | △ | 〇 | リビングなど |
タイル | × | ◎ | お風呂など |
コンクリート | 〇 | ◎ | 全般 |
塩ビシート | ◎ | △ | 賃貸用など |
石 | × | ◎ | 賃貸玄関など |
カーペット | ◎ | △ | 賃貸用など |
床材の最適な選び方のポイント③意匠性とコスト
床材の性能や使用期間を整理できると、あとは雰囲気(意匠性)とコストとの折り合いが付けば、おのずと最適な床材が選択できます。
建築家が意匠性が高いと判断するのは、必要とされる機能性を満たし、設計コンセプトに合っていることを重視します。
また、建築家は自然のものや哲学を好む傾向があることから、木・土・石などの日本の建築に昔から使われている素材が選択されます。
あとは、その材のなかでコストに合わせてグレード感をコントロールしています。
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