ハウスメーカーと工務店と設計事務所、どのような違いがあるか疑問やお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
少し前までは、以下の6点が大きな違いでした。
- デザイン性
- プランの自由度
- コスト
- 施工エリア
- 工期の長さ
- アフターフォロー
この中で、ハウスメーカー・工務店・設計事務所を天秤にかける際に特に重視するのは、デザイン性、プランの自由度、コストだと思います。
昨今ではハウスメーカーの苦手としていたデザイン性やプランの自由度が各段と向上し、工務店や設計事務所で建てる建設コストも高くなり、各社の差が薄まりつつあります。
そんな中で、ハウスメーカー・工務店・設計事務所にかかわらず家を建てる際に重視する点は以下です。
- デザインの許容範囲
- プランの自由度
- コスト
- アフターフォロー
この4点をどのようにバランスさせるかでハウスメーカー・工務店・設計事務所の選び方が決まります。
デザインの共用範囲
人の好みには、様々なテイストがあります。
- モダンテイスト
- アジアンテイスト
- ナチュラル
- 北欧系
- カントリー、、、ect
デザインにこだわりたい場合は、設計事務所で素材選びから設計することができます。
インテリアだけはこだわるなど割り切る場合は、ハウスメーカーでもOKです。
インテリアは、ハウスメーカーであってもある程度自由に設計することができるからです。
設計事務所・工務店・ハウスメーカーを絞り込むポイントは以下の3つです。
- 会社の企業理念や作品例の好み
- 設計事務所でないと実現がむずかしいマニアックなこだわりがある
- ハウスメーカーの中でもデザインのグレード感がある
会社の企業理念や作品の好み
建築は哲学や歴史も含めたアートの要素が含まれ、科学や数学を使ったサイエンス的要素によってつくられるため、公共的な建築物は、単に好みの問題だけで選ぶことは出来ません。
ただし、個人住宅の場合、住宅を購入する施主の好みが決め手となります。
施主の好みに合う企業理念や、作品の趣味があうか否かが重要となります。
例えば、ハウスメーカー大手の企業理念は以下のようになっています。
- セキスイハイム「地球環境にやさしく60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まいの提供」
- 住友林業「人と地球環境にやさしい「木」を活かし、人々の生活に関するあらゆるサービスを通じて、持続可能で豊かな社会の実現に貢献」
- ダイワハウス「「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、お客様と共に新たな価値を創り、活かし、高め、人が心豊かに生きる社会の実現を目指します。 そして、お客様一人ひとりとの絆を大切にし、生涯にわたり喜びを分かち合えるパートナーとなって、永遠の信頼を育みます。」
また、作品例ではハウスメーカーに限らず、工務店、設計事務所のホームページには必ず掲載されています。
過去の作品に触れ、もっとも趣味のあう会社と同じベクトルをもって建物をつくり上げていくことが重要です。
設計事務所でないと実現がむずかしいマニアックなこだわりがある
以下のようなマニアックなこだわりをお持ちの方はハウスメーカーでは難しい場合があります。
- 巾木のサイズをミリ単位で操作したい又はなくしたい
- 建具の枠を消し去りたい
- 打放しやモルタルは本物がいい
- 換気扇やスイッチなどの設備類は隠したい
- ステンレスはヘアラインではなくバイブレーション
- 扉のレバーハンドルはオリジナルがいい
- 人と同じものはいや
ハウスメーカーでも対応可能な内容が含まれていますが、標準外での割高になる可能性があります。
ハウスメーカーの中にもデザインのグレード感はある
最近ハウスメーカーのデザイン性が昔に比べ断然向上しています。
特に、社内に専門のデザイナーを配属させ、デザイン性の高い商品ラインナップをもつハウスメーカーがあります。
以下にデザイン性の高いハウスメーカー例を挙げます。
上の例は、本格的なデザイナーがハウスメーカーに参画し実現しているものですが、一方でデザイン性よりも性能やコストで勝負するハウスメーカーは多く存在します。
プランの自由度
プランの自由度は、規格品を取り扱うハウスメーカーであっても各段に自由度が高くなっています。
プラン上の制約があるのは、以下の3点です。
- モジュールがある
- 曲線や斜め線などが不得意
- 断面方向の自由度が低い
モジュールがある
殆どのハウスメーカーは、独自のモジュールが存在し、そのモジュールの中でプランニングされています。
例えばS社では、225㎜モジュールがあり柱の間隔は225㎜の倍数の中でプランニングされています。
あと10㎜伸ばしたいとか、あと50㎜短縮したいなどの対応は出来ません。
これは、柱をモジュール化することで構造計算を容易にし、内装や外装の効率化が図られ、性能を高く保ちながらコストを抑えることに繋がっています。
曲線や斜め線などが不得意
設計事務所の場合、毎回いちから設計しますので曲線でも斜め線でも同じだけの労力をかけて設計します。
ただし、ハウスメーカーの場合、上であげたモジュールの中で設計しますので、曲線や斜め線への対応が不得意です。
出来ないことはないですが、ハウスメーカーのモジュール化することのコストメリットが薄まることになります。
断面方向の自由度が低い
ハウスメーカーの特徴の一つに、「工場生産率の高さ」があります。
出来る限り工場で生産性を高めることで、作業精度の向上・品質の安定化・部品展開の効率化が図られ、高品質かつ低単価に繋がります。
更には、工場の生産率を高め、工場から現場までのトラックの規格も一定化することで、より効率化が図られています。
そのため、トラックに積めるサイズの規格が決められており、天井高さや階高さを自由に変えることが難しくなります。
メーカーによっては、在来の現場で製作する工法を採用しているところもありますが、断面方向の高さを統一することで、部品や建材の効率化を図っていますので、高さを変えると割高になる場合があります。
コスト
ハウスメーカー、工務店、設計事務所どこで建てれば、最も安く済むか。
それは、一概には答えがでません。
建物のデザインやプランに全くこだわりがなく、必要な広ささえ確保できればという条件であれば、建売住宅や規格型のハウスメーカーを購入することが最も安く済む方法です。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所のコストを見極めるポイントは以下です。
- 大量生産品、流通量の多さ、普及品
- 構造体の規格
- 分割発注、施主手配などの組み合わせ
大量生産品、流通量の多さ、普及品
ハウスメーカーの場合は、独自ルートにより大量生産品、流通量が多い商品、普及品を選択し、コストパフォーマンスの高い商品が使われて建築は出来ています。
設計事務所や工務店の場合は、建設場所などの環境を毎回見極めて、建材をセレクトしていきます。
時には、地域にあった最安値の建材が選ばれることもありますが、多くの場合はハウスメーカー独自ルートによる入手された建材が安くなる可能性が高いです。
そのため、ハウスメーカーは設計事務所に比べて、建材1つ1つコストパフォーマンスの高い商品を入手できている可能性は高くなります。
なのに、ハウスメーカーで建てる場合の総額はかなり高くなる場合があるのは、以下の理由からです。
- 建材の最低グレードは、企業が定める最低品質を満足している中での商品を選んでいる
- 企業規模が大きく建材以外での経費が高い
- アフターフォローまで考慮された体制維持のための経費が必要
構造体の規格
ハウスメーカーは、柱や梁、壁などの構造体は各社規定があり、自由に選ぶことができません。
例えば、住友林業で鉄骨造やRC造を建てることはできません。
メーカーによって、構造の規格を絞り込むことで、専門性が高まり、部材の効率化を図り、高い品質でコストパフォーマンスが最大化する仕組みが造らています。
一方、設計事務所の場合は木造や鉄骨造、RC造など自由に組み合わせて作ることが可能で、地域や環境に合わせて、最も適した構造形式を選択することが可能となります。
分割発注や施主手配などを組合せる
ハウスメーカーの場合は、建物一式すべてお任せでお願いでき施主の手間が大きく軽減できるメリットがあります。
一方、設計事務所や工務店依頼の場合は、一部の工事を別に分割発注することや、施主手配を組み合わせることで工務店の経費を浮かせて工事費総額を抑えることができます。
施主の手間がかなり増えることになりますが、コストの大きな削減につながる場合があります。
注意点としては、責任分界点が不明確になることです。将来なにか故障等があった場合にどこが責任を負うのか、明確にしておく必要があります。
将来の責任問題の観点では、ハウスメーカーに全て任せておくのが施主の手間が省けます。
アフターフォロー
アフターフォローを最重要と考えるとハウスメーカー一択となります。
アフターフォローがハウスメーカー一択の理由は以下です。
- アフターフォローメニューが絞られているため
- アフター専門部を有している
- 企業規模が桁違であることのメリット
アフターフォローメニューが絞られているため
ハウスメーカーのアフターフォローのスムーズさは、設計段階から考えられたものです。
ハウスメーカーは、ある程度プランに制約をかけられた構造的なモジュールや、建材や商品の規定など限られた選択肢のなかで建物をつくることで、アフターフォローのメニューが絞られます。
アフターフォローメニューが絞られることで、対応が非常にスムーズになります。
建築は基本的に一品製品であり、部材や部材の納まりは千差万別です。これをある程度絞り込むことでアフターフォローの対応をスムーズにしています。
アフターフォロー専門部を有している
設計事務所や工務店では、設計や工事をすることが専門であるため、アフターフォローは何かあったときに設計担当や、工事を担当した監督が他の現場も見ながら対応することになります。
一方、ハウスメーカーはアフターフォロー専門部が対応することになりますので対応がスピーディーです。
また、アフターフォローの専門性が高く、対応が非常にスムーズに行われます。
企業規模が桁違いであることのメリット
地域密着を重視している一部の工務店では、しっかりしたアフターフォローを実施している会社もありますが、殆どの場合何かあった場合にも有償対応となります。
当然、職人が数時間または一日その現場で確認するわけですから、何も補修がなくとも無償で出来るはずがないですが、ハウスメーカーは少しのことであれば無償で対応することが多くあります。
やはり、これは会社規模が桁違いであることのメリットだと感じます。
ハウスメーカーは上場企業が多くありますが、設計事務所、工務店での上場企業は殆どありません。
おまけ
アフターフォローは建物を購入する際の非常に重要視するポイントだと思います。
アフターフォローだけを考えるとハウスメーカー一択になりますが、建築工事はハウスメーカーにお願いするとして設計段階に設計事務所を絡めることも選択肢としてあります。
設計事務所の設計費が少し余分に必要となりますが、アフターフォローを充実させる有効な方法の一つです。
設計事務所が入ることで、第3者目線で建物のデザインとコストがコントロールされ、建物自体はハウスメーカーが建てることで充実したアフターフォローも確保できます。
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